「え、えっと……その……」
 ふたりっきり=デート。
 私達のような年頃で男の子と女の子のふたりっきりだと殆ど必然的にそんな図式が成り立ってしまう。
 実際に私と悠翔はデートをしていたんだけど……。
 こうして、他の人から言われるのはなんとなく恥ずかしいような気がする。
「ああ、なんとなく解ったから言わなくても良いわ。そう、悠翔君と……」
「あぅ……」
 私が答えられなくなっていると義母さんにはなんとなく解ってしまったらしい。
 不自然な私の返事になんとなく思うところがあったみたいで……簡単にバレてしまう。
 別に隠すつもりなんて無いし、公にするのもどうかと考えていたけど……こうなってしまったら意味も無くて。
 とりあえずはもう、腹をくくるしかない。
 後でクロノがこのことを知ったらどんな反応をするのか解らないけど……成り行きに任せよう。

 ――――うん、それしか無いような気がする

 なんだか話が随分と逸れてしまったけど……逆に義母さんからの話題は有り難かった。
 これから私が何をするかなんてとても言えないんだから……。























魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 義母さんと悠翔のことをお話しながら朝食をすませる。
 結局、悠翔とのことは全部バラしたりまではしなかったけど……。
 私の考えていたことを話さなくてすんだのは良かったと思う。
 そんなことを考えながら私は朝食が終わって学校に行く準備をする。
 本当は学校に行くなんてそんな余裕は無いけれど、普通にしておかないと義母さん達に疑われてしまう。
 そう言った意味ではクロノは時間帯がはちあわせにならなくて良かったと思う。
 きっとクロノがいたらばれてしまっていたと思うから。
 クロノには私の些細な変化なんてすぐにばれてしまう。
 義母さんにだって本当はばれるかもしれなかったけど、悠翔との話題になってくれたのが幸いした。
 悠翔とのことだったら私は自然にしていられるから。
 だけど、今は悠翔のことを考えるだけでもそうは言っていられない。
 今から私は学校じゃなくて悠翔を守るためにある場所に行かなきゃならなくて。
 遂に現れた悠翔に対して因縁を持っている魔導師達――――。
 私はその人達を止めないといけない。
 多分、相手も私も独断で動くことになっていると思うけど管理局が関わると話は大きくなってしまう。
 もしかしたら非があるのは悠翔の方になってしまうかもしれない――――。
 魔導殺しのことも考えるとそんな気さえもしてくる。
 少なくとも悠翔のことを良いように見てくれる管理局の人間は殆どいない。
 だからこそ、悠翔のことは私のところまでで終わらせないといけない。
 悠翔が魔導殺しの後継ぎだって言うことは一部の人しか知らないかもしれない。
 でも、魔導殺しと呼ばれた悠翔のお父さんのことは裏では凄く有名みたいで。
 もし、悠翔との関連性がはっきりしてしまえばどうなるかは解らない。
 だけど、先日の管理局でのテストで悠翔のことは既にはっきりしてしまっているかもしれない。
 それでも、魔導殺しのことを私のところで解決出来れば悠翔のこともきっと管理局に伝えられるはず。
 例え、悠翔が管理局にとっては危険な存在だと思われてしまっているとしても、私だけは彼の味方でいたい。
 だから、私は悠翔のために魔導師達と戦う――――。
















 今日は病院と言うことだが、今一つ落ち着かない。
 恭也さんとの朝の訓練をしてからこうして高町家で空白の時間を過ごしているのだが……。
 何か重要なことがある日って言うのは緊張すると言うけど……本当にそんな状態だと言っても良い。
 別に手術をするってことが怖いわけでも無いし、躊躇うようなことでも無い。
 とうに手術を受ける覚悟なんてものは終わっている。
 だけど、何故だか落ち着かない。
(どうしてだろうな……)
 思い当たる節をとりあえず、考えてみる。
 俺自身に理由らしい理由は無いと言いたいが……昨日の魔導師達のことが気になる。
 はっきり言って、俺を射殺すような目をしていた。
 あれは本気で俺を排除しようと考えている視線だった。
(……普通に考えても何もしてこないわけが無いな)
 どう考えたって俺に何か仕掛けてくるのが明白だ。
 でなければ態々、昨日に顔を出してきた理由が思いつかない。
 だが、残念なことに俺からは相手の動向を探ると言う術は無い。
 そもそも相手が魔導師である以上、俺からはそう言った動きを探る方法が無いからだ。
 相手が同業者であれば動きなどもある程度予測は出来るし、夏織さんや恭也さんに士郎さんもいる状況では見破るのも容易い。
 しかし、相手が相手と言うのもあって完全にお手上げ状態だ。
 流石にクロノさんやリンディさんに今回のことを尋ねるわけにもいかない。
 伝えれば伝えたで対処してくれるとは思うが、逆に事態が大きくなりかねない。
 現状でも魔導殺しと言う事件の関係もあってややこしい状態だと言うのにもっとこんがらがってしまう。
 相手が魔導殺しとして認識している以上、管理局内でも俺のことを魔導殺しとして認知している人間も多いと言う可能性を考えなくてはならない。
 こう考えると管理局が出てくることの方が避けるべき事態だと思える。
 出てきたら出てきたで逆に収拾不可能な事態になってしまう可能性だってあるくらいだ。
 今更ながら自分の立場と言うものの難しさが響いてくるような気がする。
 魔導師では無いと言う立場は別に問題じゃない。
 問題なのは魔導殺しの息子と言う立場に俺があると言うことだろう。
 管理局で忌み嫌われていると言う俺の父さんの立場は唯でさえ重い。
 当然、これは後を継いでいる俺にもつきまとってくることだ。
 だからこそ、今になって魔導師と相対することになってしまっている。

 傷つけるなら、傷つけられる覚悟をしろ――――。

 それが今の俺の状況ではっきりとしていることだった。
















 状況がはっきりしていても解らないものは解らない。
 とりあえず、相手の動向次第と言うことしか言えないが、既に俺が狙われているのは解っている。
 それなのに此方からは行動を起こせない。
 如何にもこうにももどかしいとしか言いようが無い。
 今、出来ることとすれば襲撃に対して準備を済ませておくくらいしか無い。
 現状、飛鳳と手持ちの暗器の準備は終わっている。
 飛針、鋼糸、小刀――――全部、問題は無い。
 飛鳳も傷一つついていないし、刃の方も全く問題無い。
 俺の準備の方は万端だと言っても良いと思う。
 自分の装備が全て揃っていることを確認した俺は昨日、夏織さんから受け取った霊石を見つめる。

 全ての事件の発端になった物――――

 俺の母さんが任務でこれを狙い、父さんが守ってきた物。
 俺達にとってはなんでもない石でしか無いけれど、管理局にとっては重要な物。
 邪気や魔を払うことの出来る御守り――――。
 霊石はそう言った物だと夏織さんは言っている。
 神咲流の霊剣も魔を払う、または魔を斬ると言った用い方をするから存在意義として似たようなものかもしれない。
 魔力は名の通りで言ってしまえば”魔”の力。
 それが悪しきものとか違うものとかに関わらずに。
 純粋にこの霊石は”魔”を払うためだけにあるものなんだろう。
 恐らくはそれ以外には何も無いんだと思う。
 俺が持っても霊石は何も影響らしい影響は起きない。
 意識を集中させてみても、僅かながらの熱を感じるかのような感覚になるだけだ。
 剣気から発する霊力に僅かながら反応しているだけなのかもしれない。
 どう見ても危険な代物では無いと思う。
 多分、霊石に何らかの力があったとしても霊力を専門とする流派では無い御神流では力を引き出すことは敵わないだろう。
 神咲一灯流やそれに通じる流派の人間、または純粋に退魔の法を遣う様な人間しかこれを遣うことは出来ないんじゃないかと思う。
 こう考えれば魔導師にもこの霊石を遣うことは出来ないはずだ。
 魔導師には霊力と言ったものは一切遣えないどころか魔力しかないのだから。
 この霊石を遣う時点で魔力を失うと言った状況を招くだけでしか無い。
 だから、これを危険視したのかもしれない。
 それに魔力を失わせると言った効力――――魔導師の基準ではロストロギアに当たる可能性も高い。
 ロストロギアに当たる可能性があるからこそ、魔導師が回収に現れたんだろうと思う。
 結局は今の状況もロストロギアの回収と言った部分と父さんが回収を拒んだことに原因がある。
 だが、相手側は霊石のことを諦めて俺の方に狙いを変更している。
 既に事件の発端だった物であるはずの霊石は関係無い――――。
 後は俺が動けば相手も動いてくるはず――――。
 それに相手は人を守る側の立場の人間だ。
 俺を狙うにしても一般の人間を巻き込むような真似は考えないだろう。
 だから、そう言う視点で見てみればある程度の予測が見えてくる。
















 勝負どころは俺が1人で外に出た時だ――――




































 From FIN  2009/7/30



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