「……ううん、これは……きっと私が悪いの。悠翔のことは信じてるけど……。私がああ言ったことの覚悟が足りてなかったから」
「フェイト……?」
「心配したのは本当だけど……私は悠翔が無事でいてくれるって信じてるから。だから、大丈夫」
アリサの話を聞いて何か思うところがあったのかはっきりと自分の考えを伝えるフェイト。
「それに……私、悠翔のこと何があっても信じるって――――決めてるから」
「フェイト!?」
「だから、悠翔は迷わないで。アリサの言ってくれた言葉も本当だけど……それ以上に私は悠翔のことを信じてる」
参った――――フェイトがそこまで思ってくれているとは――――。
フェイトの目を見つめると、はっきりとした意志の光が見える。
……本当に本気らしい。
アリサの言うことも本当に大事にしないといけない。
だが、フェイトが信じているというのも大事なことだと思う。
無理をするのが良いんじゃない。
信じてくれる人を護りとおすのが大切なのだから。
フェイトとアリサの言葉――――意見は違うけど、どちらも大切だ。
唯、無理をして護るんじゃない――――護り抜くんだ
フェイトとアリサの言葉を聞いてそう思う。
全く、2人には敵わないな――――。
魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
「ったくアンタ達見てると怒る気も失せてくるわ。2人でいちゃいちゃでもしてるが良いわ」
悠翔に私の思うところを伝えると、アリサがやれやれと言った感じの様子で肩をすくめる。
「あ、アリサっ! そ、そんなつもりじゃ……」
なんとか反論してみようとするけど……あまり大きな声では言えない。
「だったら、どういうつもりよ?」
「え、えっと……」
どういうつもりだと言われても……ええっと、なんて言ったら良いのか。
いちゃいちゃなんてしているつもりは全く無いんだけど……。
アリサには違うように見えているのかな?
「傍から見ればアンタ達、いちゃついているようにしか見えないわよ。私の忠告は聞いてくれてるみたいだけど、勝手に2人の世界に入ってる」
「え、ええっと……?」
「ま、悠翔とフェイトに自覚は無いと思うけどね」
うん、自覚って言われても何処か困ってしまう。
私と悠翔はそんなことをしているつもりなんてないし……。
「いったい、なんのことだ?」
やっぱり、悠翔もなんのことかは解っていないみたい。
私も解らないんだから悠翔が解らないと言うのもやっぱりあるんじゃないかって思う。
そもそも、私達って付き合っているわけじゃないんだから、いちゃつくなんて言うのは違うと思う。
なのはやユーノとは関係が違うわけで――――。
「なんでもないわよ。多分、アンタ達にはこれ以上言っても無駄だろうから」
「あ、ああ?」
「さて、と……そろそろリンディさん達から話があるんじゃないかしら?」
「え?」
「アンタ達がああだから話しかけるタイミングに困っていたみたいよ?」
アリサが後ろを見るように軽く促す。
すると、その先には義母さんとレティ提督とクロノが。
義母さんとレティ提督はどう思ってるか解らなかったけど、クロノは明らかに機嫌が悪い。
もしかして、待たせ過ぎちゃったかな?
クロノは時間に厳しいからその可能性は考えられるけど……。
それ以外の理由はあまり思いつかない。
ええっと……私達、何かしたかな?
「フェイトと話をしてるところで悪いんだけど……悠翔君の結果が出ました」
「悠翔、君の判定はこんな感じになっている」
クロノさんが俺に資料を手渡してくる。
なになに……色々とデータが書き込まれているな――――。
『不破悠翔・13歳
戦闘技能 AAA
魔法資質 F
身体能力 AA+
状況判断能力 AA+
空間把握能力 A+
近接戦闘能力 AAA+
中距離戦闘能力 B
長距離戦闘能力 C
単体戦闘能力 AAA
広域戦闘能力 D
攻撃力 Unkown
防御力 C
魔導師としての適性は低く、観察の必要性が大いにあり。
リンカーコア自体も一般水準を下回っており、魔法を遣える可能性は無いと思われる。
攻撃力については、たびたび未知の反応を確認しているためによって不明である。
戦術レベルでは教導官クラス、騎士としての適性有り。
更には指導者としての資質もあると思われる。
しかし、測定者は身体上に問題を抱えているため、それが改善された場合、結果は変わってくるものと考えられる。
総合評価 AAA-クラス』
細かく書かれているとは思うが……これって凄いのか凄くないのか解らないな。
測定出来なかった部分とかは恐らく、神速とか奥義関連だろうな。
今回は攻撃のためにしか遣っていないから攻撃力がUnkownと言う評価になった感じか?
それとも、奥義が測定出来なかったのか?
「何よ、これ……凄いのか良く解らないわね」
「うん、何か片寄っているような感じだと思うけど……」
横で見ているアリサとすずかも凄いのかどうか解らない様子。
だが、フェイトだけは驚いた表情をしていた。
「悠翔……これってかなり凄い。魔導師としての適性を差し引いてもAAA-ランクだなんて」
「あまり、実感はないけど、それって凄いのか?」
「うん、凄いってものじゃないと思う。私やなのははSランクなんだけど、それは魔導師としての適性を合わせたものだから」
「じゃあ、悠翔の場合はそれを差し引いての数値ってこと?」
「うん、そうなるかな。それに……悠翔は身体上の問題を抱えてる。それで、この評価だから凄いよ」
「……成る程な」
とりあえず、実感は出来ないがフェイトがそう言っているってことはこの結果は凄いのだろう。
でも、この結果を見る限り……俺はフェイトよりは低いってことになるのか。
護る対象よりも自分の方が低いと言う評価を受けたのは残念だったが、それも仕方が無いだろう。
そういうこともあるものなんだろうな、と思う。
これはあくまで魔導師としての判定基準なんだし。
だが……俺が左腕を治したらもっと上がるってことか……。
やはり、今のままでは剣士としても上に行くのは難しいと言うことでもある。
尚更、左腕は治療すべきだと思う。
だが……左腕を治療したとしても以前のように遣えると言う保証はない。
メスを入れた肘や膝と言うのは……事実上の生命線を絶たれるのと同じことだからだ。
恭也さんも膝を治療し、完治させているが、それでも若干のハンデは持っているみたいだからな。
俺の場合はどうなるのだろうか……それは考えても想像は出来ない。
これは考えても仕方が無いので、今はこの結果を受け入れるしか無かった。
「以上の結果からしても君の能力は異常なレベルだ。寧ろ、危険だと考えても良い」
「クロノ!?」
「君の魔導師として資質は無いにも関わらず、ヴィータに匹敵するだけの戦闘力だ」
俺がヴィータにも匹敵すると言う評価を下すクロノさん。
自分ではそんな自覚は無いが、クロノさんが言うのならそうなのだろう。
「それに、君は身体上に問題を抱えている。それなのにこの評価だ」
確かにこの評価はあくまで俺が今の状態での評価。
左腕の問題が解決すれば更に上へと上がると言うことなのだろう。
「そして、君にはもう一つの疑いがかかっている」
「……疑いとは?」
「……ああ。君のとった行動とその戦闘力、そして……君が今回遣っていた小太刀についてだ」
「……!?」
クロノさんの言葉にびくっとしたような様子をするフェイト。
成る程、フェイトもこの話題のことは解るってことか。
「単刀直入に聞く、君は……魔導殺しなのか?」
やはり、思ったとおり……この話題か――――。
リンディさんも俺のことを探るような視線で見つめている。
それに対して、フェイトは俺の左腕にぎゅっと抱き付くようにしがみついている。
「……違いますよ。俺自身、この世界の魔法を見たのはここ最近です」
「言われてみればそうだが……」
「……ですが、俺は貴方達の言う魔導殺しとは深い関係があります」
「何?」
最早、飛鳳の存在を見られている時点で賽は投げられている。
だったら、此方も隠す必要は無い。
「まず、この小太刀ですが……これは俺の父が遣っていた物です」
「なっ……!?」
「そして、俺の父はこの小太刀を持って、過去にあることをしている。その意味が解りますか?」
「……ああ、そういうことか。君は……魔導殺しの息子だと言うことか」
「……そうなりますね。最も、貴方達の言う魔導殺しが俺の言っているのと同じかは解りませんが」
そう……証拠までは無い。
俺が持っている物は不破一臣の所有物であった飛鳳で間違いない。
だが、魔導師側から見れば飛鳳を直接見たと言う人間は生き残っていない。
あくまで、残された映像などで垣間見た物だろうと思う。
恐らくはその垣間見た物から解析して、あの事件で遣われた小太刀が飛鳳だと言うことを突きとめたのだろう。
「いや、そこまで聞ければ充分だ。君が魔導殺しの関係者だと解っただけでも良い」
「それで、俺をどうするつもりなんですか?」
「……どうこうすると言うつもりは無い。もう、この事件は終わったことだ」
「……そうですか」
「それに、管理局は過去の出自には拘らない。君が魔導殺しの息子だとしてもそれは変わらない。だが……」
「……立場の問題ですか」
「ああ、そうだ。悠翔の立場ははやてに似ていると言える。はやても闇の書事件に関わっていて、今はそれの主だからな」
はやてもある意味では俺と同じような境遇だと言うクロノさん。
だが、それだけでは無い。
何か含むところがあるようだ。
「しかし、悠翔ははやてと大きく異なる部分がある。はやては闇の書の主と言う立場ではあるが、過去の主との関係性は全く無い」
「成る程、俺の場合ははやてとは逆だと言うことですか」
「そう言うことだ。はやての場合は怨むのは筋違いだと言えるが、悠翔の場合は怨まれて当然だ。理由は……言わなくても解っているだろう」
「……ええ、解っています。俺は魔導殺しの息子であり、後継者だと言うこと、だからですね」
これで、答えは納得出来た。
確かにフェイトやはやての話を聞いた限り、管理局と言う組織は過去の出自や立場にはあまりとらわれない。
そう言った点では香港国際警防隊に良く似ている。
だが、俺の場合は組織的には良いとしても事件の関係者にとっては忌むべき存在だと言うことになる。
不破一臣が斬った人間の関係者は今も管理局に多く勤めていると考えられる。
だとすれば、その息子である俺が管理局に関わってきたらどうなるのだろうか。
恐らくは、歯止めが利かなるかもしれないな。
俺に怨みをぶつけるという形で――――。
From FIN 2009/2/9
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