俺の左腕に負担をかけまいとしてくれている――――これはフェイトの優しい部分だと思う。
 それでいて俺を相手に手を抜かないようにしているのが有り難い。
 俺が考えている合間にフェイトがもう一度、同じ攻撃魔法を放つ。
 弾数が先ほどよりも増えているかのような感覚だ。
 いや……実際に弾数を増やしたんだろう。
 だが、このくらいであれば避けることに問題は無い。
 これだけでは俺に通じないと言うことはフェイトも解っているはずだ。
 唯、時間を稼ぐか、間合いを近付かせないようにすると言うことにしかならない。
 多分、フェイトはそれも計算済みだろう。
 フェイトがそんなに短絡的に攻めてくるとは思えない。
 と言うことは、次の手を打ってくるか――――?






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 悠翔が私の放ったフォトンランサーを避けていく。
 弾道は人の目では見ることも難しいはずなのに悠翔は簡単に対処していく。
 やっぱり、悠翔の力量は凄い。
 弾数を増やしただけじゃ簡単に対処されてしまう。
(でも、これだけで悠翔に通じるなんて思ってないから)
 悠翔に向けてフォトンランサーを放ちつつ、私は次の行動へと移っていく。
 私が次に取る行動は瞬間的な加速を遣った接近戦。
 ここはブリッツアクションで行く――――そう考えた私はすぐさまブリッツアクションを発動させる。
 当然、フォトンランサーによる弾幕を張ったままで。
 これなら悠翔にも接近戦でいけるはず――――。
 この時、私はこう思ったけど、悠翔はそう甘くは無かった。
 既に悠翔には私の次の行動が読まれていたのかもしれない。
 悠翔はフォトンランサーの回避運動を止めて、斬り落としていくと言う行動を取り始めた。
 唯、斬り落とすだけならこの隙に私が間合いを詰めて悠翔に肉薄出来る。
 実際にこのままでいけばそうなるはずだった。
 だけど、悠翔は私が斬り込んでくることを予測していたのか既に二刀目の小太刀に手をかけていた。
(いけない――――)
 そう思った瞬間、悠翔が小太刀を抜刀する。
 悠翔は完全に私の虚を突いてきた。
 咄嗟に身を捩って二刀目の小太刀を避けたけれど……バリアジャケットのリボンが斬り落とされる。
 もし、回避行動をとらなかったら今のはバリアジャケットのリボンだけじゃ済まなかったと思う。
 だけど……こんなにあっさりとバリアジャケットを斬り裂くなんて――――。
 悠翔の実力が凄いのは当然だけど、悠翔が遣っている小太刀も凄いのかもしれない。
 やっぱり、シグナムと戦った時の小太刀とは全然違う――――。
 私は改めてそれを実感した。
















 飛鳳がフェイトを掠める。
 今の二刀目はフェイトを確実に捉えられるつもりで抜き放ったのだが、そうは甘くないらしい。
 シグナムと比べれてみると速さが段違いだ。
 今のタイミングから避けられるとは。
 恐らく、今のタイミングでフェイトを確実に捉えるなら虎切で無ければ駄目だっただろう。
 俺の一撃はフェイトのリボンを斬り落としただけだった。
 しかし……思いのほかあっさりと斬り落とせたな――――。
 今のは基礎乃参法を遣ってはいないのだが。
 いや、これは今までの得物の差か。
 やはり、無銘の小太刀と飛鳳では斬れ味と言うものが違う。
 それに大業物である飛鳳に剣気から発する霊力を合わせているのだから。
 そう言った意味でも今の現象は当然と言っても良かったのかもしれない。
 しかし、フェイトの動きは予想以上に速い。
 瞬間的に加速した感じだと見たが……今のも魔法なのかもしれない。
 単純な速度だと俺よりも速いだろう。
 だが、決して見えない速度では無い。
 今くらいであれば夏織さんや美沙斗さんの動きよりも見切りやすいと言うべきか。
 だが、フェイトはまだ早く動けるらしい。
 見たわけじゃないからどの程度かまでは解らないが――――。
 油断をするのは命取りだろう。
 フェイトの実力は一流だと言っても良い。
 だからこそ、僅かでも油断と言う気持ちを持てば負けてしまう。
 手加減して戦うなど出来る相手では無いと言える。
 ならば、此方も奥義を遣うか――――どうかだが。
 最早、悩む必要なんて全く無いだろう。
 遣わなければ勝てはしない――――それが答えだ。
 だったら、躊躇う必要は無い――――。
 奥義を遣わせて貰うまでだ――――。
















 今の速度でも悠翔に見切られた――――。
 悠翔の実力を考えれば今のは当然だと言っても良かったのかもしれない。
 だけど、魔法を遣っての加速でも身体の反応が追いつくなんて――――。
 悠翔の身体能力は強化魔法が常にかかっている状態のようなものに近い気がする。
 それだけ、悠翔の身体能力は高いと思う。
 単純な身体能力だと強化魔法をかけた魔導師よりもずっと高い。
 少なくとも私はそう感じる。
(今のままの速度で見切られるのなら――――)
 私に残された手段も限られてくる。
 そう考えた私は真・ソニックフォームを開放する。
 もう、これしか悠翔の速度を凌駕する形態は無いと思う。
 真・ソニックフォームとライオットザンバー――――。
 正直、普通のザンバーフォームで対抗出来ると考えられない。
 小太刀二刀に対抗するならやっぱり、私の方も二刀で行くしかない。
 恭也さんと戦った時もこのライオットザンバー以外は当たりもしなかった。
 二刀流に対しては二刀流で――――これが御神流に対抗するための数少ない手段。
 だから、悠翔に対抗するにはこれしか無い。
 私の姿が変わったことに少しだけ驚いた表情を見せる悠翔。
「それが、フェイトの全力の姿か」
「そうだよ」
「成る程な。更に速度を引き上げるための姿と言ったところか」
「……うん」
 更に速度を引き上げるための姿――――確かに悠翔の言うとおり。
 正直、悠翔の反応を凌駕するならこれしか無いと思ったから。
 だけど、悠翔にはあの奥義がある――――。
 もし、それを遣われたら真・ソニックフォームでも難しいかもしれない。
 ううん、もしなんかじゃない。
 魔法では絶対に辿りつけないあの奥義は真・ソニックフォームでもやっぱり対処は難しい。
 単純な速度で言えば真・ソニックフォームが上回っていると言えるけど――――。
 悠翔達の遣うその術はこう言った接近戦においては私達の遣う魔法を凌駕する。
 ううん、接近戦だけじゃない。
 上手く説明は出来ないけど……悠翔達の奥義である神速は速度と言うものの概念では測れない。
 普通、速度が速いだけなら映像のスローモーションで見ればその動作は当然遅くなる。
 私の真・ソニックフォームの場合でもそれは当然、同じなわけで。
 だけど、悠翔達の遣う神速と言うものはそれに当てはまらない。
 神速は映像で見ても全くその速度が変わらない。
 スローモーションで映像を再生しても普通に映像を再生したものと変わらなかった。
 つまり、スローモーションで再生しても全く見えなかった。
 原理は解らないけれど、神速は魔法では不可能な方法で動いているとはっきりと言えた。
 だけど、それを理由に逃げるなんて考えられない。
 悠翔とこうして刃を交えさせて貰っているんだから、ここで退くわけにいかない。
 単純な速度においてなら私の方が勝っているんだからここは遣るしか無い――――。
 私の意思はそう決した――――。



































 From FIN  2009/4/16



 前へ  次へ  戻る