「ま、自覚が無いんなら良いわよ。アンタ達は”まだ”つきあってるってわけでも無いんだし?」
「あうぅ……」
 まだと言う部分を強調するアリサ。
 フェイトはすっかりその言葉に頬を紅く染めて俯いてしまっている。
 やっぱり、そう言った様子のフェイトも可愛らしい。
 まぁ……アリサの言うとおり”まだ”つきあってはいない。
 そうなりたいとは思うのだが、何処かで踏ん切りがつきにくいと言うべきか。
 いや、きっかけみたいなのが無いのか?
 どちらにしろ、フェイトが俺の言葉を待っているのだとしたら待たせていることには変わりない。
 でも、これだけははっきりと言えるから伝えておこう。
「……確かにアリサの言うとおり、フェイトは大切な友人だ。”今は”まだ、な」
「あぅ……」
「成る程ね」
 俺の言葉に一応の納得をするアリサ。
 フェイトも俺の言いたいことを理解したのかぼんっと音がしそうなほどに顔を真っ赤にする。
 解りやすいとは思うが……フェイトも俺を意識してくれているのだと思うと嬉しくなる。
 告白するのであれば正式に時期を見計らってするつもりでいる。
 だから、俺は今はまだ、と言ったつもりだ。
 その意図はとりあえず伝わったので良しとするべきだろう。
 何にせよ、大切な女の子であるフェイトとは一歩進んだ関係になりたい――――それは俺の中にある明確な意思だから。






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「それにしても……アンタもはっきりと言い切ったわね?」
 俺がきっぱりと言い切ったことに意外そうな表情をするアリサ。
 いや、別に此方としては普通に言ったつもりなのだが。
「……何か問題でも?」
「無いわよっ! ったく……これで悠翔もなのは達と仲間入り確定か……」
「……仲間入りって」
「だって、そうじゃない。悠翔の気質を見るとユーノみたいに素面でクサい台詞とか言うだろうし」
「そうか?」
「……アンタは自覚ないだろうけど、普通に言ってると思うわよ。すずかもそう思うでしょ?」
「う〜ん……そうだね〜。でも、悠翔君の言ってることって真実味があるから別に取り繕わなくても」
「……ごめん、すずかに聞いた私が馬鹿だったわ」
 俺の言い分をすずかに尋ねてみたが、返答の方はある意味で期待どおりだったらしい。
 すずかの場合は多分、恭也さんと忍さんの分でなれているだろうからな。
 しかし、ある意味でなのはさん達の仲間入り確定とは酷い言い分な気がする。
 いや、そうでもないか――――。
 俺も一応、なのはさんとは同じ血筋だし、別に気にしようとも思わない。
 多分、高町家全員があまりそう言ったことを気にしたりはしない気がする。
 寧ろ、御神の一派が全員そうな気もしなくもない。
 どちらにしろ、気にする必要はない気がする。
「アリサが気にし過ぎなのでは?」
「もう! 悠翔にまでそう言われたら私の立場がないじゃないの!」
 とりあえず、アリサに反論してみたが、逆に怒られた。
 多分、これ以上は何を言っても無駄だろう。
 まぁ……此方からも言うことは別に無いし別に良いかもしれない。
 とりあえず、怒られる理由は見当たらなかったが――――。
















「まぁ……良いわ。これ以上アンタに何を言っても無駄だろうし」
「……すまない」
「別に謝らなくても良いわよ。それに……そろそろ時間も遅くなりそうだし私は帰らせて貰うわ。すずかはどうするの?」
「う〜ん……今日はお姉ちゃんと帰ると思う。だから、ここにもう少しいるよ」
「解ったわ。じゃあ、私は帰るわね」
「うん。お疲れ様〜アリサちゃん」
 すずかと俺達に見送られてこの場を後にするアリサ。
 そう言えば、今まで管理局の方に行っていたから時間に気付かなかったが……思ったよりも時間が遅くなっている。
 もう、夕方に近い時間帯だ。
 すずかの場合は忍さんと一緒に帰れば良いが、アリサの場合はそうはいかない。
「ごめんね、悠翔君。アリサちゃんが困らせちゃったよね?」
「いや、そんなことは無い。実際は言うとおりかもしれないし」
 すずかが言うほど別に困っているわけじゃない。
 困ると言うよりは此方にそう言った感覚が無いのだから返答もしようが無いとしか言えない。
「まぁ、フェイトがあんなになってるのは否定しないけど」
「あはは、そうだね」
 さっきからずっと頬を紅く染めたまま俯いているフェイト。
 色々とアリサに言われたことで意識しているのかもしれない。
「う〜ん……やっぱり、フェイトちゃんは可愛いなぁ」
「す、すずか!?」
 すずかの漏らした言葉にフェイトが吃驚して顔を上げる。
「事実を言っただけだと思うんだけど……」
 確かにすずかの言うとおりそれは事実だと俺も思う。
 フェイトが可愛いと言うのは俺も常にそう思っている。
 俺がそう思うくらいだから、すずかがそう思っても可笑しいとは思わない。
「でも、私はなのはみたいじゃないし……」
「フェイトちゃんにはフェイトちゃんの可愛さがあるよ。悠翔君だってそう思うよね?」
「そうだな、俺もそう思う」
 すずかの言葉に肯定の返事をする。
 実際にそれが事実なんだからそうとしか答えようが無い。
 フェイトは俺の返事にまた頬を紅く染めたが……やがて笑顔になった。
 俺の返事が嬉しかったのかもしれない。
 さっきから顔を紅く染めたままでその表情は見れなかったが……。
 やっぱり、フェイトの表情は魅力的だとそう思う。
















「すずか〜帰るよ〜」
「あ、お姉ちゃん」
 暫く、すずか達と雑談をしていると忍さんがすずかを呼びに来る。
 今日はとりあえず、ここまでらしい。
「じゃあ、私もそろそろ帰るね」
「ああ、解った。なのはさんは……」
 すずかが帰ると言うことでなのはさんに確認をとろうと思ったが……。
「なのはさんは相変わらず、か」
 とりあえず、なのはさん達の様子を見る限り応えてくれそうも無い。
 すっかり、ユーノと2人の世界をつくってしまっている。
「なのはちゃんとユーノ君は相変わらずみたいだね?」
「……すまない。なのはさんが迷惑をかける」
「ううん、別に気にしなくても良いよ。なのはちゃんが幸せそうにしてると私も嬉しいし」
「……そうだな」
 すずかの言うとおり俺もそう思う。
 ユーノと一緒にいるなのはさんは何処となく幸せそうだ。
 此方から気にする必要も無いだろう。
「じゃあ、私は帰るから。2人にも宜しくね?」
「解った」
 忍さんに連れられてすずかもこの場を後にする。
 なのはさん達がああ言った状態だと言うことを考えれば事実上、この場に残されたのは俺とフェイトのみ。
 こうなってみるとなんて言ったら良いのか解らない。
 そんな中でフェイトが少しだけ言い辛そうに話を切り出す。
「えっと……私もそろそろ時間だと思うから」
「あ、ああ……」
 流石にフェイトもこのまま居続けるわけにはいかない。
 家の方に戻ると言うのは妥当な選択だろうと思う。
「じゃあ、俺が近くまで送る」
「良いの?」
「……なのはさん達はああだしな。それに、万が一があったら困る」
「そう……だね。じゃあ、お願いするね?」
「……任せてくれ」
 とりあずはフェイトを送り届けると言う方向で話が纏まる。
 近所とはいえ、今は状況が状況だ。
 俺が狙われていると言うのはあると思うが……フェイトが巻き込まれないと言う可能性も無いとは言いきれない。
 そう言った意味でもフェイトを迂闊に1人で出歩かせるわけにはいかなかった。
 俺は念のため、飛鳳を持っていることを再確認する。
 相手が動くまでは状況が動くことは無いとは言ったが……。
 裏を返せば、此方は常に備えておかなくてはならないと言うことに繋がる。
 飛鳳と暗器を持っていることは確認出来た。
 後はフェイトを無事に送り届けるだけだ。
 特に何も起きなければ良いが――――。



































 From FIN  2009/3/27



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