それに悠翔は元々の気質からして本当のことを言ってくれない。
 多分、それは悠翔の在り方にあるんだと思う。

 剣士は手の内をバラすのを嫌う――――

 悠翔の場合はそれが普段の自分にも繋がっているんだと思う。
 私も悠翔の言っているそのことは良く解っているつもり。
 そうしてきたからこそ今の悠翔がいるんだとも思うから。
 だけど、悠翔はそれも関係なく本音を言ってくれるようになっている。
 相手が私だからこそ言ってくれているって言うのもあるとは思う。
 それが解るから私は本当に嬉しく感じる。
 悠翔が私だけには本音で話してくれる――――。
 それは、私が悠翔の特別だってことを意味しているんだから――――。






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「……ああ、照れてるんだと思うな」
 フェイトの思わぬ問いかけに俺はこう答える。
 「照れてる?」と聞かれてそれが嘘か本当かと聞かれれば本当のことだ。
 不覚にも顔が熱く感じてしまっている。
 話題を振ったのは俺の方からだが、逆にフェイトから率直に返されたのが思ったよりこたえている。
 フェイトが躊躇うことなく俺とこうした状況になっていることに肯定の返事をしてくれたことが嬉しく思う。
 この場所は人気のデートスポットだと聞いた。
 こうして俺とフェイトもふたりっきりでこの場にいると言うことは周りにいる人達と変わらない。
 それが本当のことだとは言え、逆にフェイトから堂々と肯定されると照れくさく感じる。
 すっかりフェイトも俺の彼女だと自分で言っているような感じになってしまっていると思う。
 まぁ……俺の方もフェイトの彼氏だと自分で言っているような感じになっているから同じなんだろうが。
 そう言った意味でも俺とフェイトは同じだと思うと嬉しく感じる。
 俺も1人の女の子をここまで好きになったのは初めてだと思う。
 俺の知り合いにはアリサやすずかと言う魅力的な女の子がいたと言うのにフェイトの存在はそんなことも関係なく入り込んできた。
 2人ですらフェイトの前には何もなかったような感じだと言っても良いのかもしれない。
 本当にフェイトの存在はすとん、と俺の中に入り込んできた。
 俺は俺なりにアリサとすずかのことは大切だったと思うし、守らなくてはいけない人だったと思う。
 だけど、アリサやすずかの場合は自分が護衛者として守ると言う感覚だったと思う。
 確かに友人としても守らなくてはと思っているが、あくまで1人の異性としての感情では無かった。
 しかし、フェイトの場合は初めて会った時にはもう何かしらの感情を持ったと言っても良い。
 フェイトを助けたのは本当に偶然だったのだが、その偶然が全ての始まりだったんだろう。
 初めは綺麗で可愛らしい女の子と言う印象が強いだけだった気がする。
 だが、俺のことを話しても全く怖がることは無く、寧ろ話を聞いても俺は俺だからと言っていた。
 唯、それがきっかけだったのは間違い無いと思う。
 アリサやすずかの場合は俺の立場を解っている上で俺のことを言ってくれていたが――――。
 フェイトの場合は俺のことを知らないのにも関わらずそう言ってくれた。
 だから俺はフェイトは他の娘と違うと思ったのかもしれない。
(なんにせよ、フェイトには一本取られてしまった、な)
 フェイトにすっかりと惚れこんでしまっている俺。
 今となってはフェイトには取り繕っても仕方が無い。
 それが解っているからこそ今の俺の感情を正直にフェイトに対して伝えた。

 全く、敵わないな――――
















「えへへ……」
 悠翔が私の言葉に照れているって言うのが解って、私の方もつい笑みがこぼれてしまう。
 昨日から悠翔のポーカーフェイスが随分と崩れてきているような気がする。
「……フェイト。あまり、笑わないでくれ」
「あ、ごめん……悠翔。つい、嬉しくって」
「……まぁ、別に良いさ。俺があまり表情に出さないのは自覚してるからな」
 そう言って苦笑する悠翔。

 う〜ん……自分でもそんな自覚を持ってるんだ……
 悠翔らしいと言えば悠翔らしいけど……
 でも、その通りと思えばその通りなのかなぁ?
 悠翔があまりそう言った面で感情を出さないのは本当だと思うし……

「だけど、フェイトの前だからな。こんな俺も別に良いんじゃないかって思えるな」
「……悠翔」
 でも、悠翔が私の前でだからと言ってくれているのが凄く嬉しい。
 それだけでも私が悠翔の特別だって実感出来るから。
 本当に些細なことだけど……悠翔とはそういったことだけでも嬉しい気持ちになれる。
 自分にとって特別な人から特別だと言われるのは私にとっても女の子冥利につきると思う。
 私も悠翔のことを意識しているからこんなことを思ったりするのだけれど。
「うん、でも……そう言うのは他の人に見せても良いけど、私以外の女の子のことで見せちゃ駄目、だよ?」
 だからこそ、ちょっとだけ独占欲を表に出してみる。
 悠翔は優しい人だから他の人が相手でも優しい表情を見せたり出来ると思う。
 それは別に良いと思うの。
 悠翔が優しい人だって言うのはなのはやはやてにも知って欲しいことだから。
 だけど、今の悠翔は私の彼氏なんだから……私以外の女の子のことでそんな表情をするのはむっとしてしまう。
「解ってる、気をつけるよ。……とは言ってもフェイト以外の女の子でこういった感じにはならないと思うけどな」
「もうっ……悠翔!」
 悠翔の答えに頬が熱くなるのを感じる。
 からかっているような口調になっているけど……悠翔が言っているのは本当のことで。
 悠翔もそのつもりで言っているんだと思う。
 それが解っているからこそ私はこんなふうな反応になってしまう。
 でも、そんな悠翔がやっぱり好きで。
 私もすっかり、変わっちゃったなぁ……って思う。

 そんなのも全然、嫌じゃないけど、ね――――
















 2人で暫く、他愛も無い話をしながらぴったりと寄り添って。
 私達は良い時間になるまでのんびりとして触れ合っていた。
 悠翔の傍に寄り添っていると……殆ど癖になっているのか悠翔は私の頭を優しく撫でてくれる。
 何故だか、それが凄く気持ち良く感じる。
 悠翔に頭を撫でて貰うのって他の人と違う感じがして。
 やっぱり、相手が悠翔なだけでも随分と違う感覚がする。
 好きな人に撫でて貰うのがこんなにも気持ちよく感じられるのは……それだけ私が悠翔に触れていて欲しいからだと思う。
 前になのはがユーノに撫でて貰うのが凄く気持ち良いって言っていたけど……今は私もそれに同意できる。

 本当になのはの言うとおりだったかも……

 考えて見るだけもこんな感想が浮かんでしまう。
 どんどん、ユーノに依存していくような傾向に感じるなのはと私は同じようなものかもしれない。
 私もすっかり、悠翔に依存しているような感じになってる気がする。
 でも、それだけ悠翔と触れ合っているのが好きだってことにもなる。

 ああ……本当に私もなのはと変わらないかも?

 普段から「ユーノ君、大好きだよ♪」と公言して憚らないなのはだけど……。
 今の私なら「悠翔、好きだよ♪」と平然と言えてしまうような気がする。
 なんだか、こんなところまでなのはと同じになってしまうなんて……。
 普通には考えられなかったことだと思う。
 今までの私は男の子にこんな感情を持つだなんて考えたりもしていなかったのだから。
 クロノにすら私はこんな気持ちになったりはしなかったことを考えると……。
 それだけ、私は恋愛沙汰には縁が無かったはずだったはず……。
 でも、すっかりと悠翔のことに夢中になってしまっていて――――。

 これも……全部、悠翔のせいだからね?

 今では本当にそう思えてしまって。
 だけど、それが全然嫌じゃなくて……。
 私がどれだけ悠翔に惚れこんでいるのかが良く解ってしまう。

 うん、もう少しだけこうしていたいかな?
 未だに悠翔と寄り添っている私だけど……
 もう少しだけこうしていたくて……
 それが今の私の素直な気持ち――――

 悠翔にもその気持ちが伝わったのか、悠翔は私の頭を優しく撫でてくれた――――。



































 From FIN  2009/6/11



 前へ  次へ  戻る