残りの魔導師達は俺の方をおびえた様子で見つめている。
 流石に一瞬であそこまでされたらそうなるか。
 しかし、中途半端な覚悟で来られても無闇に命を落とすだけだ――――。
 俺は剣を納め、魔導師達に対して再度、剣気をぶつける。
 剣気に当てられた魔導師達がびくっとなり、やがてガタガタと震えはじめた。
 今のは殺気を込めた剣気にしておいたが……やはり、この世界の人間には辛いものがあるか。
 剣気は魔力とは全く違うものだから、得体のしれない力として感じられたんだろう。
 殺気だけであればまだ、普通に感じることはあるだろうから気にはしないだろうが、剣気は別物だ。
 今の魔導師の反応はそう言った事情からだろう。
(まぁ、仕方が無いことか――――)
 俺は軽く溜息をつく。
 仕方が無いと解っているとは言え、残念だと思う気持ちもあるからだ。
 しかし、俺が殺気をぶつけた人間の中に唯、一人だけ俺を睨みつけているのがいる。
 そして、その魔導師は良く見ると何かを構えている様子だ。
(まさか――――)
 俺が一つの可能性を考慮すると案の定、そうらしい。
 此方を見つめていた人間の取った行動は――――。
















 攻撃を放つことだった――――。























魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 放たれた弾に対して咄嗟に身を捩って避ける。
 若干、反応が遅れたのか僅かに俺の頬を弾が掠める。
 掠めた個所から僅かに血が滴り落ちる。
(殺傷設定か――――!? いや、違う。……拳銃か!?)
 いきなり来るとは中々、やってくれる。
 俺と年齢は同じくらいか――――相手にもこう言ったのがいるとは。
「くっ……避けられたか」
「狙いは悪くなかった。気配を消していたのも良い手段だと思う」
 相手も今のは自信のある手段だったらしい。
 咄嗟に気付かなかったら今の弾は俺に命中していただろう。
「……君の名前はなんて言うんだ」
 相手の魔導師が俺に名前を問いかけてくる。
「不破……不破悠翔だ。君は?」
「僕は、エクス=マクガーレン」
 エクス=マクガーレンと名乗った彼は拳銃を構える。
 成る程、初めから俺を仕留める気で動いていたと言うことか……。
 しかも、彼は俺の側に近い気質らしい。
 それに……マクガーレンと言う名前、何処かで聞いた覚えがある。
「そうか。君は俺と同じ側の人間か」
「……そうなるな。僕も君とは同じと言っても良い。だからこそ、同じ手を撃たせて貰った」
「成る程、理に適っている。だったら、俺も遠慮する必要は無いな」
 相手の反応を確認した俺は再度、飛鳳を抜刀する。
 向こうもその気らしく、既に拳銃を構えている。
 久しぶりの拳銃が相手か――――。
 得物としては上等だ、存分に相手をさせて貰う――――。
 俺はエクス=マクガーレンに向かって地を蹴った。
















 斬られた魔導師が手当てをしているのを余所に悠翔達が再び、戦闘を開始していた。
 悠翔の相手をしているのは――――。
「あ……あの人は……?」
「はやて?」
「ううん、なんでも無いんや。ちょっとな……あの人、私の知ってる人なんよ」
「え? はやての知り合い?」
「うん、そうや。あの人は……どちらかと言えば悠翔君と同じ側なんよ。タイプは違うんやけどね」
「え……?」
「……まぁ、私も彼とはよく会うから解るんよ」
 エクス=マクガーレンに詳しい様子で話すはやて。
 だけど、はやての話からして解ることは変わり種だってことくらいしか。
 けど……まさか、ああ言った真似が出来る人だったとは思わなかった。
 悠翔と同じように初めっからああ言ったことを前提で戦うなんて。
 はやての言うとおり彼も悠翔と同じなのかな?
 私が考えている間にも悠翔と彼の戦いは進んでいく。
 悠翔が拳銃の弾幕を避けながら距離を詰めていくのが私の方からも見えた。
 そう言えば、悠翔は未だに神速を遣っていない。
 拳銃を相手にそれは流石にきついような気がする。
 だけど、悠翔は全てギリギリのところで弾を回避していく。
 撃たれる弾は普通の魔力弾よりもずっと速くて、弾道も全く見えないのに。
 悠翔は走りながらもその弾道を見極めている。
(あ……また、避けた)
 私がその光景に見とれていると悠翔が僅かに身体を動かして弾を避けるのが見える。
 今の動きの間にも悠翔は確実に距離を詰め始めていて。
 神速を遣わなくてもあんな動きが出来る悠翔に見惚れてしまう。
 悠翔は身体強化の魔法なんて遣っていないのに――――。
 なのに、あんな動きで――――。
 今までは、接近戦を主体としている相手が基本だったから解らなかったけどこうして見てみると悠翔の身体能力の凄さが解る。
 少しでも瞬きなんてしていたら、見逃してしまいそうな悠翔の動き。
 普通の魔導師とは段違いに速くて、強い。
 傍目から見れば身体強化の魔法をかけているようにしか見えなくて。
 だけど、悠翔の場合は本当に生身一つで。
 でも、その悠翔の動きについていく彼にも私は驚きを隠せない。
 魔法の反応を確かめてみても、彼の方も魔法を全く遣っていない。
 生身一つで悠翔の動きについていっている。
 彼はいったい……なんなんだろう?
















(――――強い、な)
 油断していたつもりは無いが、相手の実力は相当なものだ。
 銃弾を避けながら進んではいくが、そう簡単に距離は詰めさせてくれないらしい。
 距離は徐々にしか詰まってはいない。
 しかし、何も手が無いと言うわけじゃない。
 今の距離ならば、飛針が充分に届く――――。
 俺は袖口から飛針を取り出し投げつける。
 相手の方も俺の動きに気付いて咄嗟に飛針を避ける行動をとる。
(ここだ――――)
 相手の弾幕が一瞬だけ止まったのを確認した俺は一気に距離を詰めていく。
 そのまま、自分の間合いまで踏み込み、斬り付ける。
 だが――――。
 相手もそう簡単に遣らせてくれるようなタイプでは無かった。
 咄嗟に俺の斬撃の動きに対して拳銃で飛鳳を受け止める。
 一瞬の虚をつかれた俺にそのまま、反撃の蹴りを放ってくる。
(ちっ……)
 咄嗟に身を捩ったが避けられなかった。
 相手は接近されても対処出来るらしい。
 銃を遣っていると言うことはあまり、この距離は得意じゃ無いと思っていたが……。
 これは想像以上にやっかいな相手だ。
 しかし、此方もそんなことを考えている暇はない。
 すぐに動かなくては――――。
 体勢を整え直し、俺は再度、彼に対して斬撃を見舞う。
 彼も飛鳳の動きを見極めながら、済んでのところで回避していく。
 その一連の動作には無駄な動きは見られない。
 いや、それどころか完全に見切られているとすら思える。
(余程、慣れていると思えるな。一筋縄ではいかないか)
 俺の方も相手の動きを見極め、次の一手を組み立てていく。
 このまま、一刀のみで相手をしていても決着はつけられない。
 なら――――二刀目を遣うまでだ。
 二刀目の飛鳳を引き抜いた俺は相手に向かってギリギリの距離での突きを放つ。
 これなら、流石に対処は出来ないだろう、と俺もそう思っていた。
 だが――――相手のとった行動は俺の予想外のことだった。
 二刀目の飛鳳が金属音と共に受け止められる。
(まさか、この状態から――――)
 一瞬、何が起こったのか俺にも理解が出来なかった。
 相手がいったい、何をしたのかが。
 冷静になって視線を向けてみると二刀目の飛鳳の先には一つの西洋剣が。
 まさか、それで受け止めたのか。
 相手の対処に気付いてすぐさま、次の行動に移ろうとした俺だったが――――。
「遅い……!」
 エクス=マクガーレンの行動は俺の反応よりも先に動いていた。
 俺に向かって銃口が向けられている。
(しまった――――)
 俺がそう思う間もなく――――。






















 ――――この場に数発の銃声が響いた。



































 From FIN  2009/2/2



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