「悠翔?」
「い、いや……なんでもない」
俺の態度に疑問を感じたのか訝しげに見つめるフェイト。
「えへへ……♪」
だけど、俺の様子に満足したのかフェイトは嬉しそうな表情をしつつ寄り添ってくる。
逆にフェイトは俺の様子を見て少し楽しんでいるらしい。
少しむっとした感じがあるが……フェイトの可愛らしい様子を見ているとそれも気にならなくなる。
寧ろ、此方からもフェイトに何かをしたいと言う気分になってくる。
流石にこういったところでやろうとは決して思わないが。
今はフェイトの可愛らしい様子を見ているだけでも充分だ。
フェイトがどう思っているかは解らないが……満更でもないらしい。
俺の様子を見つめては嬉しそうにしている。
多分、昨日のことを改めて実感しているんだろう。
でも、それは俺の方も同じだ。
フェイトもこうやって応じてくれるし、俺もこうしていたい。
今まではこんな風には全く考えなかったな――――。
そう言えば、恋は盲目と言うが――――こういうことを言うんだろうか。
魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
悠翔からこうやってくれるなんて本当に嬉しい。
今までは私からのアクションだったけど……。
悠翔からもこうやってくれるのがやっぱり、私達の関係が変わったんだなぁっと実感させてくれる。
唯、手を握って貰っただけなんだけど……それでもそう感じてしまう。
今まではやっぱり、つきあっているわけじゃ無いからこう言ったことは出来なかったし。
だけど、今はこう言ったことも堂々とすることが出来て……。
なんだか、ほわ〜っとした気持ちになってしまう。
頬がなんか緩んでいるような感じ……。
駄目駄目、そんなにゆるんじゃ――――悠翔も変に思っちゃうから。
だけど、頬がゆるんでしまうのは収まってくれなくて。
やっぱり、悠翔と一緒だとなんとなく幸せな気分になってしまう。
今までは少しだけ踏み出せなかったからその気持ちは尚更強くて。
「えへへ……♪」
だから、つい笑みが零れてしまう。
好きな人とこうしていられるのがこんなに嬉しいだなんて思わなかった。
なのはも何時もこんな思いをしているのかな?
だとしたら凄く羨ましいかもしれない。
なのはとユーノは時間がある時は何時だって一緒にいるから。
悠翔は今はまだ、ここにいてくれるけど……何時かはいなくなってしまうかもしれない。
悠翔が香港に帰ってしまったら会うことはきっと難しくなってしまう。
そう思ったら悠翔の傍に出来るだけいたいと自然に思ってしまって。
どうしても、積極的になってしまう。
なんて言えば解らないけど……悠翔しか見えないって感じなのかな?
悠翔を手を繋いだまま連れられてきた場所は……八束神社。
私はあまり来なかった場所。
「悠翔は何時もここで訓練しているの?」
「いや、普段は道場でやってるな。だから、こう言った所はあまり来ない。因みにこの場所は恭也さんから聞いた。恭也さん達が訓練している場所だって」
「恭也さん達が?」
「ああ。それに、この時間なら人も来ないから存分に訓練出来る」
今回は道場じゃなくてこの場で訓練をするみたい。
しかも朝早くだから人も来ない。
まぁ……朝早すぎだって言っても良い時間帯だから人が来ないんだろうけど。
「悠翔って何時もこのくらいの時間に訓練してるんだよね?」
「……ああ。因みになのはさんもこの時間帯に訓練しているぞ」
「むぅ……」
なのはもこの時間に訓練しているって言うのは知っていたから良いけど……。
悠翔が知っているのはどうしてだろう。
もしかして……悠翔はなのはと訓練した事も?
そうだったら、なのはが羨ましい。
私は悠翔と訓練したことなんてないのに。
「もしかして、悠翔はなのはと訓練したことがあるの?」
「……一応な。訓練と言うよりは模擬戦だったけど」
「むぅ……なのはとばかりずるいよ」
やっぱり、なのはとは訓練したことがあって。
しかも、模擬戦をやっているだなんて……なのはが凄く羨ましい。
私はまだ、悠翔と模擬戦なんてしたこと無いし……。
でも、悠翔と模擬戦かぁ……。
訓練もやっぱり、一緒にやりたいと思うけど、模擬戦もやってみたいと思う。
剣士との立ち合いは恭也さんとやったことがあるけれど、同じ剣術を遣える悠翔とは立ち合ったことはなくて。
シグナムやファリンさん、それにエクスと立ち合っているのを見たから悠翔がどのくらい強いかも良く解ってるつもり。
悠翔の実力を知っている身としてはどうしても立ち合いたいって思ってしまう。
恭也さんとは全く違う、剣士である悠翔。
やっぱり、どうしても私自身が体感してみたいって言うのもある。
う〜ん……駄目もとで悠翔に聞いてみようかな――――?
「えっと……ね。悠翔にお願いがあるんだけど」
「どうしたんだ?」
私は少し考えてから駄目もとで悠翔にお願いすることを決めた。
とりあえず、行動してみないと何も変わらないし、何もおきない。
悠翔とこう言った関係になったのに初めてお願いすることがこんなことなのは少しだけ気が引けるけど……。
でも、やっぱりこれは止められない。
「私と……しよ?」
「……え?」
あれ? 悠翔は私が何を言ったのか解らないって言ったように感じの表情をしている。
私、何か間違ったことでも言ったかな?
「えっと、フェイト。今のはどういう意味なんだ」
「私と……しよ。って言ったこと?」
「ああ。そのことだ」
悠翔は私が今、言ったことについて質問していて。
えっと私は普通に悠翔に言ったつもりだったんだけど……。
あれ? 私……今、しよとしか言ってない?
「あ、あぅ……」
「もしかして、フェイトが言いたいのってそう言う意味なのか?」
「ち、違うよ!? ……違わないかもしれないけど」
悠翔が言ってきたことに慌てて否定する私。
ああ……もう、何が言いたいの解らなくなってる。
悠翔が言っている意味は多分、口では言いにくいこと。
だけど、私はそれを否定する理由が無い。
それでも、流石にそれは早過ぎると思う。
まだ、つきあい始めて一日も経って無いのに。
「……フェイト?」
「あぅ……ごめんなさい。私の言い方が悪かったみたい。本当は私と模擬戦しよ……って言いたかったの」
怪訝そうに尋ねる悠翔の様子を見て私も漸く、落ち着いた。
なんか私が言っていることは支離滅裂みたいな感じになってしまってて。
悠翔が全く解らないと言った表情をしていたのは当然だったと思う。
ここに来て漸く、私も本題を悠翔に伝える。
本当は模擬戦って言う意味で通じなくても良かったんだけど……。
そんなことを言ったらふしだら女の子になってしまうし。
私も心の準備が出来ていない。
でも……悠翔とだったら別にどんなふうにされても良いかな?
そんなことを考えてしまう私がいる。
模擬戦をお願いするのにこんなことまで考えてしまうなんて……。
やっぱり、今の私は悠翔のことばかりしか見えていないのかな――――?
From FIN 2009/4/7
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