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「悠翔、合わせてみろ」
 俺が弾かれるように恭也さんとの間合いを取り直したのを確認した恭也さんが八景を鞘に納め、抜刀術の構えを取る。
 咄嗟に恭也さんの構えを理解した俺は同じく抜刀術の構えを取る。





 ――――小太刀二刀御神流、奥義之壱・虎切





 士郎さんだけでは無く、恭也さんも扱うことの多い御神流の奥義。
 高速の抜刀術であり、一刀で戦う場合には主力となる奥義――――。
 そして、俺が海鳴に来て初めて恭也さんから教わった奥義だ。
 俺の場合は二刀目を抜き放つ際に決め手とすると言う運用法で考えていたが、今回は完全に瞬速の一手として放つ。
 飛鳳と八景が目にも止まらない速さで抜き放たれる。
 そして、二刀の小太刀がぶつかり合い、道場全体に伝わるように金属音が鳴り響いた。























魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 金属音と共に飛鳳が弾き飛ばされる。
 同じ虎切をぶつけたにも関わらず、俺の方がせり負けた。
 虎切だけでも恭也さんとの差は大きいと言える。
 俺は虎切に関しては教えて貰ったばかりで実戦に遣うには程遠い。
 それに対して恭也さんの虎切は士郎さんほどでは無いが、遣い込まれている。
 随分と大きい差だと言うのは間違いないだろう。
 後は俺と恭也さんの純粋な力の差だろうな。
 握力と言った力についても俺と恭也さんでは結構な差がある。
 少なくとも恭也さんは80kgを超えているらしいからな……。
 だが、そういった点は俺と恭也さんの大人と子供の差と言ったものでしか無い。
 やはり、差として大きいのは――――。
「利き腕じゃないのはやっぱり痛かったか」
「……はい。自分でも鍛えていたつもりだったんですが……左腕のようにはいきません」
「だろうな。悠翔の場合は随分と左腕の方が力が強いみたいだからな」
 そう、利き腕を遣っていないと言うこと――――。
 利き腕を遣うか遣わないかはやはり、大きく影響する要素の一つ。
 俺の場合は左腕を壊して以来、一撃に重点を置いて鍛えている。
 決め手に利き腕による雷徹などを遣っているのはそのためだ。
 裏を返せば、奇襲として遣っている一撃の方が本命と言うことでもある。
 そう言った方向性で利き腕を鍛えたのは長い時間は腕を遣うことが出来ないと言ったのが大きい。
 利き腕を遣う時は勝負を決する時――――そう言った考え方だ。
 実際に俺が利き腕を遣う時は相手が自分より上か互角の相手の時、または短期決戦を挑む時と言った状況が基本。
 後は二刀による奥義や技を遣う時だろうと思う。
 それだけ、利き腕である左腕を遣う時と言うのは限られている。
「だが、右腕の方も随分と力はついてきているな。今の虎切の一撃も悪くは無い。後は遣い込みの問題だろう」
「はい、恭也さん」
 しかし、恭也さんから見れば今の一撃は及第点だったらしい。
 遣い込みの問題と言うのは俺がまだ、虎切を教わって日が経っていないと言うことと殆ど遣っていないと言うこと。
 これは時間をかければ解決する問題だから大丈夫だろうと思う。
「とりあえず、今回はこのくらいにしておくか。これ以上、悠翔も遣らない方が良いだろうしな」
「……すいません」
 簡単に恭也さんからの指摘を貰ってから今回はここまでと言う話になる。
 俺の腕のことを気遣ってのことらしい。
「気にするな。無茶をして俺のようになられるよりはずっと良い」
 恭也さんからすれば俺には怪我のことで引きずって欲しくないと言うことなんだろう。
 これ以上、悪いままにしておいたら以前の恭也さんのようになってしまう――――それは誰が見ても明らかだった。
 恭也さんから朝のトレーニングを見て貰い、簡単に指摘を貰う――――。
 こうして、俺の手術前の朝は過ぎていくのだった。
















「はふぅ……」
 あくびを噛み殺しながらゆっくりと背伸びをする私。
 昨日は色々とあったのもあるのか思ったより眠れなかった。
 悠翔とのデートは凄く楽しくて、幸せで。
 更にプレゼントまで貰ってしまって……。
 悠翔は私を喜ばせることばかりしてくれる。
 昨日は悠翔からは貰ってばかりで私からは何もしてあげられなかったような気もする。

 だけど、悠翔ってああ言った性格だから――――

 悠翔から貰ったネックレスを見てそんなことを思う。
 私の大好きな人はとっても不器用で優しくて。
 だけど、私のことを良く見ていてくれる――――そんな人。
 悠翔は私が欲しいと思ったものも解っていた。
 私の表情だけで読み取ったのか、なんとなく読み取ったのか。
 そんなことまでは解らないけど……悠翔は私のことを見ていて。
 そう思うと少しだけ恥ずかしい気持ちにもなってしまう。
 でも、悠翔のその心遣いが嬉しくて。
 昨日は私にとってもの凄く印象に残った一日だったと思う。
 だけど、昨日はそんな幸せばかりじゃなくて……。
 悠翔と魔導師との因縁が持ち上がって来た日でもあったりして。
 少しだけ複雑な気持ちにもなってしまう。
 悠翔とのデートだけで昨日と言う日が終わっていればどれだけ幸せな気持ちになれたんだろう。
 つい、そんなことを思ってしまう。
 それだけ昨日の最後のことは大事なことだった。
 悠翔のお父さんに因縁を持つ魔導師達――――。
 過去の出来事だけど今もそれを引きずっていて……。
 悠翔のお父さんの起こした出来事がどれだけ大きいことだったのかがそれだけでも理解出来る。
 でも、この事件は悠翔本人には関係があるわけじゃなくて……。
 魔導殺しと呼ばれた悠翔のお父さんの後を継いだと言うだけでそう言われてしまっている。
(でも、私が悠翔を守らなきゃ)
 昨日、私が決意した悠翔を守ると言うこと――――その時が刻々と迫っている。
 だけど、今日は学校もある日。
 とりあえずは義母さんやクロノに心配をかけないように学校の準備をしてからにしよう。
 管理局の人間同士で戦うなんて本当はあってはならないこと――――。
 でも、大切な人を守るんだったらそれも躊躇ってはいられなくて――――。
 私はその思いを強くしながら、目覚ましのために顔を洗いに行った。
















「おはよう、フェイト」
「あ、おはよう。義母さん」
 顔を洗ってダイニングルームで義母さんと朝の挨拶を交わす。
 とりあえずは顔を洗って少しはすっきりしたから、眠そうな感じにはならなかった。
 昨日のことは義母さんに勘付かれたりしたりしたら駄目だから。
 一応はすっきり出来たのは都合が良かった。
「そう言えば、昨日はどうだったの? なのはさん達とは別行動みたいだったけど」
 朝食の準備をしながら義母さんが昨日のことを聞いてくる。
 一瞬だけびくっとしてしまったけど、気を取り直して義母さんに答える。
「うん、昨日は悠翔と一緒だったの」
「あら、そうなの? もしかして、ふたりっきり?」
「う、うん……」
「あらあら……」
 義母さんからふたりっきりだったのかと聞かれるけど……ここは正直に答える。
 少しだけ頬が熱くなるのを感じるけれど……そんなことを気にしてるわけにもいかない。
「ふたりっきりだったってことはデートだったんだろうけど……フェイトは悠翔君とつきあうようになったのかしら? まだ、出会って数日だけど」
「え、えっと……その……」
 ふたりっきり=デート。
 私達のような年頃で男の子と女の子のふたりっきりだと殆ど必然的にそんな図式が成り立ってしまう。
 実際に私と悠翔はデートをしていたんだけど……。
 こうして、他の人から言われるのはなんとなく恥ずかしいような気がする。
「ああ、なんとなく解ったから言わなくても良いわ。そう、悠翔君と……」
「あぅ……」
 私が答えられなくなっていると義母さんにはなんとなく解ってしまったらしい。
 不自然な私の返事になんとなく思うところがあったみたいで……簡単にバレてしまう。
 別に隠すつもりなんて無いし、公にするのもどうかと考えていたけど……こうなってしまったら意味も無くて。
 とりあえずはもう、腹をくくるしかない。
 後でクロノがこのことを知ったらどんな反応をするのか解らないけど……成り行きに任せよう。

 ――――うん、それしか無いような気がする

 なんだか話が随分と逸れてしまったけど……逆に義母さんからの話題は有り難かった。
 これから私が何をするかなんてとても言えないんだから……。




































 From FIN  2009/7/23



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