「……フェイト?」
「あぅ……ごめんなさい。私の言い方が悪かったみたい。本当は私と模擬戦しよ……って言いたかったの」
 怪訝そうに尋ねる悠翔の様子を見て私も漸く、落ち着いた。
 なんか私が言っていることは支離滅裂みたいな感じになってしまってて。
 悠翔が全く解らないと言った表情をしていたのは当然だったと思う。
 ここに来て漸く、私も本題を悠翔に伝える。
 本当は模擬戦って言う意味で通じなくても良かったんだけど……。
 そんなことを言ったらふしだら女の子になってしまうし。
 私も心の準備が出来ていない。
 でも……悠翔とだったら別にどんなふうにされても良いかな?
 そんなことを考えてしまう私がいる。
 模擬戦をお願いするのにこんなことまで考えてしまうなんて……。
 やっぱり、今の私は悠翔のことばかりしか見えていないのかな――――?






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 フェイトが言ってきたことに一瞬、面喰ってしまったが……とりあえず意味を理解する。
 とりあえず、俺と立ち合いたいって言いたかったらしい。
 流石にいきなり「しよ?」とか言われたらどう反応したら良いものか困ってしまう。
 普通に誘っているようにしか聞こえないからだ。
 実際に誘っているのには誘っているのだがその意味が違う。
 俺がそう言う意味か? と言うニュアンスで聞いたところフェイトは「違わないかもしれないけど」と言っていた。
 フェイトは俺をそう言った意味でも誘いたい気持ちがあると言うことらしい。
 素直にその気持ちは嬉しい。
 俺個人としても別に構わないけど……流石にまだ、早過ぎると思う。
 いや、フェイトに魅力が全く無いわけじゃないけどつきあい始めて一日も経っていないのにと言うのはどうかと思う。
 せめて、一週間くらいだろうか?
 とりあえず、普通の感覚ならそのくらいが妥当なんじゃないかとは思う。
 でも、俺が何時までここにいるかは解らないから早いわけでは無いのか。
 寧ろ、フェイトは俺がやきもきさせていたような感じだったから止まらなかったんだろう。
 そう言ったことも考えれば、別に可笑しくも無いか。
 まぁ、今回のフェイトのお願いは俺と立ち合うことだから別に問題は無い。
「別に俺は構わないぞ? まぁ、いきなり立ち合うわけにもいかないから身体を慣らしてからになるけどな」
「本当に良いの?」
「ああ。……フェイトの頼みだし、俺には断る理由も無い」
「ありがとう、悠翔」
 俺が許可を出したことに凄く嬉しそうな様子のフェイト。
 本音を言わせて貰えば、フェイトに剣を向けるのは気が引ける。
 しかし、断ればフェイトがしょぼんとした様子になるのは間違いない。
 それに、俺は既になのはさんと立ち合いをしているからフェイトの申し出に応じないのは不公平だろう。
 後、フェイトはシグナムのようにバトルマニアっぽい感じだと言う話を聞いた。
 見かけによらず、フェイトは身体を動かしたりするのが好きらしい。
 まぁ、実際に俺も立ち合うのは嫌いじゃないしな。
 ある意味、似た者同士なのかもしれないな、俺とフェイトは――――。
















 悠翔が小太刀を腰に差し直す。
 今日も悠翔が持っている小太刀は紅黒い色をしたもの。
 悠翔が自分の愛刀だって言っていた小太刀。
 今まで遣っていた小太刀に比べてどれだけ違うのかはあまり実感は出来なかった。
 恭也さんが言っていた話からすると悠翔の今の小太刀は凄いものみたいなんだけど――――?
 エクスと戦った時はあまりそう言った感じがしなかったと思う。
 シグナムと戦った時とは違って銃が基本だったからあまり、小太刀を遣っていると印象が無かった。
 それに悠翔はエクスと戦った時はあまり、斬ると言ったようなことをしていなかったと思う。
「さて、と俺の準備の方は良いぞ」
「あ、うん。ちょっと待っててね」
 私が悠翔をぼ〜っと見ていると悠翔の準備が終わる。
 流石に悠翔の準備は早いと思う。
 と言うよりも男の子準備が早いって言った方が良いのかな?
「バルディッシュ!」
《Yes Sir》
 私もバルディッシュに指示を出してバリアジャケットを装着する。
 一応、私の準備も早いと言えば早いのかな。
 バリアジャケットを身につけるのって一瞬だし。
「うん、私の方もこれで大丈夫だよ」
「……解った」
 私の準備が完了したのを確認した悠翔がある程度の距離を取り直す。
「流石に俺の間合いから始めると言うのは可笑しいからな。ある程度の間合いで始めさせて貰う」
「うん、解ったよ」
 悠翔は接近戦だともの凄く強い。
 悠翔の剣術は全部接近戦を前提としているから当然と言えば当然なんだろうけど。
 私も接近戦は得意なんだけど、悠翔ほど特化しているわけじゃない。
 あくまで魔導師だって言うのもあるんだけど……比較的色々な距離で対応出来る。
 だから、今回の距離だと私の方が少しだけ有利、かな?
















 とりあえず、フェイトの準備も確認して距離を取っておく。
 しかし、フェイトがバリアジャケットを身につける時っていったいどうなっているのだろうと思う。
 殆ど、一瞬で終わるのは当然だろうが、原理がいま一つ解らない。
 髪型も含めて殆ど全部変わることを考えると――――。
 一瞬の工程のうちでやっていることって言うのはなんとなくイメージがつく。
 多分、口にしてはいけないことだろうから――――。
 とりあえず、一瞬だけ見えたような気がするフェイトの姿のことは忘れよう。
「悠翔?」 
「……なんでもない」
 俺が何の反応を見せないことに疑問を持ったフェイトが首を傾げる。
 今、考えたのは雑念みたいなものだ。
 こんなままで立ち合うわけにもいかない。
 戦いの中で雑念を持つと言うことは命の危険に直結する。
 何が相手であれ、僅かな雑念や油断と言うものが命取りになると言うことは良く理解している。
 だからこそ、今、考えていたことは余計なことでしかない。
 俺は考えていたことを振り切る。
「とりあえず、立ち合いと言うことだが……勝敗は追い詰めた方で良いか?」
「うん。それで良いと思うよ」
 考えていたことを振り切った俺はフェイトに今回の立ち合いの勝敗条件を確認する。
 フェイトも俺が提示した条件で構わないらしい。
 戦闘と言うわけでは無く、模擬戦と言う形だからな……条件としてはあまり、難しくない方が良いだろう。
 それに、俺としてもフェイトを相手に殺すつもりで戦う真似はしたくない。
 だからこそ、こう言った条件の方がやりやすいと言うのは事実だった。
 しかし……フェイトの実力が優れていると言うことは既に解っている。
 あまり、手を抜くことも出来ないだろう。
 俺はあくまで剣士としてフェイトに対峙する。
 しかし、剣士として戦うのであれば殺傷が前提になってしまう。
 立ち合うにしてもフェイトを傷付けたくないと言う気持ちもある。
 だが、 フェイトとは恋人同士になったと言っても、こういった立ち合いであれば話は別だ。
 この立ち合いのルールの範囲で俺も全力を出させて貰う――――。



































 From FIN  2009/4/9



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