「とりあえず、立ち合いと言うことだが……勝敗は追い詰めた方で良いか?」
「うん。それで良いと思うよ」
 考えていたことを振り切った俺はフェイトに今回の立ち合いの勝敗条件を確認する。
 フェイトも俺が提示した条件で構わないらしい。
 戦闘と言うわけでは無く、模擬戦と言う形だからな……条件としてはあまり、難しくない方が良いだろう。
 それに、俺としてもフェイトを相手に殺すつもりで戦う真似はしたくない。
 だからこそ、こう言った条件の方がやりやすいと言うのは事実だった。
 しかし……フェイトの実力が優れていると言うことは既に解っている。
 あまり、手を抜くことも出来ないだろう。
 俺はあくまで剣士としてフェイトに対峙する。
 しかし、剣士として戦うのであれば殺傷が前提になってしまう。
 立ち合うにしてもフェイトを傷付けたくないと言う気持ちもある。
 だが、 フェイトとは恋人同士になったと言っても、こういった立ち合いであれば話は別だ。
 この立ち合いのルールの範囲で俺も全力を出させて貰う――――。






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 互いに準備が終わり、対峙する。
 フェイトはデバイスを構え、バリアジャケットを身に纏った状態。
 俺は飛鳳を納刀し、暗器を隠し持った状態。
 今回、俺は飛鳳の差し方を裏十字の状態にしている。
 二刀差しは今回のように飛んだり跳ねたりする可能性のある戦いにはあまり向いていない。
 かと言って背負いのように暗器を前提とした戦い方をするつもりも無かった。
 バランスが良いのは十字差しではあるが、俺の場合は表の御神流では無く、裏である御神不破流だ。
 そう言った意味でも十字差しよりも裏十字の方が得意な差し方であると言えた。
 俺の場合は、抜刀を多用する戦い方と言うよりは奇襲的な意味合いで抜刀を使用する。
 逆を言えば、何時でも抜刀出来るような差し方の方が良いと言える。
 だからこそ、二刀差しや裏十字と言った抜刀を前提とした差し方が望ましい。
 それにフェイトの戦闘スタイルを見るのは初めてだ。
 解っていることはフェイトが高速戦闘を中心としていると言うことだ。
 しかし、フェイトから見れば俺が何度か戦っている姿を見ている。
 俺の手の内は殆ど見ていると言っても良い。
 そう言った意味ではフェイトの方が俺に比べてもかなり有利だと言える。
 だが、御神不破の術はフェイト達魔導師には見切られない――――。
 決して完全に不利と言うわけじゃ無いだろう。
 俺が考えている間にフェイトは周囲に結界を展開させる。
 それを見届けた俺は頃合いと踏んだ。
「それじゃ、始めようか」
「うんっ」
 フェイトに始めると言うことを確認し、俺はゆっくりと構えを取る。
 フェイトの方も俺が構えを取ったことを見て、構えを取る。
「小太刀二刀御神不破流、御神の剣士・不破悠翔。参る――――!」
「時空管理局執務官、フェイト=T=ハラオウン……いきます!」
 そして、俺とフェイトがそれぞれに名乗りを上げ、立ち合いが開始された。
















 名乗りを上げて私と悠翔の立ち合いが開始される。
 悠翔は私の様子を窺っているのか構えを取ったまま、動く感じがしない。
 だったら、私の方が動くしか無い。
(悠翔は接近戦が得意――――だけど)
 悠翔が得意とする戦い方は既に解っているけど――――。
 今回は悠翔と立ち合える初めての機会だから、なるべく悠翔の剣は体感したい。
 そう考えた私はどういった方向性で戦うかを決めた。
「バルディッシュ!」
《Haken Form》
 バルディッシュが変形し、大鎌の形をした光の刃が出現する。
 白兵戦に特化したバルディッシュの形態の一つ。
 私が多用するバルディッシュの形態でもある。
 悠翔は接近戦が基本――――。
 だったら、私も接近戦を基本にして行こうと思う。
 バルディッシュを変形させたと同時に私は悠翔に向かって斬り込む。
 私の動きに反応した悠翔が瞬時に小太刀を抜刀した。
 ガキン―――と金属のぶつかりあう鈍い音がする。
 悠翔は抜刀した小太刀でバルディッシュの柄の部分を受け止めた。
(恭也さんは刃を受け止めていたけど――――)
 悠翔の受け止め方に私は少しだけ驚く。
 悠翔はバルディッシュの刃に臆することなく間合いを詰めてきて柄の部分を小太刀で受け止めた。
 恭也さんの時はバルディッシュのの刃を普通に受け止めていたけど悠翔の場合はそうじゃ無かった。
 悠翔と恭也さんが違うのは解っているけど――――。
 どうして、悠翔が柄の部分で止めたのかが解らなかった。
 もしかして――――悠翔は恭也さんと違って、気……とか霊力だったかな――――が遣えない?
















 フェイトがデバイスの形態を変更し、斬りかかってくる。
 形の方は所謂、鎌と言うべきだろうか。
 しかし、その鎌は普通の鎌では無く、刃の部分が光を放っている。
 要するに刃の部分が魔法なのだろう。
 そう判断した俺は、フェイトが斬り込んでくるタイミングを見計らって刃の部分を潜り抜ける。
 そして、そのままフェイトのデバイスの本体の方を飛鳳で受け止めた。
 恐らく恭也さんであればそのまま刃の方を受け止めただろう。
 恭也さんは気を遣うことによって刃を受け止めると言ったことが出来ると聞いている。
 しかし、生憎だが俺にはそこまでの方法が出来るとは限らなかった。
 確かに俺も剣気を持ち合わせているし、恭也さんには及ばないが自在に操ることも出来る。
 だが、戦闘中にそのような手を打つかどうかは考えてしまう。
 とは言っても今回の場合は模擬戦だ。
 それにフェイトも俺と直接戦うと言うのは初めてになる。
 だったら、俺も色々と試してみても良いのかもしれない。
(遣るか――――)
 そう決めた俺は飛鳳にゆっくりと剣気を流し込む。
(恭也さんが行ったと言う方法が剣気から発する霊力を遣ったということなら――――)
 俺は飛鳳の刃に集中して流し込むように意識を集中する。
 僅かに意識を集中した後、飛鳳の刃がうっすらと白い光に包まれたかのように見える。
(こういうことなんだろう、な)
 飛鳳が俺の意思に応えるかのように僅かな光を放つ。
 剣気から発する霊力を飛鳳に纏わせる――――。
 これが恭也さんが八景でやっていたことなんだろう。
 一度、なのはさんとの模擬戦でも遣った手段だが、あれは魔力弾を斬り捨てただけだ。
 それに、ここまで意識を集中してやっていたわけじゃない。
 なのはさんの時は殆ど、感覚に任せてやったと言った方が良いだろう。
 話からすればこの状態であれば魔力弾以外でも斬り捨てたり、魔力の刃を受け止めたりと言うことが出来るそうだが――――。
(遣ってみるか――――)
 考えても仕方が無い。
 効果のほどは自分で実際に試してからで無ければ解りはしない。
 まずは、それを試してみてからだ――――。
 そう考えた俺は飛鳳に力を込めて、フェイトを弾き飛ばす。
「きゃっ!?」
 俺の力が予想外の強さだったのかフェイトが短く悲鳴を上げる。
 フェイトが魔導師だとしてもその腕力は中学生の少女でしか無い。
 俺の場合は少なくとも60Kg以上はある――――。
 フェイトを弾き飛ばした俺はそのままの状態からデバイスの刃に向かって飛鳳で斬り付けた――――。



































 From FIN  2009/4/11



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