「じゃあ、行ってきます」
 慌てて行ってきますの挨拶をして私は家の方から出る。
 もしかしたら、悠翔が既に待っているかもしれない――――そんなことを考えながら。
 私が慌てて出てみるとまだ、悠翔の姿は見えない。
(一応、間にあったみたい),br>  もし、悠翔を待たせるようなことになってしまったら本当に申し訳無いと思う。
 今回、悠翔がこっちに来てくれるのは待ち合わせの約束をしていなかったのが理由だから。
 私もその約束をしていなかったことを失念していたから悠翔に気を遣わせてしまった。
 初めてのことにやっぱり、浮かれていたんだとしか思えなかった。
 少しだけ落ち込みながらも私は悠翔が来るのを待つ。
(落ち込んでもしょうがないし……。悠翔とはやっぱり、こんな気持ちで会いたくないもの)
 落ち込んだ表情のままで悠翔と会うなんて……とても出来ない。
 こんな気持ちではきっと、楽しめるものも楽しめない。
 やっぱり、初デートはとびっきりの笑顔で会いたいと思う。

 大好きな男の子と会うのに、暗い表情なんて見せられないから――――。






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 まだ、来ていないことを確認して私は悠翔を待つ。
 待ち時間もデートの内だって聞いたことがあるけど……本当にそんな気がする。
 家から出てくる前もずっとドキドキしていたし。
 今もまだ、ドキドキしている。
 もう少ししたら悠翔が来るのは解っているのに。
(なのはも何時もこんな気持ちになっているんだろうな)
 こんな時に思い浮かぶのは私と同じく彼のいるなのは。
 なのはもユーノとのデートの時はものすごく気を入れていたと思う。
 こうして、相手が来るのを待っているだけなんだけど……。
 なのははこう言った時間も大事だって言ってたと思う。
 管理局でなのはがユーノを待っている姿を見たことはあったけど……。
 その時のなのはは待っているのに何処となく幸せそうな表情をしていた、と思う。
 今まではなのはがどうしてユーノを待っているだけでそんなに嬉しそうにしているのか解らなかった。
 だけど、今ならその気持ちがなんとなく解る。
 唯、悠翔を待っているだけなんだけどなんとなく温かい気持ちになる。
 なのはもユーノを待っている時はいつもこんな気持ちでいるんじゃないかって思う。
(悠翔、まだかな?)
 さっきまでは落ち込んだような気持ちだったけど、今はすっかり悠翔を待つのが楽しみに。
 時間としてはまだ、5分も経っていないのにそれが凄く長く感じる。
 暫く、そわそわとしながら待っていると道の向こうに悠翔の姿が。
(来た……)
 私の姿に気付いた悠翔が急いで駆け寄ってくる。
 悠翔は待たせてしまっていたと思ったのかもしれない。
 でも、待っていた時間も色々と思うことがあったし……良かったと思う。
 そう思いながら駆け寄ってくる悠翔に私は手を振った。
















 フェイトの姿を認めた俺は急いでフェイトに駆け寄る。
 一応、連絡をしておいてはいたが、フェイトはそれにちゃんと気付いていてくれたらしい。
「ごめん、待たせたな」
「ううん、待ってないよ。私こそごめんね? デートに誘ったのは私なのに場所を指定しなくて」
「いや、もし場所を指定したとしても俺の方が解らなかった可能性が高いからな……結果オーライだ」
 フェイトが今回のデートで待ち合わせ場所を指定しなかったことを謝ってくる。
 しかし、待ち合わせ場所を指定したとしても俺の方が海鳴に詳しくない。
 フェイトが知っている場所だとしても俺の場合は解らない場所だと言う可能性も高い。
 そう言った意味では逆に指定しなかった方が正解だったと言えた。
「うん、ありがとう悠翔。それじゃあ……早速、行く?」
「……ああ。そうしようか」
 フェイトが俺の反応を見て笑顔になる。
 多分、俺が困っていたとでも思っていたんだろう。
 流石に場所の指定をせずに待ち合わせるなんて出来はしないし。
 それが逆にプラス方向に働いたことでフェイトの表情から笑みが漏れたんだと思う。
 フェイトに行こうと促されて、俺も頷く。
「えっと……手をつないでも良い?」
 歩き始める前にフェイトが俺の顔を覗き込みながらおずおずと尋ねる。
 その表情はとても可愛らしく見える。
 惚れた弱みもあるのだが、こうして付き合うことになったのもあるのか一層、可愛らしく見える。
 当然、フェイトの頼みを断る理由なんてものは存在しない。
「ああ、構わない」
「えへへ……♪」
 俺の返事を確認したフェイトは嬉しそうに俺の手に指を絡めてくる。
 俺もフェイトの行為に応じ、指を絡めた。
 今、フェイトが俺と手をつないでいる方法は所謂、恋人つなぎと呼ばれるもの。
 フェイトも一度はやってみたかったのだろうと思う。
 嬉しそうに頬をうっすらと染める。
 俺も少しだけ気恥ずかしく感じるが、なんとなく心地よかった。
 こうして、俺とフェイトは指を絡めたまま海鳴を歩き始めた。
















 悠翔と指を絡めたままゆっくりと歩き始める。
 この手のつなぎ方は恋人つなぎって言う方法なんだって。
 悠翔が好きだって自覚してからはずっとやってみたいって思っていた手のつなぎ方だった。
 今までは普通に手をつないでいただけだったけど……。
 こうして、つきあうことになったんだから恋人つなぎをやっても良いんじゃないかなって思う。
 悠翔も解ってくれているのか、拒むことなく指を絡めてきてくれた。
 それがなんとなく、嬉しかった。
 普段よりも手をしっかりと握っていて、指も絡めて――――。
 初めてやってみたことだから少しだけドキドキする。
 つないだ手からは悠翔の熱を感じる。
 悠翔と手をつないだのは初めてではないけれど、その時以上に悠翔の熱を感じる気がする。
 その感じる熱に私も胸がどきっ……と高鳴る。
 なんか昨日からずっと、ドキドキしっぱなしな気がする。
 それだけ悠翔のことを意識しているんだと思うと逆にそれが嬉しい気もする。
 今の私は悠翔とつきあっているんだからこのくらいは別に普通だと思うし……。
 やっぱり恥ずかしいとか言うよりも悠翔とこうしていることの嬉しさの方が大きい。
 そう考えながら私は悠翔の横顔をちらっと見る。
 悠翔もほんのりと頬を染めているような気がする。
 私と同じように意識してくれているのかな?
 悠翔はあまり表情に出さないから解らないけど……多分、意識してくれてはいるんだと思う。
(なんか良いな……こういうの)
 御互いに意識していて……御互いに感じている。
 2人で同じ感覚を共有しているって言う感じがして凄く嬉しいと思う。
 だけど……もっとドキドキしたいし、もっと感じたい。
(やっぱり、私は悠翔のことがどうしようもなく好きなんだな――――)
 こうして手をつないでいて、私はそう実感した。



































 From FIN  2009/5/14



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