「だが、悠翔の場合は利き腕の負傷の分と虎切を極めていないからそれが出来ないと言ったところだろうな」
「……はい」
 士郎さんの遣っている二刀差しは俺も遣っている方法だ。
 しかし、俺の場合は一刀のみで戦うと言うことを前提にしているために二刀差しを遣っていると言う側面が強い。
 だが、俺の場合は二刀差しの特徴を活かし切れているとは言い難い。
 一刀のみで戦うと言うことであれば、裏十字もそれに適しているからだ。
 そう言った意味では俺は裏十字を基本とした方が良いのかもしれない。
「なんにせよ、父さんが遣った方法は二刀差しならではの方法だ。参考になったんじゃないか?」
「はい。今の俺では遣えませんが……出来るようにはなりたいと思います」
 今の俺では士郎さんのような二刀差しの遣い方は出来ない。
 だが、一刀のみを前提とした戦い方も行う上では士郎さんの戦い方は参考になる。
 それに、後の先がどれだけ有効な手段かと言うのも改めて確認出来た。
 今回の立ち合いは見て損は無かったな――――。






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 士郎さんと夏織さんの立ち合いが終わった後、高町家に戻る。
 訓練は元々から高町家では日課なので桃子さんもそれを解っている。
 桃子さんは朝食の準備を済ませていてくれていた。
 なのはさんも桃子さんの手伝いをしているらしく一緒に準備をしている。
「おかえりなさい。朝ご飯の準備出来てるわよ」
「解った、ありがとう桃子」
「ごめんね、桃子。私の分まで準備して貰って」
「いいえ、良いんですよ。此方に滞在している時くらいしか夏織さんには作らないんですし」
「そう言って貰えると嬉しいわね。じゃあ、御言葉に甘えさせて貰うわ」
「はい、夏織さん」
 先日の様子とはうって変わって仲が良さそうに見える夏織さんと桃子さん。
 元々はそんなに仲が悪いわけじゃないのだろうか。
 それとも、士郎さんが絡んでいなければと言う問題か――――?
「あ、そう言えば悠翔は今日の予定とかはどうするの? また、なのはちゃん達と一緒とか?」
「いいえ、約束はしていませんね。今日は一応、俺1人で個人的に動きますよ」
「あら、そうなの? なのはちゃん」
「はい。今日は悠翔君とは約束してないです」
 夏織さんは俺が今日もなのはさん達と一緒に行動すると思っていたらしい。
 考えはしていたが、既に今日については先約がいるのでそう言うわけにもいかない。
 なのはさんにはまだ何も伝えてはいないが、約束をしていたわけでも無い。
 なのはさんの返答は当然と言えば当然だった。
「そっか。ありがとう、なのはちゃん」
 なのはさんからも話を聞いてとりあえず、納得はしたらしい夏織さん。
 しかし、俺が個人的に動くと言うことに何かを感じていたりはしていないだろうか。
 今のところはとりあえず、大丈夫だとは思うのだが――――。
















 とりあえず、朝食を済ませて部屋に戻った俺は早速、フェイトとの約束のために準備を始める。
 デートとは言っても俺は海鳴に詳しくない。
 精々、知っているところも病院や公園くらいだろうか。
 後は訓練などのために出かける場所なので今回の場合は行くのに適していない。
(フェイトが頼りだな……)
 少し情けない気もするが、今回のデートについてはフェイトに頼らざるを得ない。
 俺では行ける場所が本当に限られてきてしまうからだ。
 とは言っても悔やんでも仕方が無い。
 海鳴に来たのが初めてである俺ではこの辺りに関してはどうしようもないからだ。
 フェイトが何処にいきたいかと言うのもあるだろうが、これについてもフェイト任せにするしかない。
 初デートで彼女に任せるしか無いのは少し残念だと思う。
 しかし、この際だから頼ってみるのも一考かと思ってしまう。
(フェイトの新たな一面が見れるかもしれないからな――――)
 少し、不謹慎な気もするがこれはこれでフェイトがどうするのかが楽しみでもある。
 もしかしたら、今頃は色々と悩んでいるのかもしれない。
(フェイトは少し抜けている部分があるからな――――天然とでも言えば良いか)
 良い意味でも悪い意味でもフェイトは天然っぽい部分があると俺は思う。
 こう言った部分があるからこそ今回のフェイトが何を考えているかが気になってしょうがない。
 悩まなくても良いところで悩んでいるような気がしてならない。
 まぁ……こう言った天然が入っている部分もフェイトの魅力だと思う。
 俺の前ではそれが顕著に表れているようにも見えるが、それはフェイトが自分の前で取り繕ってはいないと言うことなのかもしれない。
 俺もフェイトの前では自分を隠さずにいられる――――それが、何処か嬉しかった。
 フェイトとの約束の時間まで、もう暫くある――――。
 とにかく、楽しみだな――――。
















 悠翔と別れてから私は今日のデートのために色々と考えてみる。
 そう言えば私もデートって初めてだからどうすれば良いのか解らない。
(とりあえず、御洒落はするとして――――?)
 服装はなんとなく大事だと思う。
 普段から服装にはそれなりに気をつかってはいるけれど……。
 デートではどういった服装をすれば良いかだなんて考えたことも無かった。
 とりあえず、似あうと言われた服装にすると決める。
(少しでも悠翔には可愛く見て貰いたいし――――)
 悠翔とは朝に会ってきたばかり。
 だけど、それはデートとしてじゃなかったから……。
 私の服装は動きやすい服装でしかなかった。
 でも、今から悠翔に会うのは違う。
 普通に遊びに行くんじゃなくてデートなんだから。
 尚更、気を入れて身嗜みを整えようと思う。
(えっと……下着はどうしよう?)
 身嗜みのことを考えていると下着のことまで頭に浮かんでしまう。
 普段の私はえっと、黒い下着を好むんだけど……。
(ううん、私ったら何を考えてるんだろ……)
 初デートなのに変なことまで考え始めてしまっている。
 悠翔と私はまだ、付き合い始めたばかりなんだからそう言ったことはまだ早いと思う。
(でも……もし、そうなったら?)
 だけど、こんな考えも浮かんでしまう。
 悠翔が相手だったら全然、嫌なんかじゃない。
 寧ろ、私から誘ってしまうかもしれない気がする。
(うん、やっぱり……それも考えておこう)
 初デートだからこそ何があるか解らない。
 私としては悠翔とならそうなっても良いと思うし……。
 そう考えた私は所謂、勝負下着みたいなもの……だったかな? を選んでおく。
 普段はそこまで考えないんだけど……今回は悠翔とふたりっきりだし。
 こう言った部分もつい、気を遣ってしまう。
(とりあえずはこのくらいかな?)
 後はお化粧とかもした方が良いのかなとも考えるけど、それは止めにしておく。
 悠翔の前では無理に着飾りたくない。
 そう言った意味では服装に気を入れるので精一杯だから。
 私はとりあえず、リップクリームを塗っておくだけにしようと決める。
(うん、これで良いかな)
 大体のことを決めた私。
 後は朝食を食べ終わってから準備をするだけ――――。
 そう思っていたら義母さんから声がかけられる。
「フェイト、朝ご飯よ〜」
「は〜い」
 準備のことを色々と考えていたら何時の間にかそんな時間になっていたみたい。
 私は心なしか早足でダイニングルームへと向かっていく。
 朝食が終われば悠翔とのデートがあるんだから――――。
 そう考えると自然に身体が動く。
 約束まではまだまだあるけれど――――はっきりと言えることが一つ。
 悠翔とのデートが楽しみ――――。



































 From FIN  2009/5/7



 前へ  次へ  戻る