「そうやなぁ……今回は私も行こうかな。 悠翔君のことも気になるしな」
「……僕も行こう。少し話をしたい人物もいるしな」
 今度ははやて達もついてくるつもりみたい。
 義母さんと夏織さんの会話は確かに気になるけど……。
 はやて達に聞かせても大丈夫なのかな?
 悠翔もそれが少し気になっているみたい。
「……解った。別に大丈夫だと思う。とりあえず、ヴォルケンリッターの皆には待っておくように伝えておいてくれ」
「ん、解ったわ」
 悠翔の言葉に応じてはやてがシグナム達にそのまま待っているようにと伝える。
 シグナムは少し抗議をしたそうに見えたけど、別に危ない橋を渡るわけじゃないから納得しているみたい。
 流石にはやてはシグナム達の扱いを良く解ってると思う。
「じゃあ、いこか」
「……ああ。そうだな」
 はやてに促され、悠翔は夏織さん達の方へ戻っていく。
 私も悠翔に寄り添うようについて行き、自然な動作で手を繋いだ。
 私の行動に気付いた悠翔もそっと私の手を握り返してくる。
 悠翔の行為が嬉しくて、私は悠翔に微笑みかけながら寄り添う。
 だから、はやて達が後ろでどうしていたのかは全く解らなかった。
 まさか……はやて達も同じようなことをしていただなんて――――。























魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 俺がフェイト達を連れだって戻ると夏織さんとリンディさんと……?
「レティ=ロウランよ」
「あ、すいません。不破悠翔です」
 レティ=ロウランと名乗ったリンディさんの友人。
 ……この人もかなりのやり手だな。
 雰囲気が一流の策士と言うかなんと言うか。
「あら、悠翔。ちょうど良かった。とりあえずは此方も話は終わったわ」
「悠翔君。貴方の問題についてですが……私達でも調べてみます。管理局内に貴方のことを狙っている人間がいるのは間違いないですから」
「貴方は喉から手が出そうなほど欲しい人材だわ。でも、貴方も自分のことがあるから強要はしないわ。協力してくれるだけでも有り難いから」
 とりあえず、夏織さん達との話はこう言う方向性で纏まったらしい。
「と言うことよ。とりあえずは、貴方は今までとはあまり変わらない立場でと言うことになるわ。しいて言えば依頼が増えると言った感じかしらね」
「……成る程」
 夏織さんの言うとおり、依頼が増えると考えれば割合、違和感も無い。
 これは護衛の依頼を受けるようなものに近い――――そう考えれば良いだろう。
「これなら、悠翔も今までとは変わらないわ。後は問題を何点か解決しないとね」
「過去の事件のことと……」
「悠翔の利き腕のことね」
「その件に関しては――――」
「ええ、悠翔には目途が立っているんでしょう?」
「……はい」
「だったら、早いところなんとかしましょう。唯……利き腕を手術すると言うことは覚悟は出来てるわね?」
「解っています。俺が今までこの腕を治さなかったこと――――その覚悟が決まりました」
 そう俺が今まで左腕を治さなかった理由――――。
 それは腕にメスを入れなければならないと言うこと。
 俺の左腕のような状態と言うのは一度、メスを入れてしまえば元通りにとはいかない。
 実際にメスを入れた腕や膝はもう駄目だと言われている。
 今までの医者はそれを覚悟するようにと言っていた。
 元々、俺も医者に世話になると言うのはあまり好きじゃない。
 治せないなら今まではこれでも良いと思っていたからな。
 多分、恭也さんも以前までは治せるとは思っていなかったはずだ。
 しかし、フィリス先生からの強い奨めによって膝の手術を決めたと聞いている。
 今までは治せる可能性があると言っていた医者がいなかったとか。
 俺も治せると言っていた医者には会っていなかったからな――――。
 だが、フィリス先生は治せると言っていた。
 その点では初めての医者だった。
 だからこそ、俺は初めて俺の腕を治せると診断してくれたフィリス先生を信じると決めた。
 フィリス先生に腕を委ねようと思ったのはそう言った理由からだ。
 だが……完全にとまではいかないだろう。
 腕を怪我していなかった頃――――そこまで腕が回復するわけではない。
 恭也さんですら、僅かな反動を抱えているくらいだ。
 俺もそう言った反動を覚悟しなくてはならない。
 しかし、腕が治るなら――――大したことじゃない。
 今のままでは腕はこれ以上治せない。
 だったら、フィリス先生の言葉を信じて治して貰うだけだ。
 たとえ、結果がどうなったとしてもその覚悟は出来ている――――。
















「いきなり、お願いしてごめんなさいね。エクス君。こんなことに付き合わせてしまって」
「いえ、グレアム氏の頼みですし……僕も興味はありましたから」
「でも、貴方も凄い腕前ね。この際君も来ない?」
「レティ提督……エクスは既に協力者なんやし、それでええと思うんですけど」
 何やらエクスもレティ提督に誘われている。
 レティさんはこう言うタイプらしい。
 はやてが困ったように呆れてしまっている。
「いえ、はやての言う通りです。それに、僕も悠翔と同じで魔導師じゃないですし。そう言うわけにもいかないでしょう」
 成る程、エクスも俺と似たような立場らしい。
「それに、グレアム氏からも僕は今の立場の方が良いだろうと念を押されていますから」
「……残念ね」
 返答まで俺に似たような感じか。
 しいて言えば、俺とは違って大きな問題が無さそうなのが違いだろうか。
「悠翔君も協力者としてなら良いとは言ってくれたけど……最近は不振ねぇ。良い人材は中々、いないものだわ」
「それは仕方が無いわ。彼らは私達とは違うのだし。協力を取り付けただけでも良しとするべきじゃないかしら」
「それもそうね」
 なんか少しだけ残念そうにしているリンディさんとレティさん。
「しかし、そんなに俺達が必要になるものですか?」
「ええ、恥ずかしいことに管理局には貴方達みたいな人はいないの。特に悠翔君のように接近戦に長けた人材は」
「シグナムでは不足なのですか?」
「ううん、確かにシグナムのような人もいるけれど……純粋な接近戦の駆け引きの出来る人がいなくて。皆、魔法に頼っているから」
 成る程、確かにそれはあるのかもしれない。
 確かにシグナムは別格なんだと思うが、今回相手にした魔導師達は接近戦の駆け引き……いや、全体的には練度が低い。
 俺には少なくともそう感じられる。
「そうですね。確かにそれは言えています。はっきり言わせて貰いますと、これで組織の人間かと思えるくらいの練度しかありませんね」
 とは言ってもここで取り繕っても何にもならない。
 俺は自分の意見をレティさんに伝えていく。
「ぶっちゃけた話ですが、練度が低すぎます。夏織さんもそう思いませんか?」
「……そうね。悠翔の言うとおりだわ。これなら、警防隊の方がずっと上ね」
「と言うことです。俺も夏織さんも同意見ですが、管理局の人間は練度が低すぎます」
「ぐ……ここまで言われると流石にショックね」
「ええ、本当に」
 俺と夏織さんの言葉に大きく溜息をつく、リンディさんとレティさん。
 まぁ、自分達の組織のことを真っ向からこう言われればそうなるか。
 とは言っても事実は事実だ。
 警防隊の人達の場合だと御神流の技を駆使しなくては相手にするのも難しいからな。
 それに対して今回の魔導師達の場合は技を駆使しなくても平気だった。
 それどころか殺気をぶつければ大丈夫だったからな……。
 とりあえず、そう言った意味でもこの練度の低さはどうしようも無いだろう。
 まぁ、そう言った意味で剣士のような人材が欲しかったのかもしれないな――――。
















「それにしても、貴方のその戦い方は普通の人間の出来るものじゃないわね」
「と言いますと?」
「先程のエクス君の戦い方は拳銃を主体としていたけど、本質は違うでしょう? 多分、貴方は拳銃で戦う時とその西洋剣で戦う時の二つのパターンがある」
「……そこまで見抜かれましたか」
「貴方の拳銃の遣い方を見れば歴然だわ。本来は二挺の拳銃を遣っているんじゃないかしら」
 リンディさん達との会話が終わり、今度は夏織さんがエクスの戦い方について指摘をしていく。
 マクガーレンと言う名前で気付いたが、二挺の拳銃を扱うと言う戦い方は現在のマクガーレン・セキュリティーサービスの主であるエリス=マクガーレンさんのものだ。
 俺は直接見たわけではないが、その話は割と有名な話だった。
 だったら、エリスさんとの直接的な関わりを持っていると思われるエクスがその戦い方をするのは充分に考えられる。
「僕の場合はそこまでは、扱えませんよ。一応は遣いますが、基本的には一挺の拳銃のみです」
「と言うことは拳銃と西洋剣を同時に遣うってとこかしらね。拳銃を二挺同時に扱わないと言うのであれば」
「いえ、僕の場合は二挺の拳銃を同時に遣うのは奇襲的な意味を持たせていますので少しだけ違います。最も、剣を遣う時も同じような形なのですが」
「成る程……面白い戦い方ね。とは言っても銃と剣じゃ大分、遣い勝手が違うんじゃなくて?」
「ええ、だからこそ銃と剣で戦い方を分けているんです。剣を遣う時は奇襲的な意味で銃を遣い、拳銃を遣う時ですと、二挺目の拳銃を奇襲的な意味で遣います」
「理に適ってるわね。大したものだわ」
「……ありがとうございます」
 夏織さんと議論を交わすエクス。
 傍で会話を聞いているリンディさんとレティさんも感心しているようだ。
 いや、俺もエクスの戦い方には感嘆するしか無い。
 剣を遣えるのにも驚いたが、拳銃で俺の二刀流と同じ意味のことをやるとは。
 フェイトも驚いた様子で話を聞いている。
 最も、はやてだけは当然と言わんばかりに胸を張っていたのだが。
「はやて、自慢そうだな」
「当然や。エクスは私の自慢の人やもん」
「……色んな意味でか?」
「そうやで?」
 成る程、色んな意味で自慢の人か。
 戦いに関しても優れた力量の持ち主だと思うが……。
 はやてにとってはそれだけの人ではないってことか。
 フェイトにとって俺はどう見えているんだろうか。
 嫌われてはいない、とは思える。
 だが、はやて達のように踏み出したような関係ではない。
 それが、羨ましくもあるな、俺達はそうではないから――――。



































 From FIN  2009/2/22



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