だが、その大きな力を振るうことが合法で認められていると言うものはどうかと思う。
 当然、軍や組織と言った枠組みで考えれば問題は無い。
 それは此方の世界でも共通しているからだ。
 しかし、管理局の場合は就業年齢と言うものの低さがある。
 幼い少年達がそう言った力を扱うと言うことがどういうものか解っているとは言い辛い。
 此方の世界ではそう言ったところに務めるには大人になってからである。
 やはり、そう言った理解せずに己の力を振るうと言う危険性が大きいからだ。
 俺が歯止めが利かないことが危ないと言っているのはそう言った部分にある。
 管理局の場合はそれが危ないとはあまり感じていないらしい。
 これが大きな問題じゃないかと俺は思う。
 理解している人間が力を振るっているのであればそれは良く解っているだろう。
 だが、それを理解していない人間が力を振るっているのであれば……それは唯の脅威でしか無い。
 大人であれば当然、そう言ったことを理解しているだろうから問題は無い。
 しかし、年齢の若い少年、少女がそれを自覚しているかどうか……。
 それを考えれば歯止めが緩いと言うものは大きな問題だろう――――。
 尤も、此方からは何も出来ないからそれについてはどうすることも出来ないのだが――――。






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 まぁ、これ以上気にしても仕方が無いか――――。
 結局のところはどうすることも出来ない。
 後は実際に俺がそう言った事件なり、犯罪者なりに遭遇してみないことには解らないことだ。
 歯止めに関しては何時もどおりにやれば問題は無いだろう。
 剣を振るいはするが、相手は極力殺さずに生かしたまま、捕獲する。
 要するに、そう言った相手には法の裁きを受けさせるのが定石だ。
 とは言ってもあくまで”極力”でしか無い。
 命の削り合いとも呼べる、俺達の戦いではそんな余裕と言うものは無い。
 だからこそ、殺す覚悟と言うものが必要になってくるのである。
 殺さなくて良いなら当然、殺したりはしないが、基本的に立ち塞がった相手は全員、斬って捨てる。
 これは剣を振るう上では普通のことだと言える。
 寧ろ、そう言った事件に自分の意志で介入してきている以上は殺さずと言う方がずっと難しいのだから。
 相手から見れば命を取られなくても、結局は法による裁きで黙殺される。
 それが解っているから、こう言った世界での戦いは命がけなのである。
 唯、魔導師の概念だとこれがどうなるかだ。
 普段なら、相手を殺すことを前提として、出来れば捕獲を試みるような形だが――――。
 それが逆になっていることだろうと思う。
 捕獲を前提で、どうしても無理であれば殺す――――と言った形だろうか。
 だが、それが難しいことだと言うのはこう言った世界に身を置いているから良く解る。
 それはあくまで綺麗ごとだ。
 俺からしてみても心がけとしては良いと思うが、そう簡単に上手くいくものじゃないと思う。
 管理局がどうやってそれを実践しているかは解らない。
 最も、今の俺が気にしてもそれはどうしようもないことか――――。
















「悠翔、考えごと?」
「……ああ、色々とな。まぁ、今の段階じゃやっぱりどうしようも無いけどな」
「管理局のこと……だよね?」
「……そうだな。少し考えていたんだ。歯止めが緩いことに関してな。俺は自分の剣がどういったものかは良く解ってる。だが……」
「逆に管理局の制度じゃ……ってこと?」
「……そう言うことだ。まぁ、実際に動いてみないと解らないから。その点に関してはまだ後になるだろうが」
「うん」
 悠翔はやっぱり、アリサとの会話に出てきた歯止めについてと言うのを考えていて。
 だけど、こればかりは実際にやってみないことには解らないから。
「私もこれについては何も言わないよ。悠翔の思うとおりで良いと思う」
 私にも最善かなんて解らないけど、悠翔が思うとおりで良い――――。
「だから……もし、悠翔が駄目だと思ったら何時でも言って? 私は悠翔についていくから」
 管理局には管理局の考えがあるけれど、それでも私は悠翔の考えを信じたいと思う。
 私は管理局に所属していて、執務官だけど……それでも。
「……解った、すまない」
「ううん、私が自分で決めたことだから」
 そう言って申し訳なさそうにする悠翔。
 でも、悠翔についていくことを決めたのは私自身。
「だから、悠翔は気にしなくても良い、よ」
「フェイト……」
 その気持ちを伝えて私は悠翔とじっと見つめあう。
 悠翔の視線は真っ直ぐで、迷いなんて無い。
 今、言っていたことも全部本気だと言うのが感じられる。
 だから、私は悠翔についていこうって思ってる。
 でも、それ以上に――――。

 悠翔は私が好きになった人だから――――

 どんなことがあっても私は悠翔を信じたい。
 これが私の出した答えだった。
















「やっぱり、フェイトは悠翔のこと大事に思ってくれてるんじゃない」
 俺達の様子を見ていたアリサが納得しているかのように頷いている。
 フェイトが俺をそう思っていると……とアリサには見えるらしい。
「悠翔も漸くそんな女の子が出来たんだからしっかりしなさいよ?」
「……解ってる」
 アリサの言い分はその通りだと思う。
 ここまで俺のことを見ている娘はフェイトだけだろう。
 なのはさんもはやてもアリサもすずかもここまでじゃないと思う。
 アリサの言葉に頷いた俺の様子を見て、フェイトは嬉しそうにしている。
 ……少しくらいは自惚れても良いのかもしれない。
「でも、アンタ達もなのは達とあまり変わらなくなりそうね。しょっちゅう自分達の世界に入ってるし」
「そ、そんなこと……無いと思う」
 フェイトが否定するが、その言葉は弱々しい。
 少しくらいはそう言った自覚があると言うことなのだろうか。
 俺は別にそんなつもりは無いと思うのだが。
 普通に俺とフェイトは自分たちの言葉を隠さずに伝えあっているだけに過ぎない。
 少なくとも俺はそう思うのだが……。
「ま、自覚が無いんなら良いわよ。アンタ達は”まだ”つきあってるってわけでも無いんだし?」
「あうぅ……」
 まだと言う部分を強調するアリサ。
 フェイトはすっかりその言葉に頬を紅く染めて俯いてしまっている。
 やっぱり、そう言った様子のフェイトも可愛らしい。
 まぁ……アリサの言うとおり”まだ”つきあってはいない。
 そうなりたいとは思うのだが、何処かで踏ん切りがつきにくいと言うべきか。
 いや、きっかけみたいなのが無いのか?
 どちらにしろ、フェイトが俺の言葉を待っているのだとしたら待たせていることには変わりない。
 でも、これだけははっきりと言えるから伝えておこう。
「……確かにアリサの言うとおり、フェイトは大切な友人だ。”今は”まだ、な」
「あぅ……」
「成る程ね」
 俺の言葉に一応の納得をするアリサ。
 フェイトも俺の言いたいことを理解したのかぼんっと音がしそうなほどに顔を真っ赤にする。
 解りやすいとは思うが……フェイトも俺を意識してくれているのだと思うと嬉しくなる。
 告白するのであれば正式に時期を見計らってするつもりでいる。
 だから、俺は今はまだ、と言ったつもりだ。
 その意図はとりあえず伝わったので良しとするべきだろう。
 何にせよ、大切な女の子であるフェイトとは一歩進んだ関係になりたい――――それは俺の中にある明確な意思だから。



































 From FIN  2009/3/25



 前へ  次へ  戻る