とりあえず、悠翔も別にまんざらじゃ無かったみたいで。
 悠翔ももしかしたら私と同じような気持ちを持っていたのかもしれない。
 そう考えると嬉しくなってしまう。
 今は私だけが意識しっ放しってわけじゃ無い。
 悠翔も私のことをちゃんと意識してくれている――――。
 そのことが私を満たしてくれる。
 悠翔と一緒だと本当にそう感じる。
「よし、そろそろ買い物にでも行こう。フェイト、案内してくれるか?」
「うんっ!」
 私の気持ちを知ってか知らずか悠翔が私の手を取って――――私も悠翔の手を握り返す。
 漸く、デートも午前の分が終わったばかりで時間も残っている。
 私達のデートはまだまだこれから――――。






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 フェイトにエスコートして貰いながら駅前を歩いて回る。
 そう言えば初日に海鳴に来て以来、街はそんなに見て回っていないような気がする。
 殆どは病院に行くのがメインだったからじっくりと街を見て回ったわけじゃない。
 そんなだったから俺も街をあまり覚えていないと言うのもある。
 病院に通っている時はまだ、フェイトとはこうなるなんて思ってもいなかったからな――――。
「どうしたの、悠翔?」
 そんなことを考えているとフェイトが首を傾げながら俺の顔を覗き込んでくる。
 フェイトは何処となくきょとんとしているような感じの様子だ。
「いや、こうしてフェイトと街を歩いて回るなんて海鳴に来た頃には考えられなかったなって」
 俺の言葉に少し吃驚したような表情をするフェイト。
 少しだけフェイトは考え込むような仕草をした後、口を開く。
「うん、そうだね。数日前までは私も……悠翔とこうしているなんて思ってなかったと思う」
 フェイトもやはり、俺と同じような感覚を持っていたらしい。
 まぁ……流石に数日しか経っていないのにこう言った関係になるだなんて誰が思っただろうか。
 俺もこんなふうになるなんて思っていなかったし。
 多分、フェイトだってこうなるとは思っていなかったと思う。
 改めて考えてみれば見るほど吃驚する。
 フェイトとは出会ってそんなに経っていないのにどうしようもなく惹かれて。
 知り合った期間の長さで言えばアリサやすずかの方がずっと長い。
 アリサとすずかに関しては護衛もしたり、パーティーなどでも会ったことがある。
 確かにアリサとすずかは自分が守るべき女の子だった。
 なのにアリサとすずかに対してはこんな気持ちにはならなかった。
 理由なんてはっきり言って解らない。
 フェイトの場合は初めて海鳴で会った時に見知らぬ男に絡まれているのを助けたことから。
 その時にまぁ……色々とあったと言えばあったんだが。
 理由としては多分、そう言ったことがあったら――――と言うことでは無いと思う。
 それだけではフェイトに惹かれた理由としては弱い。
 俺がどうして、フェイトに惹かれたか――――。
 それは多分、俺に関することを真摯に受け止めてくれたからだろう。
 出会った初日、俺はフェイトに対して「俺のことが怖くないのか?」と聞いたことがある。
 フェイトから返ってきた答えは「優しい人だから怖がる理由なんてない」と言うことだった。
 その時の言葉に続いてフェイトは「普通じゃないとしても私だって同じ」だと言っていた。
 あの時、この言葉を聞いて俺は凄く驚いたと思う。
 そして、決め手の言葉は「悠翔は悠翔なんだし……怖くない」だった。
 俺はきっとこの言葉を聞いたあの時からフェイトに惹かれていたんだと思う。
 こんなことを言ってくれた女の子は俺にとっては初めてで。
 しかも、フェイトは本気でそう言ってくれた。
 実際にフェイトに対しては何度も怖い部分を見せているはずだが、一度も俺から目を逸らしたりしていない。
 フェイトは「怖いと思ったとしても悠翔から目を逸らしたりしない」とも言っていたが……本当にそうだった。
 真っ直ぐに俺のことを見つめてくれる女の子――――それがフェイトだった。

 そんなフェイトだから、俺はどうしようもなく惹かれたんだな――――
















「うん、そうだね。数日前までは私も……悠翔とこうしているなんて思ってなかったと思う」
 私も悠翔の言っていることに頷く。
 悠翔の言っていたことは私も感じていたりしていたことで。
 出会って数日しか経っていないのに悠翔とはこうして一緒にいる。
 しかも、恋人同士と言う関係になって。
 普通にはとても考えられないような感じだと思う。
 思えば私と悠翔の出会いは変な男の人に絡まれていた時に助けてくれたのが全ての始まりだった。
 それから士郎さんとの立ち合いの時に悠翔の剣を見せて貰って、その在り方を聞いた。
 悠翔は自分のことについて話していた時に「俺のことが怖くないのか?」って聞いてきた。
 でも、私はその時に「悠翔は優しい人だから怖がる必要なんてない」って答えた。
 見ず知らずの私を助けてくれたって言うのもそう答えた理由だったんだけど……。
 それ以上に悠翔の目を見た時からこの人は優しい人なんだな……って感じたのが理由だと思う。
 あの時の悠翔は自分のことを普通じゃないとも言っていたけど……「私だって同じ」と私は答えた。
 結局、それについては御互い様だったけど、私は「悠翔は悠翔なんだし……怖くない」って伝えた。
 悠翔も「フェイトはフェイトだから別に良い」と言っていた。
 思えば私は出会ってすぐの頃から悠翔に惹かれていたんだとはっきりと解る。
 うん、本当にあることなのかは解らないけど一目惚れで間違いないと言えると思う。
 悠翔と接して色々と自分のことを見せていくうちに悠翔のことを色々と知りたいって思うようになって……。
 それが延々と止まらなくなっちゃったって感じかな?
 今ではもっともっとそう思う気持ちが強くなってきて――――。
 本当に溢れそうな感じで――――。
 心の底から悠翔に惹かれているって実感出来る。
 悠翔とは気持ちが通じ合えたけど……もっと悠翔に近づきたいと思う。
 今もこうしているけれど……どうしてもそう思ってしまう。

 私はこんなにも悠翔に惹かれているんだな――――
















「御互い様だな」
「うん、そうだね」
 悠翔も私も出会ったばかりの時を考えると予想も出来なかった関係になっている。
 偶然なのか私も悠翔も同じようなことを考えていたみたいで。
 2人そろって頷きあう。

 なんか、同じ気持ちでいるって言うのがこんなにも感じられるなんて不思議な気持ち……

 同じようなことを考えているって言うのは今まででも何度かあったことだけど――――。
 ここまで同じ時、同じタイミングで同じことを考えていたことなんて初めてだと思う。
 悠翔から見てもそれはきっと同じで。
 私と同じことを考えていてもここまでタイミングが一致するなんてことはきっと初めてだと思う。
 それだけ私達2人が考えていたことって言うのは解り易かったのかもしれない。
 でも、そんな些細なことが凄く嬉しく感じる。
 私って結構、現金なのかもしれない。
「まぁ、こう言うのって悪い気はしないな。フェイトと同じ時に同じことを考えていたのって良いなって思う」
「え、悠翔もそう思ったの?」
 悠翔の言葉につい吃驚してしまう。
 たった今、私が考えていたことまで悠翔と同じだったなんて。
「ん……? フェイトもそう思っていたのか」
「……うん。なんか私達って同じだね」
「そうだな……同じ、だな」
 悠翔も私も同じことを考えていて。
 それがなんかくすぐったく感じてしまう。
 だけど、悠翔はそのことを嫌がるどころか嬉しそうにしている。
 私の方も嫌どころか凄く嬉しく感じる。
 なんだか、そう言ったところも止まらなくなってきた気がする。
 ううん、悠翔と恋人同士になったからこそこんな気持ちになったのかもしれない。
 だけど、それが凄く心地よく感じる。

 やっぱり、好きな人と同じ気持ちでいるのって嬉しいから――――



































 From FIN  2009/5/28



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