「えっと……私もそろそろ時間だと思うから」
「あ、ああ……」
流石にフェイトもこのまま居続けるわけにはいかない。
家の方に戻ると言うのは妥当な選択だろうと思う。
「じゃあ、俺が近くまで送る」
「良いの?」
「……なのはさん達はああだしな。それに、万が一があったら困る」
「そう……だね。じゃあ、お願いするね?」
「……任せてくれ」
とりあずはフェイトを送り届けると言う方向で話が纏まる。
近所とはいえ、今は状況が状況だ。
俺が狙われていると言うのはあると思うが……フェイトが巻き込まれないと言う可能性も無いとは言いきれない。
そう言った意味でもフェイトを迂闊に1人で出歩かせるわけにはいかなかった。
俺は念のため、飛鳳を持っていることを再確認する。
相手が動くまでは状況が動くことは無いとは言ったが……。
裏を返せば、此方は常に備えておかなくてはならないと言うことに繋がる。
飛鳳と暗器を持っていることは確認出来た。
後はフェイトを無事に送り届けるだけだ。
特に何も起きなければ良いが――――。
魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
高町家から外に出てみると外はもう、夕方になっていた。
陽がゆっくりと沈み始めている。
もう暫く、高町家にいたとしたら完全に陽が沈みきってしまっていただろう。
流石にこんな時間帯に女の子を1人で歩かせるわけにもいかない。
今の時間帯でも油断が出来ないくらいなのだから。
「ごめんね、悠翔。送って貰うかたちになっちゃって」
「いや、気にしなくて良い。こんな時間に女の子1人でって言うわけにもいかないしな」
「えへへ……」
フェイトが嬉しそうな表情をしながら俺の腕に自分の腕を絡めてくる。
少しだけきゅっと俺の腕を抱きしめるように。
「駄目、かな?」
「いや、構わない」
フェイトが上目づかいで俺の顔を覗き込む。
こう言った時の女の子の表情と言うのは反則だ。
正直な話、俺にはそう言ったことを断るような真似は出来ない。
やっぱり、フェイトとはそう言ったことはしたいと思うしな。
とりあえず、腕に何か柔らかい感触もあるけど、そこは気にしないようにする。
「〜〜〜♪」
「嬉しそうだな、フェイト」
「うん。皆の前ではこう言ったことは恥ずかしくて出来なかったけど……こうやってふたりっきりだったら出来るから」
「そうだな。フェイトの言うとおり、皆の前だと出来ないな」
「だから、せめて2人の時はこうやりたくって。やっぱり、好きな男の子とは触れ合っていたいよ」
「好きな男の子……?」
「あ……」
好きな男の子という言葉に反応した俺にフェイトが吃驚したような表情をする。
今のは思わず、口から洩れてしまった言葉だったらしい。
フェイトは頬紅く染めて俯いてしまう。
「俺のこと、なんだよな?」
今のが本当に俺に向けられた言葉なのかフェイトに確かめるように尋ねる。
それに対するフェイトの返事は――――。
「……うん」
――――肯定の返事だった。
「好きな男の子……?」
「あ……」
思わず言ってしまった。
悠翔のことが好きだって出会ってすぐのころからそうだったけど……。
こんなかたちで悠翔に好きだって言ってしまうなんて。
悠翔と触れ合いたい、一緒にこうしていたいって思っていたら我慢が出来なくなってしまって。
そうしたら、つい本音が漏れてしまった。
「俺のこと、なんだよな?」
悠翔も今の言葉が聞き間違いじゃないかどうかって尋ねてくる。
今の言葉がどうかって聞かれると勿論、それは悠翔のことで。
私の好きな男の子は悠翔しかいない。
このことはアリサ達とお話していて自覚したこと。
悠翔は会った時から何処か気になっていて、目が離せなくて。
怖い部分もあるけれど、優しくて。
一緒にいると私は何時もどきどきしていた。
知らず、知らずのうちに悠翔の顔を追っていた。
色々なものを持っていて、複雑な事情もあるって言っていたけれど。
やっぱり悠翔のことが気になって。
それに……この世界じゃ魔法が遣えない私が襲われていた時に悠翔は助けてくれて。
多分、初めて出会ったあの時には既に一目惚れしていたんじゃないかって思う。
でも、一目惚れだって言ったら軟派な女の子だって思われそうで嫌だった。
だけど、悠翔と初めて出会った時の胸の高鳴りは決してそんな気持ちだけじゃなくて。
あの時からやっぱり、悠翔に恋していたんだと思う。
悠翔のことでいっぱいになってしまったのもあの時からで。
こんな気持ちも悠翔に出会ってから初めて知った。
恋をするってこう言うことなんだって。
だからこそ、こう言ったことは大事にしたくて。
本当はちゃんとしたかたちやきっかけで告白したかった。
だけど……もう、その気持ちは隠せなくてあふれ出てしまった。
だったら、私も覚悟を決める。
「……うん」
悠翔……私は貴方が好き、です。
フェイトから返ってきた返事は肯定の返事。
俺のことが好きだって言ってくれている。
俺の己惚れじゃ無かったことが素直に嬉しい。
初めて海鳴で出会った女の子――――。
俺にここまで踏み込んできた初めての女の子――――。
そして、俺が護りたいと心で誓った女の子――――。
護りたい大切な女の子に好きだと言われて嬉しくないはずが無い。
「……先に言われてしまったな」
「え……?」
だけど、こう言ったことは自分からフェイトに伝えたかった。
彼女が――――フェイトのことが好きだと言うことは。
「俺も――――いや、俺はフェイトのことが好きだ。1人の女の子として」
可愛いからじゃない、護りたいからじゃない、フェイトだから好きになった。
1人の女の子としてフェイトのことが好き――――それを伝える。
「悠翔っ!」
俺の言葉にぱあっと表情を輝かせて抱き付くフェイト。
「悠翔……嬉しいよ」
「……ああ、俺もだ。フェイトに気持ちを伝えられた。それに同じ想いでいてくれたことが嬉しい」
「うん……うん……。夢じゃないんだよね?」
「ああ、夢じゃない」
フェイトは今言ったことが本当かを実感するように俺にしっかりと抱き付く。
俺に抱き付いているフェイトの感触――――。
これが、今のことが夢じゃないと言うことを教えてくれる。
「悠翔……」
フェイトが腕の中に納まったまま俺をじっと見つめる。
そのままフェイトはゆっくりと目を閉じて――――顔を少しだけ上に向ける。
フェイトのその行動を理解した俺はそれに応えようと顔をゆっくりと近づけていくが――――。
「っ!?」
一瞬、異質な気配を感じた。
何か殺気が籠ったような視線を感じる。
「悠翔……?」
今の俺の行動に疑問を浮かべるフェイト。
お預けを喰らったようなかたちになってしまったためか少しだけ残念そうな表情をしている。
「……すまない。何か気配を感じたんだ」
「気配……?」
「ああ、明らかに殺気をぶつけてきた」
そう、今の殺気は此方へと向けられたもの。
しかも、怨みの籠ったものだ。
俺は今の気配がまだいないかを確認する。
もしかすると、俺を狙っている一派の人間かもしれない。
それとも、フェイトに対して何か怨みを持っているような人間かもしれない。
それは考えにくいことだが……可能性がゼロとは言い切れない。
このまま仕掛けてこないのであれば良いのだが、万が一と言うものもある。
(いた――――)
そして、俺は気配を感じた方向に向かって飛針を投げつける――――。
From FIN 2009/3/31
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