「後、俺と関わったことで管理局を辞めたいと言いだした人が出ても引き留めないで下さい」
「どういう意味ですか?」
「そのままの意味ですよ。……そう言った人間は覚悟が足りなかったと判断して貰えれば結構です」
「……解りました。それものみましょう。他にはありませんか?」
「……いえ、これ以上はありません。恐らく、此方の提示する最後の条件は管理局の法律的には認められないと思いますから」
「就業年齢の問題、ですか」
「……そう言うことです」
 一通りの条件を提示して、俺は話を切り上げる。
 他にも条件はあるだろうが、はっきりと言っておく必要があるのはこのくらいだろう。
 質量兵器が禁止と言うのは気になるが、俺は質量兵器を扱うことは無いし、問題ないだろう。
 流石にこの世界に関わることまでは俺から言うことは出来ないからな――――。
 俺からは今回の話もここまでだ。
 後は夏織さんの返答が問題だが、どうにかなるだろう――――。
 本当は俺から言いたい言葉はまだ、あるのだが……それはきっと言わない方が良い。
 恐らく、その言葉は大きな反発を招くだけだ―――――。
















 ――――管理局の在り方は矛盾している。























魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「悠翔君はこのように言っていますが、夏織さん貴方はどうでしょうか?」
「そうね。私は悠翔が決めたのなら反対はしないわ。唯、過去の事件の件が解決しない限り、許可は出せないわね」
 夏織さんも俺が決めたと言うことには反対しないらしい。
 だが、夏織さんにはどうしても過去の事件が気になるらしい。
 やはり、俺にとっても因縁がある事件だからだろうか。
「夏織さん。俺は……」
「悠翔の気持ちは解ってる。だけど、これはどうしてもはっきりさせなくてはならないの」
「……父さんのことですか」
「……ええ、そうよ」
「ですが、父さんの関わった事件はもう解決したはずでは?」
「ええ。確かに事件は解決してるわ。一臣が死亡したことによってね。だけど、今もその事件の因縁は続いている」
「どういうことですか?」
「私の勘でしか無いんだけど……。悠翔が感じたって言う異質な気配のことだけど……多分、これは一臣の関わった事件が原因だと思うの」
 父さんの関わった事件のことを指摘していく夏織さん。
 確かに海鳴で異質な気配は感じたが――――?
 それが、父さんの関わった事件に関係している?
「悠翔が見たって言う人達……私の勘では魔導師だと思うの」
「夏織さん!」
 夏織さんの犯人が魔導師だと指摘する言葉に声を荒げるリンディさん。
 証拠もないのに疑われるのは心外だと言いたいのだろう。
「確かにこれは私の勘だから正しいとは言えないけど……否定することも出来ないんじゃなくて?」
「そうですが……」
「だとしたら、そんな人間のいる所に大事な甥を預けることなんて出来ないわ。しかも、悠翔が何者か狙われているのは確実なんだから」
 きっぱりとした言い分でリンディさんの言葉を遮る夏織さん。
 俺自身、まだまだ認識が甘かったと考えざるを得ない。
 未だに父さんの事件のことを引きずっている人間がいるのであれば、俺の命が狙われる――――。
 それは自明の理でしか無かった。
 管理局では殺傷が禁じられているとはいえ、父さんに怨みを持っていたような人間達にそれは関係ないだろう。
 今回の件で俺の正体と立場がはっきりしてしまった。
 恐らく、手段を選ばずにかかってくる可能性が高い――――。
 だったら……まずやらなければならないこととは――――。
 父さんの事件との禍根を持った相手をどうにかすることか――――。
















「今の段階では相手もどうこう動くことは考えられないわ。多分、悠翔の正体を掴んだだけに止まっているだろうから」
「夏織さん、もしかして?」
「ええ。先程、貴方とエクス君だったかしら。彼との戦いが終わった直後にね」
「成る程。俺は戦闘をしていたから気付かなかったですけど……俺のことを探っている人間がいたんですね」
「そういうこと。リンディさんも気付かなかったみたいですけどね」
「……ごめんなさい」
「リンディさんが謝ることじゃないわ。これは黙認していた私にも責任があるんだから」
「ですが……証拠も無いのにどうして、気付いたんですか?」
「ま、簡単に言うと気配かしらね。明らかに悠翔に殺意を向けていたわ。多分、士郎と恭也も気付いているはずよ」
 そう言って士郎さん達と目配せする夏織さん。
 士郎さんも恭也さんも夏織さんの言ったとおりの気配には気付いてたらしく肯定の反応を示す。
 だとしたら、気付いていなかったのは俺だけだったということか――――。
「悠翔の場合は仕方が無いわ。自分と変わらないくらいの実力者と戦っていたんだから。私だって同じくらいの実力者と戦っていたら気付かないわよ」
「そうかもしれませんが……」
「ま、どちらにしろ気には留めておくって言った程度で充分よ。向こうもそれは解っているだろうから」
「……はい」
「でも、相手がどんなふうに動いてくるかは解らないわ。それだけは気をつけることね」
「解りました」
 今はまだ、気に止めておくだけで良いとは言うが……。
 どちらにしろ、あちらが仕掛けてこない以上は此方も動けない。
 少なくとも管理局の人間と関わっている間に仕掛けることは出来ないだろう。
 なんにせよ、警戒するに越したことはない。
 恐らくは海鳴で仕掛けてくる可能性が高い。
 だが、クロノさんやリンディさんもいることを考えると……それも難しい。
 とは言っても俺を狙うような人間達はそれを掻い潜ってくるだろう。
 唯、相手の正体も解らない以上、此方から仕掛けることは出来ない。
 なら、仕掛けてくるのを待つだけだ――――。
 だが――――此方からなんの手も打てないとは――――。
 今はどうしようも無いか――――。
















「ごめんね、悠翔。私も気付かなくって」
 とりあえず、義母さん達との話題が終わって悠翔は一息をついている。
 悠翔達の会話を聞いていて私はしょんぼりとしてしまう。
 まさか、今の戦闘の間に悠翔を狙っている人がいたなんて――――。
 私達も見ていたのに気付かなくて。
 相手は魔導師なんだから魔力は感じられたはずなのに……。
 どうして、私は気付かなかったんだろう。
 悠翔の戦いに見とれていた――――?
 ううん、そんなことが理由じゃ無い。  私だってそこまで気を抜いたていたわけじゃない。
 じゃあ、どうして――――?
「いや、仕方が無い。フェイトはそう言ったことは専門じゃないだろ」
「でも……」
 悠翔の言うとおり、私はそう言ったことは専門じゃないけれど……。
 でも、悠翔が狙われていたのに気付けなかった。
「俺だって気付かなかったんだ。それにクロノさんもリンディさんも気付かなかった」
「悠翔……」
「だから、気に病む必要は無いさ。フェイトは気にしなくても良い」
「……うん」
 悠翔はそう言うけど、あんな話を聞いて気にしないなんて……。
 悠翔が狙われているのを黙って見てることなんて――――。
「大丈夫、必ずなんとかするさ。禍根は経ってみせる」
 はっきりとした意志を持って私の目を見つめる悠翔。
 悠翔の目には全く、迷いが無い。
 その瞳に映る光に私の胸はどきっ……と高鳴る。
「心配しなくても良い、事件のことが解決すれば協力出来るようになる」
「悠翔……」
 悠翔の答えは私にとっては凄くうれしい。
 所属はするつもりは無いみたいだけど……アリサやすずかと同じように協力者としていてくれる。
 だったら、悠翔とは離れなくても良いのかな?
「……まだ、問題は多いけどな」
 確かに悠翔の言うとおり、問題は多いと思う。
 過去の事件に関係している人のこと――――。
 悠翔自身の立場のこと――――。
 管理局とは異なる信念を持つ剣士のこと――――。
 そう言ったことがあるから色々と複雑な事情があるけれど。
「俺が自分で決めたことだ。どうなるかは解らないが――――覚悟はもう出来てる」
「……うん」
 これから管理局と関わっていく上で悠翔には色んな問題があるけれど……。
 きっと、悠翔だったら大丈夫――――だよ。
 私も悠翔の力になるから――――。



































 From FIN  2009/2/15



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