「そう言えばそうだったわね。悠翔ってこっちの世界じゃギリギリの部分で動いてるし」
「まぁ、そう言うことだな。その分では動きやすいかもしれないな」
 そう、一つの問題として管理局側の法律に殉じるのであれば合法だと言うことがある。
 俺の年齢で剣を振るうことは普通は法律的には許可をされることは無い。
 だが、俺が剣は振るっている。
 これは一重に合法から外れている部分と外れていない部分のギリギリのところで動くようにして貰っているからだ。
 元々から夏織さん達と動いていると非合法ギリギリで動いているのが普通なのだが。
 以前にアリサ達の護衛をした時もかなり危ない所だったからな――――。
「まぁ、アンタの場合は逆に危ないかもしれないわよね。普段はギリギリで歯止めが聞いてたけど、あっちじゃそうはいかないっぽいし」
「そうだな。俺もそれがちょっと問題だと思う」
「解ってるんなら、ちゃんと努力しなさいよ。唯でさえアンタは危ないことを平気でやるんだから」
「……解ってるさ」
 本当にアリサの言うとおりだ。
 俺が平気で危ないことをするってアリサが思っているのならそうなんだろう。
 俺に自覚は無いが、ボディガードなどをして貰う側であるアリサには客観的にそう見えるんだと思う。
 確かにそれはアリサの言うとおりだった――――。






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 どちらにしろ、アリサの言うことはその通りだが、とりあえず俺の立場がどうこう変わるってことは無いだろう。
 剣士として、ボディガードとして俺自身はそのままだろうしな。
 護るために剣を取る――――それは変わらない。
 大切な人を悲しませるために剣を取っているわけじゃない――――それは忘れてはならないこと。
 後は己の正義に殉じること。
 確かに管理局に協力することは約束したが、此方には此方の正義と言うものもある。
 だからこそ条件付きであり、正式な所属と言う形を蹴っているのである。
 なんにせよ、アリサの言うとおり、無茶をすると言うことに関してはなんとも言えないだろうが。
「悠翔」
「どうした、フェイト?」
「うん、悠翔はまた、何か考えごとをしてるのかなって」
「何故、そう思う?」
「だって、アリサが言ったことを聞いてから、ずっと黙ってるから」
「……成る程、そのとおりだな。フェイトに隠しごとは出来ないか」
「何を考えていたの?」
「いや、自分のことだ。俺がやっていることに関してな。後は管理局に協力する上で俺がどう動くかとか」
「えっと……どういうこと?」
「まぁ、なんて言えば良いか。俺が剣を振るっているのって此方の世界では非合法ギリギリの部分なんだ」
「うん、それは解るけど……」
「でも、管理局の基準で言えば、合法になっている。その点で歯止めが利かないって言うのが問題だってことだ」
「あ……」
 俺の言葉に驚いたような表情をするフェイト。
 フェイトも言われなければ俺がどういった状態になっているのかは解らなかったらしい。
 俺もアリサに言われるまではそこまでは気にしていなかった。
 俺は既に覚悟と言うものを済ませている――――。
 だが、俺が無茶をする、しないとか言う点でも合法だ、非合法とかに関してはある意味では歯止めみたいなものだと言えた。  しかし、その歯止めが利かないとなると――――。
 俺が何をしでかすか解らないってことにも繋がる。
 まぁ、俺自身は抑えると言う自信はあるのだが――――。
 アリサが俺にああ言ったのは色々な意味で信用が出来ないからだろう。
 主に自分自身に関してと言う意味で。
 まぁ、逆にその辺りで信用されていないと言うのは恭也さんと同じだと言うことなのだが。
 恭也さんも平気で護るためには無茶をしたり、博打を打つ。
 その辺りで同じだと言うのは多分、俺も同じだ。
 まぁ……確かにそれが危なっかしいと言うのがあるのかもしれないが……。
















 えっと……とりあえず、悠翔の言っている意味を考えてみる。
 悠翔が剣を振るっているのは非合法ギリギリの部分でやっているからって言うこと。
 うん――――これは解るかな。
 だけど、私達の世界の基準だと剣を振るうことは合法になってしまう。
 これって随分と違うことだと思う。
 悠翔は剣を振るう時はちゃんと考えていると思う。
 勿論、本来は振るうべきものじゃないからと言うことも考えればそれは当然だと言える。
 だけど、管理局の基準に合わせると悠翔が剣を振るうことは全く、問題ない。
 これは多分……管理局の就業年齢の問題にあると思う。
 私達だって正式に4年前から管理局の中で魔法を遣っているんだし――――。
 悠翔が剣を振るうって言うことも普通だってことになってしまう。
 と言うことは悠翔がどんな風に剣を振るっても問題無いってことになるわけで――――。
 悠翔は管理局の考え方とは全く違う理念を持つ人。
 でも、管理局の制度としては悠翔が剣を振るうことについては全く問題が無くて。
 法律的にも問題が無いし、制約としても緩いから――――。
 歯止めが利かなくなるってそう言うことなの?
 だとしたら……悠翔が剣を振るう上では躊躇うと言う必要が全く無い。
 多分、悠翔は此方の世界ではギリギリのところで立ち回っていたんだと思う。
 だけど……管理局の管轄だとそれが無くなってしまう。
 悠翔が問題だって言っているのはそう言うことなんだと思う。
「うん、それって不味いことだと思うよ」
「そうだな、俺もそう思う。俺自身、歯止めを付けることは出来るとは思うが、法律的に問題が無いと言うのはやっぱり危ういと思う」
「もしかして、悠翔が何度も言っている覚悟の問題ってそう言うところにも繋がってる?」
 今の悠翔の話を聞いて、気になったところがあったので尋ねてみる。
 悠翔が言っている覚悟の問題……もしかしたら。
「そう言うことだ。俺が遣っているものも普通は畏怖の対象だ。当然のことのように受け止められては困る。だが、管理局の場合だと――――」
「それが、当然のように受け止められるってこと?」
「ああ、フェイトの言うとおりだ。そう言った側面があるから管理局は覚悟と言ったものが無い。合法だから問題無いと思っているだろうからな」
 悠翔が言っていること、アリサが言っていること……きっとそのとおりだと思う。
 アリサの言うとおり、此方の世界ではギリギリで歯止めが利いていたのに私達の世界ではそれが利かない。
 だから、悠翔はその力を合法的に遣うことに覚悟を持てって言いたい――――多分、そうなんじゃないかって思う。
















 とりあえずはフェイトも俺の言いたいことが解ったと思う。
 力を振るうことに覚悟を持つと言うこと。
 それは、自分に大きな責任が伴ってくる。
 力を振るう上で必要なのは、殺す覚悟と死ぬ覚悟。
 これは剣と言うものを振るう上でも決して省くことは出来ない。
 剣を遣う上では当然、相手を殺すことを前提として意識に留めておかなくてはならない。
 だが、無闇に人を殺したりして良いと言うことは無い。
 殺すしか無い――――と言うことも多々あるのだが、それでもギリギリのところで踏み止まるのが普通だと言える。
 それに、こう言った力を振るうことは本来は認められていない。
 こう言ったものは合法とは言わず、非合法と言うべきものだからだ。
 だが、その上でもこのような力を遣うと言うこと――――それには相応の覚悟と歯止めが必要だ。
 そう言った理念があるからこそ、相応の心構えが必要となってくる。
 しかし、管理局の場合はその部分が緩い。
 確かに非殺傷と言うものが存在している分で殺す覚悟と死ぬ覚悟と言うものはしなくても良いだろう。
 だが、その大きな力を振るうことが合法で認められていると言うものはどうかと思う。
 当然、軍や組織と言った枠組みで考えれば問題は無い。
 それは此方の世界でも共通しているからだ。
 しかし、管理局の場合は就業年齢と言うものの低さがある。
 幼い少年達がそう言った力を扱うと言うことがどういうものか解っているとは言い辛い。
 此方の世界ではそう言ったところに務めるには大人になってからである。
 やはり、そう言った理解せずに己の力を振るうと言う危険性が大きいからだ。
 俺が歯止めが利かないことが危ないと言っているのはそう言った部分にある。
 管理局の場合はそれが危ないとはあまり感じていないらしい。
 これが大きな問題じゃないかと俺は思う。
 理解している人間が力を振るっているのであればそれは良く解っているだろう。
 だが、それを理解していない人間が力を振るっているのであれば……それは唯の脅威でしか無い。
 大人であれば当然、そう言ったことを理解しているだろうから問題は無い。
 しかし、年齢の若い少年、少女がそれを自覚しているかどうか……。
 それを考えれば歯止めが緩いと言うものは大きな問題だろう――――。
 尤も、此方からは何も出来ないからそれについてはどうすることも出来ないのだが――――。



































 From FIN  2009/3/21



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