これが、惚れた弱みと言う奴か。
 自分の今の状況にとりあえず苦笑する。
 だが、それ以上にフェイトとこう言ったことが出来たと言うことが嬉しかった。
 普通と言うものがどういうものかは解らない。
 でも、漸く一歩進んだ関係になったと言うのに間違いは無かった。
 フェイトが俺の特別――――。
 それは出会ったあの時から始まっていたこと。
 海鳴でフェイトを助けたあの時から全てが始まっていたんだと思う。
 何から何までフェイトは特別な女の子だった。
 父さんのことや、自分のことを話したのもそうだけど……。
 何より、初めて出会ったのに自分から秘密をばらしたのが出会った時は信じられなかった。
 だけど、今を思えばあの時からフェイトはずっと特別だったんだろうと思える。
 俺の傍に自分から近付いて来てくれた女の子。
 そして……俺が護りたいと思った初めての女の子。
 そんな特別な女の子と気持ちをかよい合わせられたと言うこと――――それが一番、嬉しかった。
 俺はそう言った喜びを感じながら、ゆっくりとした足取りで高町家への帰路についた。
 勿論、フェイトのことを考えながら――――。






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 翌日、早朝――――。
 何時もどおりに起きだした俺は道具一式を取り出して、訓練の準備をする。
 昨日の感覚がまだ残っている。
 フェイトに口付けられた箇所がまだ、熱いような気がする。
(そう言えば昨日はフェイトと――――)
 フェイトに口付けられたことを思いだす。
(告白されたんだったな――――それに、俺からも)
 正式にフェイトに告白して、付き合うことになった。
 今の段階ではあまり、実感は湧かない。
 何時もどおりの朝だからだろうか。
(訓練が終わったらフェイトに連絡してみるか――――)
 とりあえず、今日の方針を決める。
 訓練が終わったらフェイトに連絡をする――――。
 せっかく、付き合うことになったのだからデートに誘いたい。
 今まで待たせてしまったと言うのもある。
 俺ですらこう思っているのだからフェイトの方はもっとそうだと思う。
 それに、俺もフェイトには会いたかった。
 俺も何時まで海鳴にいられるか解らない身だ。
 それまで、フェイトとはなるべく一緒にいてやりたい。
 それに――――俺だってフェイトの傍にいたい。
 だから、そうしようと思う――――。
 飛鳳を仕舞いながら俺はそう考える。
 暗器も全て準備完了しているのを確認した。
 とりあえず、準備を終えた俺は高町家を後にする。
(訓練をする以上はフェイトのことは後で考える――――)
 と思った矢先、高町家の外に人影が見える。
「誰だ?」
 不審に思い、俺はその人影に声をかける。
 その人影の正体は――――。
「えへへ……来ちゃった♪」
 フェイトだった――――。
















「えへへ……来ちゃった♪」
 悠翔が朝に訓練をしていることを聞いた私は高町家の前で悠翔を待ち伏せしてみた。
 悠翔も私が来ることは予想していなかったみたいで驚いた顔をしている。
「駄目だったかな?」
「いや、そんなことは無い。だが……早く起きるのは大変だっただろ?」
 確かに朝早い時間だけど……。
 悠翔に会いたいって言う気持ちの方が強かったから。
「ううん。悠翔に早く会いたいって思ってたらすぐに目が覚めちゃって……」
「……フェイト」
「だから、大変じゃ無かったよ」
 うん、悠翔に会えることを考えたら別に早く起きることくらいは大変じゃない。
 寧ろ、会えない方が辛いから……。
「……そうか。無理をしてるわけじゃないなら良い。そうだ、フェイトも来るか?」
「良いの?」
「ああ。このままフェイトを待たせておくって言うのも悪いからな。俺の訓練なんかで良ければ見ていくか?」
「うんっ!」
 悠翔が私を訓練に誘ってくれる。
 もし、後にしてくれって言われたら一旦、帰ってからにしようかと思ってたけど……。
 誘ってくれるのなら私が断る必要も無い。
 寧ろ、悠翔に誘って貰えて嬉しいくらいで。
 私も悠翔の訓練は気になってたし……それに、悠翔と訓練をしてみたいと思ってたから。
 悠翔が訓練に参加することを許可してくれるかまでは解らないけど……。
 少なくとも悠翔の訓練をその場で見れるのが嬉しい。
 ううん、悠翔が今まで見せてくれなかったことを見せてくれるのが嬉しい。
 やっぱり、悠翔も今までとは何処か違う感じがして。
 今までだったら悠翔もこんなことは言いださなかっただろうし。
 私も悠翔にこんなことを言わなかったと思う。
 ううん、言えなかったと思う。
 だけど、今はこうやって悠翔に積極的に言えるし、悠翔も言ってくれる。
 まだ、こういったことは初めてだから良く解らないけど……。
 改めて悠翔と関係が進んだことを実感する。
 うん、やっぱり嘘じゃ無い――――。
















 今回は流石に吃驚した。
 まさか、フェイトがこんな朝早くから待っているとは。
 俺としては訓練が終わってからくらいでちょうど良い時間になると思っていたが……。
 フェイトから自分で来てくれたことが嬉しかった――――。
 でも、フェイトから行動させてばかりだな……。
 俺からも何かやってみるか?
「フェイト、手を繋いで良いか?」
「え……うん。良いよ」
 俺からの提案に少しだけ吃驚したような様子のフェイトだったが俺の手をそっと握ってくる。
 フェイトの手は俺よりも少し小さい。
 だけど、その感触がフェイトを女の子だと実感させてくれる。
「えへへ……悠翔からこうしてくれるのってなんか良いね」
「そうか?」
「うん。やっぱり、悠翔からして貰うのって嬉しいよ」
 そう言ってはにかむように微笑むフェイト。
 その表情の可愛らしさに一瞬だけ見惚れてしまう。
「悠翔?」
「い、いや……なんでもない」
 俺の態度に疑問を感じたのか訝しげに見つめるフェイト。
「えへへ……♪」
 だけど、俺の様子に満足したのかフェイトは嬉しそうな表情をしつつ寄り添ってくる。
 逆にフェイトは俺の様子を見て少し楽しんでいるらしい。
 少しむっとした感じがあるが……フェイトの可愛らしい様子を見ているとそれも気にならなくなる。
 寧ろ、此方からもフェイトに何かをしたいと言う気分になってくる。
 流石にこういったところでやろうとは決して思わないが。
 今はフェイトの可愛らしい様子を見ているだけでも充分だ。
 フェイトがどう思っているかは解らないが……満更でもないらしい。
 俺の様子を見つめては嬉しそうにしている。
 多分、昨日のことを改めて実感しているんだろう。
 でも、それは俺の方も同じだ。
 フェイトもこうやって応じてくれるし、俺もこうしていたい。
 今まではこんな風には全く考えなかったな――――。
 そう言えば、恋は盲目と言うが――――こういうことを言うんだろうか。



































 From FIN  2009/4/5



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