「とにかく、今回はこのまま高町家の方に戻させて貰う。今日、立ち合った魔導師についてはなんとかしておく」
「……すいません、お願いします」
クロノさんも俺の考えていることがある程度解るのか、何も言わずに俺が言いたかったことを代弁してくれる。
今回、立ち合った魔導師に関しては此方の概念と言うものをぶつけたと言うことになる。
恐らく、覚悟の違いと言うものは解ったはずだ。
後は俺からどうこうすると言うつもりはない。
だが、俺のせいで恐怖感を持ってしまった可能性だってある。
そう言った不安を抱えていることを考えれば何かしらの対処はしなくてはならない。
とは言ってもその覚悟の違いと言うものを見せつけた俺では逆効果にしかならないだろう。
だから、クロノさんの申し出は有り難かった。
しかし――――今回、俺と関わった魔導師達がどうなるかは今後次第だ。
戦うことを辞めるのか、それとも続けるのか――――。
それは俺が決めるべきことでは無い。
後は本人達の意思次第――――そう思う。
魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
クロノさん達の話が全て終わって、海鳴へと戻ってきた。
エクスはイギリスの方へそのまま戻ってしまうと言うことで別行動だ。
因みにはやてはエクスについていくと公言して、そのまま一緒に行ってしまった。
まぁ、ああ言う関係だから当然なのかもしれないが――――。
ヴォルケンリッター達はそれぞれ、仕事とはやてについていくのとで別れて行った。
なんと言うか漸く、解放されたって言う感覚がする。
俺には管理局の空気はいま一つ合わない感じだった。
協力するとは言ったがあくまで所属するわけでは無い。
精々、協力しても特別な時などに限られるだろう。
アリサ達のように海鳴での場所の提供だとか言ったことに関しては出来ないからな。
寧ろ、俺がそんなことをしたら警防隊の方にバレてしまう。
それは管理局としては不都合だろう。
まぁ……俺自身もそんな真似をすることは無いし、夏織さんもそんなことはしないだろう。
恐らく美沙斗さんも知っているだろうが……あの人は何も言っていなかった。
あえて黙認してくれていると言うことか。
「ごめんね、悠翔。クロノや義母さんが色々と……」
「いや、あれくらいだったら構わない。寧ろ、俺も言いたいことは言ってるからな」
「でも……」
「それに、あくまで俺が剣士だってことを認識して貰っているから俺としてはそれで良い」
フェイトが今日のやり取りのことで申し訳なさそうにしているが、俺としては別に気にしていない。
寧ろ、好き勝手に言ったのは此方の方だしな。
良くもまぁ……提示した条件が受け入れられたと思う。
多分、現地協力者であって管理局員と言う立場では無いと言うのが理由としてあるだろうな。
普通に管理局員としてだったら、組織の理念に反するような真似をしてはならない。
それは、組織に所属するのであれば当然のことだった。
「だけど、悠翔が協力してくれるって言ってくれてやっぱり、嬉しいよ。悠翔には立場があるけれど……それでも、堂々と会えるし」
「……そうだな、俺も嬉しい。フェイトに会えるからな」
「ゆ、悠翔っ」
頬を紅くしながらもじもじとした様子のフェイトだったが、俺の言葉でぼんっと音がしそうなほど紅く染まる。
やっぱり、フェイトは可愛らしいな……
自分のことを気にしてくれる女の子。
こんなフェイトだからこそ大切にしたいって思う。
フェイトがいなかったらきっと俺は管理局に協力なんてしなかっただろうからな――――。
「ほら、やっぱりいちゃついてるじゃない」
「そ、そんなことっ……!」
私が悠翔との会話でほわ〜っとなっているとアリサがジト目で此方を見ながら呟く。
いちゃついてるなんて、そんなこと決して無い……と思う。
「うん、フェイトちゃんの言うとおり、別にそんなこと無いと思うよ?」
「いや、なのはの場合はそうだろうけどね……。普通はああ言うのはいちゃついてるって言うのよ」
「そうかな、ねぇ、ユーノ君?」
「ん〜どうだろね。僕もああ言うのは普通だと思うんだけどなぁ」
「……アンタらに聞いた私が馬鹿だったわ」
なのはの助け舟に呆れ果てるアリサ。
ユーノもユーノでなのはに同意してるみたいだし。
とりあえず、なのは達にとっては私達はいちゃついているわけじゃなくて……。
アリサから見ればいちゃついてる……。
あれ? もしかして、私ってなのはとあまり変わらない?
私もなのはとユーノの様子を見ていていちゃついているかなぁ……って思っていたけれど。
今はそれもあまり気にならなくなりつつあって……。
だって、悠翔の傍でどうするのかでいっぱいいっぱいだから。
それに、こんな気持ちは初めてだから解らなくて。
私は悠翔に出来る限り踏み込んで接している。
少しでも私を意識して欲しくて、見ていて欲しくて。
でも、悠翔も私のそう言った意図を理解してくれているのか私の行動を受け止めてくれていて。
つい、私も悠翔には甘えたくなってしまう。
そっか……何時の間にか私もそうなってたんだ
恋は盲目だって聞いたことがあるけれど、きっとそうだと思う。
今の私は悠翔とこうしてることが嬉しくて。
悠翔にもっともっと近づきたいと思ってるから。
こう思うと逆に私はやっぱり、恋してるんだなぁって嬉しくなってしまう。
アリサには悪いんだけどね?
フェイトのことをアリサにツッコまれるがあまり気にならない。
俺もある意味染まってきたような気がしてくる。
フェイトもフェイトで完全に出来上がっていると言うかなんと言うか。
アリサが呆れているのも解るような解らないような。
とりあえず、俺も同類ってことみたいだが……。
「まぁ、とりあえず悠翔も管理局に協力するって立場になったからある意味では私達とは同じになるのかしらね?」
もう何を言っても無駄だと判断したアリサが本題と思われる質問をしてくる。
「少し違うだろうな。アリサ達の場合はまぁ、此方での経済的な問題とかだろうからな。俺の場合は剣術がかわれてるわけだし」
「じゃあ、悠翔の場合はなのは達と同じようなのにも参加するってこと?」
「いや、どうだろうな。俺の場合はボディガードとかで依頼があるような気がする」
確かに協力するとは言ったし、剣士としてなら良いとも伝えている。
俺の専門分野はとりあえず、ボディガードとかになるのだが……。
他にも何か、考えられることがあるだろうか。
可能性としては近接戦闘の指導か――――?
魔導師が接近戦を苦手としているのは明白だったからな……。
そう言った駆け引きについてなんかも教えてくれと頼まれるかもしれない。
「ふ〜ん……もし、そうだったとしたら悠翔がやることってあまり、変わらないんじゃないの?」
「……多分な。しいて言えば此方の世界と違って合法的に認められているってことだな」
「そう言えばそうだったわね。悠翔ってこっちの世界じゃギリギリの部分で動いてるし」
「まぁ、そう言うことだな。その分では動きやすいかもしれないな」
そう、一つの問題として管理局側の法律に殉じるのであれば合法だと言うことがある。
俺の年齢で剣を振るうことは普通は法律的には許可をされることは無い。
だが、俺が剣は振るっている。
これは一重に合法から外れている部分と外れていない部分のギリギリのところで動くようにして貰っているからだ。
元々から夏織さん達と動いていると非合法ギリギリで動いているのが普通なのだが。
以前にアリサ達の護衛をした時もかなり危ない所だったからな――――。
「まぁ、アンタの場合は逆に危ないかもしれないわよね。普段はギリギリで歯止めが聞いてたけど、あっちじゃそうはいかないっぽいし」
「そうだな。俺もそれがちょっと問題だと思う」
「解ってるんなら、ちゃんと努力しなさいよ。唯でさえアンタは危ないことを平気でやるんだから」
「……解ってるさ」
本当にアリサの言うとおりだ。
俺が平気で危ないことをするってアリサが思っているのならそうなんだろう。
俺に自覚は無いが、ボディガードなどをして貰う側であるアリサには客観的にそう見えるんだと思う。
確かにそれはアリサの言うとおりだった――――。
From FIN 2009/3/18
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