「速度を上げていると言うのも確かにあるが、それとは別に普通とは違う領域で動いているからな」
「普通とは違う領域?」
「まぁ……例え話みたいなものだけどな」  ああ、そうなんだ……。
 何があるかは解らないけど、その秘密があるからこそ真・ソニックフォームでも神速には敵わないんだ……。
 どんな方法かは解らないけど、神速には魔法では決して追いつけない何かがある。
 そう考えれば悠翔の神速を追えなかったことも納得出来る。
「だが、今回に関して言えばフェイトが反応出来なかったと言うのは一瞬の虚を突いたからに過ぎないと俺は思う」
「え……?」
 でも、悠翔から出てきた答えは少し意外な答え。
 今の悠翔の言い方からすると、私でも神速を相手に反応は出来るって言いたいのかな?
 意味合いが少し解らないけど……悠翔はエクスが反応してきたのと同じことを言いたいのかもしれない。
 そう言えば、ファリンさんも悠翔の神速に反応していたような……?
 尤も、ファリンさんがどうしてあんな真似が出来たかなんて解らなかったけど――――。
 ファリンさんもああ言ったことが出来るって言うことは悠翔の言っていることは本当にそうなのかも。
 私も恭也さんと立ち合った時に少しだけそう言った感覚があったような気がするし……。
 まぁ……私の場合は反応するどころか一瞬の閃きを感じただけでしか無かったんだけど。
 それに……考えてみれば悠翔自身もそう言った点ではかなり凄い方だと思う。
 真・ソニックフォームを相手にしながらもギリギリで神速を遣ってきたことを見るとそうにしか見えないから。
「それに神速は数秒程度しか持続出来ないからな。そう言った意味ではフェイトの真・ソニックフォームだったか? の方が凄いと思う」
「そうかな……?」
 悠翔はそう言うけど、私にはあまり実感出来ない。
 神速が数秒程度しか持続出来ないって言っても……こう言った戦いだとあまり関係無いような気もするし。
 私にはあまり解らないけど、悠翔には神速が長くは持続出来ないことが欠点だと思ってるみたい。
 だから、悠翔は神速よりも魔法の方が凄いって言っているんだと思う。
 でも、私から見れば神速の方が凄く見えるわけで……。
 う〜ん……これってどっちもどっちなのかな――――?






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「まぁ、今回の立ち合いについての解説はこのくらいにして……一つ聞きたいが構わないか?」
 神速の解説が終わったところで悠翔が一つ質問をしてくる。
「うん。良いよ」
「フェイトの最後に取った形態の時の武器なんだが……あれは御神流の二刀を参考にしている部分があったりするのか?」
 悠翔の質問の内容は私のライオットザンバーのこと。
 ライオットザンバーは確かに二刀流の形態なんだけど――――。
「ううん。あの形態はシグナムとの度重なる模擬戦で生まれた形態って感じかな?」
 御神流がきっかけで生まれた形態と言うわけじゃない。
 唯、編み出した後でなのはから恭也さんの剣を聞いたから色々とやってみようかなと思ったのは事実なんだけど。
「……そうか、シグナムとなら納得だな」
 シグナムとの模擬戦から思いついたと言うのにはなんとなく悠翔も納得がいったみたい。
 私とシグナムが模擬戦を良くやっているって言うのは一応、話してあるからそれもあるんだろうけど
「後、以前に恭也さんと立ち合ったと言っていたが、その時には何か教わらなかったのか?」
 恭也さんと立ち合った時――――あの時は確かにライオットザンバーを遣っているんだけど……。
 あの時の私は全然、駄目だったような印象が。
 とりあえず、終わった後で恭也さんから簡単なアドバイスは貰ったかな?



 ――――御神流の二刀は変速的に遣ったりするが、フェイトの場合は手数を増やすための意味合いが強い。
 ――――フェイトのような戦い方での二刀は普段から維持出来るだけの速度を持っていると言う強みを生かすべきだ。
 ――――俺達の場合はフェイトのような術は無い。
 ――――だから、ああ言った取り回し方などを遣ったりする。
 ――――フェイトの場合はその速度が最大の武器だと考えれば、やはり連撃を重視すると言うのが良いだろうな。
 ――――とりあえず、御神流の二刀の扱い方とは違う方向性で考えた方が良いと言ったところだろうか。



 確か、こんな感じのアドバイスだったと思う。
 少しだけでしか無いんだけど……この意見は参考になったと思う。
 あれから日にちとしてはあまり経っていないからまだ、新しく考え直した部分は少ないんだけど……。
「えっと……恭也さんからは少しだけなんだけど、二刀の取り回しとかを教わったよ」
「……成る程な」
 私の言葉に頷く悠翔。
 恭也さんにアドバイスを貰ったと言うことで納得したのかな?
 少しだけ思案したところで悠翔はもう一度頷き、口を開く。
「とりあえず、俺からの質問や話はこれくらいだな。後は目立ったことはないだろうし」
「うん、そうだね」
 悠翔に神速のことを解説して貰ったし、今回の立ち合いについては質問することはもう無いと思う。
 悠翔が魔法を斬り払ったりしていたのは恭也さんと同じような要領だと思うからなんとなくイメージがつく。
 悠翔の剣技と恭也さんの剣技は違いも多いけど、根本は同じものなんだから。
 二刀の扱い方については悠翔みたいな方法は出来ないと思うから聞くことはあまりないし……。
 だから、今のところ剣術に関しては聞くことは別に無いかな?
 気になると言えば、別のことになるけど……。
「あ、そう言えば左腕の方は大丈夫? 無理なんてしてない?」
 私と立ち合ったことで悠翔は左腕を遣っていたけど……それが少し心配。
 昨日に一度診て貰ってるから調子は大丈夫と言っているけど、悠翔の左腕は治っているわけじゃない。
 悪化もしていないみたいだけど、決してそれが良い状態ってわけでも無い。
「ああ、大丈夫だ。今回の立ち合いは殆ど右腕で対処しているからな。神速以外は目立ったものも遣っていないしな」
「そう、良かった……」
 悠翔が無理をしたりしていないってことが解って少しだけほっとする。
 でも……あれ? 悠翔は殆ど右腕で対処してるって言ったよね?
 そう言えば私も悠翔相手にはあまり左腕を遣わせないようにしていたつもりだけど……。
 悠翔は結構、余裕だったってことなのかな?
 それに神速以外は目立ったものも遣っていないって……。
「もしかして、結構余裕だったりした?」
「いや、そうでも無い。どちらかと言えば、気を抜かなかったから問題無かったと言った方が良いと思う」
「そうなんだ……」
 悠翔は余裕を持って対処してるように見えたけど……。
 逆に気を抜かずにいたから問題が無かったみたいで。
 それだけ集中して相手をしてくれていたってことなんだと思う。
 ちょっとだけそれが嬉しく感じる。
 もし、手を抜いていたにも関わらずにあっさりと抑えられてしまったら私の方が自信を無くしちゃうかもしれない。
 尤も、真面目な悠翔がそう言うことをするような人じゃ無いって言うのは解っているから安心なんだけど――――。
















「悠翔はやっぱり強いね」
 立ち合いが終わって私は改めて感想をもらす。
「そうか? 俺としてはまだまだだと思うんだが」
 私は悠翔のことは強いと思ってるけど本人からみたらそうじゃないみたいで。
 悠翔はどちらかと言えば謙虚な人だと思う。
 悠翔は一度だって自分のことを大きく評価したことは無くて。
 凄い実力者なのにも関わらずに。
「悠翔はそう思ってるかもしれないけど……やっぱり凄いと思う。悠翔がやったことって難しいことなんだから」
 そう、悠翔がやったことって言うのは凄く難しいこと。
 生身一つで魔法を相手にする――――これだけでも普通では出来ないこと。
 悠翔は普通に対処してたし、私の動きにも反応していた。
 それも、魔法で速さを強化したのにも関わらずに。
 特に真・ソニックフォームに反応していたのは普通のレベルじゃ無い。
 それどころか、一連の動作だけで真・ソニックフォームを凌駕したのは尋常じゃなくて。
 特に神速が改めて凄いと言うことを感じる。
 恭也さんの時は奥義で意識を失ってしまったからその認識が無いままで負けちゃったけど……。
 今回の場合ははっきりと認識出来ている。
 多分、恭也さんと立ち合った時もこんな感じだったのかもしれない。
「あまり、俺にそんな認識は無いが……フェイトがそう言うのならそうなんだろうな」
「うん。だから悠翔はもう少しだけ自分を評価しても良いと思うよ?」
 悠翔はあまり自分のことを評価しないけどそんなことは決して無いと思う。
 完璧な人間なんていないし、私達くらいの年齢でここまで出来るのだからやっぱり凄い。
 逆に私の方が悠翔よりも駄目に感じてしまうくらい。
 でも、そう言ったことに過信したりしないって言うのは悠翔の良いところ。
 私自身もまだまだって思うから悠翔のそう言った謙虚なところは見習いたいと思う。
 そんなことを考えながら私は悠翔をじっと見つめる。
 悠翔も何かを考えているみたいだけど……。
 うん、考え込んでいる悠翔も格好良いかな――――。
















 フェイトがそこまで評価してくれていることに少しだけ驚きを感じる。
 俺としてはそこまででも無いのだが……。
 評価して貰えていることには素直に喜びたいと思う。
 とは言ってもこのまま、こう言ったことを考えたままでいるのは宜しく無い。
 立ち合いは終わったのだから次の話題に入るべきだ。
「フェイトの言葉は嬉しいが……とりあえず、このままここにいるわけにもいかないな」
「あ、そうだね。もう、そろそろ人が来たりするかもしれないし」
 俺がこのままいるわけにはいかないと促すとフェイトも意見に同意する。
 早朝の八束神社は人通りは少ないが、そろそろ時間的には朝の散歩などの人達が周辺をうろつき始める時間だ。
 流石に俺達がやっていたことを見られたりするわけにもいかない。
「じゃあ、戻るとしようか。俺はとりあえず高町家に戻るけど……フェイトはどうする?」
「う〜ん……私も一旦、家に戻るよ。後でもう一回来ても良い?」
 俺がフェイトにこれからどうするかを尋ねるとフェイトは一旦、家に戻ると言う返答をする。
 この時間ではフェイトも戻った方が良いだろうと言う判断だと思う。
「別に構わないと思う。とりあえず、後でもう一度会うとして……今日はどうする?」
 後で来る分には問題無いとは思う。
 俺も今日は予定とかは入っていないはずだからな。
「えっと……今日は私とデートでもしない? 出来ればふたりっきりで」
 フェイトからの今日の予定についての返答はデートの誘い。
「ん、デート?」
「うん、そうだよ。折角、つきあい始めたんだし……駄目、かな?」
 フェイトが上目遣いで俺の顔を覗き込んでくる。
 それもおねだりしている表情だ。
 そんなフェイトの頼みを断れるはずも無い。
「いや、駄目じゃ無い。折角だし……そうしようか」
「うんっ!」
 俺の回答が嬉しかったのかフェイトは嬉しそうな表情をして頷く。
(……可愛いな)
 その表情を見てつい、俺もそう思ってしまう。
 惚れた弱みがあるのかもしれないが、フェイトは可愛いと本当に思う。
 今まではこう言う考え方をしたりはしなかったのだが……改めて変わったのかもしれない気がする。
 フェイトに告白されたのが一つの転機になっているのか。
 両想いになれたことが原因なのか。
 それは俺には解らないが、悪くない――――。
 ――――少なくてもそう思う。



































 From FIN  2009/4/23



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