「理に適ってるわね。大したものだわ」
「……ありがとうございます」
 夏織さんと議論を交わすエクス。
 傍で会話を聞いているリンディさんとレティさんも感心しているようだ。
 いや、俺もエクスの戦い方には感嘆するしか無い。
 剣を遣えるのにも驚いたが、拳銃で俺の二刀流と同じ意味のことをやるとは。
 フェイトも驚いた様子で話を聞いている。
 最も、はやてだけは当然と言わんばかりに胸を張っていたのだが。
「はやて、自慢そうだな」
「当然や。エクスは私の自慢の人やもん」
「……色んな意味でか?」
「そうやで?」
 成る程、色んな意味で自慢の人か。
 戦いに関しても優れた力量の持ち主だと思うが……。
 はやてにとってはそれだけの人ではないってことか。
 フェイトにとって俺はどう見えているんだろうか。
 嫌われてはいない、とは思える。
 だが、はやて達のように踏み出したような関係ではない。
 それが、羨ましくもあるな、俺達はそうではないから――――。























魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















『エクスは私の自慢の人やもん』
 私の胸の中にはやての言葉が響く。
 きっぱりと言い切ったはやてが羨ましく思う。
 エクスとの関係がそこまで進んでいるのも羨ましいけど……。
 それを堂々と言えるのが羨ましい。
 私の方はそこまでの関係にはなっていないなから……。
 ううん、まだ一歩が踏み出せていない。
 はやて達みたいに付き合うのならどうしても、一歩を踏み出さないといけないんだけど――――。
 どうしても、その一歩を踏み出すことが出来ない。
 後はきっかけが足りないと言う感じだと言うのも解ってる。
 だけど……それでもはやて達のことが羨ましいと思うのは変わらなくて。
 ああやってはっきりと伝えられるのは本当に凄いと思う。
「はやて、そこまではっきり言われると僕もどう反応したら良いか困る」
「別にええやん。減るもんやないし」
「いや、そこまで僕のことを言わなくても……」
「私は事実を言っただけなんやけどなぁ……」
「それでもだ。そう言うことは2人の時にしてくれ」
「は〜い……」
 なんか凄く互いのことを理解しているような2人の会話。
 こう言ったはやての様子を見るのが初めてなのか義母さんもレティ提督も驚いてるみたい。
 うん、私も凄く吃驚してる。
 こうやって見てみるとはやても普段以上に女の子してる。
 私も最近はその、私もやっぱり女の子だってことを実感してるところだけど……。
 はやてはもっと前から実感してたんだと思う。
 今のはやての表情は普段、私達といる時とは全く違って――――更に魅力的に見える。
 女の子は恋をすると変わるって言うけど……それは本当なのかも。
 だって、今のはやてはとても可愛く見えるから――――。
















 夏織さんとの話が終わり、リンディさん達からの話も一段落する。
「そういや、エクスはグレアムおじさんから離れてても大丈夫なん?」
 その頃合いを見計らってはやてがエクスに尋ねる。
「うん、大丈夫。今はそう言ったのに狙われたりはしていないから」
「それなら良いんやけど……」
「まぁ、グレアム氏なら大丈夫さ。いざとなったら僕の義姉さんも助けてくれる」
「ああ、成る程な。あの人が助けてくれるんやったら大丈夫そうやな」
 話を聞いている限り、グレアム氏と言うのは闇の書事件で暗躍していたギル=グレアム氏のことだろう。
 今でもはやてとは関わりを持っているみたいだが、エクスとも関わりはあるらしい。
 グレアム氏の紹介で知り合ったと言っていたからそれは当然なのかもしれないが。
「さて、と僕も目的の人とそろそろ話に行こうかな」
「目的の人って?」
「うん、高町恭也さんのことだ」
「恭也さん?」
「……ああ。ちょっと色々とあるからね」
 そう言えば話をしておきたい人がいると言っていたが……エクスが目的としていた人は恭也さんのことだったのか。
 多分、考えられることとすれば昨年の事件の関わりだろう。
 恭也さんとエリス=マクガーレンさんの関わりのあった事件。
 その時の話でも聞くつもりじゃないかと思う。
 あの事件は多くの人達にとっては大きな事件。
 恭也さん、美由希さん、士郎さん、美沙斗さん、夏織さん――――。
 そして、俺自身にとっても何かしらの関わりのある事件だった。
 士郎さんに瀕死の重傷を負わせ、フィアッセさんの親の敵であり、エリスさんにとっても敵だった。
 しかし、その人物も恭也さん、美由希さん、エリスさんの活躍で捕えられ、法の裁きを受けている。
 様子を見る限り、エクスにもこの事件に関わりがあると言えるんじゃないかと思う。
 直接的には俺も関わってはいないがその辺りは気になるところだ。
 エクスの正体を確信するためにもな――――。
















「貴方が高町恭也さんですか?」
「ああ、そうだが……」
「僕はエクス=マクガーレンと言います。昨年では義姉さんが御世話になりました。仇を討ってくれたこと感謝しています」
「義姉さん? それに、昨年の事件……もしかして、エリスのことか?」
「……はい」
「成る程、先程の戦いぶりからしても誰かに似ている部分があると思っていたが……そうだったのか」
 話したい人物だと言っていた恭也さんと話を始めるエクス。
 成る程、やはりエリス=マクガーレンさんの関係者か。
 エクスの正体は懸念していたが……俺の気にし過ぎだったらしい。
 様子を見ても嘘は言っていないのは間違いない。
 恭也さんもエクスのことは驚いていたが、合点がいったと言う様子で話に答え始める。
「それに、その西洋剣の扱い……あの事件の関係者に似ているな。確か……グリフだったか」
「……知っているのですか?」
「いや、俺は直接立ち合った訳ではない。妹の方が相手をしているからな」
 恭也さんにはエクスが遣っていた剣にも少し見覚えがあったらしい。
 あの事件の関係者か――――?
「だが、悠翔との駆け引きを見ているとそれを思いだす。本人と関係があるのかまでは解らないが、な」
「……そうですか。そこまで解るとは流石です」
 恭也さんの言葉に驚くエクス。
 グリフが何者かは俺にも解らないが……話を聞いている限りでは昨年の事件に関わった人物のようだ。
 しかも、恭也さんの話を聞く限りでは剣士のようだが……?
 西洋の剣技で有名なのはドイツの剣術だが……やはり、その流れを組んでいるのだろうか。
「しかし、俺の見立てではエクスもグリフと同じ剣技を遣えるように見えるが……関係者なのか?」
「……はい。彼、グリフは僕の実の兄です。僕達は孤児で幼い頃に離れ離れになっていたのですけど」
「そうか……だったら、俺達、御神の剣士を恨んでいるんじゃないのか?」
「いえ、寧ろ感謝しています。僕が兄と会ったのは一度だけでしたが……既に兄の剣は汚れたものになっていましたから」
「……と言うことは、フィアッセを襲った時よりも前からか」
「はい。何時からか兄は強者を求めるだけの騎士になってしまいました。だから、誰かが止めなくてはならなかったんです」
 グリフと言う人物は騎士としての道を外れた――――。
 謂わば、剣士としての道を外れたと言うのと同義だと言うことか。
 俺がそう考えるのを余所にエクスは言葉を続ける。
「だから……兄を止めてくれた貴方達には感謝しています」
 まさか、エクスの話がここまで昨年の事件に関わっているとは思わなかった。
 それも――――実の兄が敵の側だったなんて。
 エクスが言いたかったのはあの事件のことだったのか――――。
 だが、俺はあの事件には関与していない。
 エクスに対して俺は何を言えば良いのか解らない。
 こう言った関わりだったなんて――――。



































 From FIN  2009/2/25



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