これで、夏織さんが関われない理由があると言った理由が理解出来た。
 確かにそう言った事情があるなら関われないに決まっている――――。
 フェイトから聞いた話と夏織さんから聞いた話を合わせると一人の人物が導き出される。
 そして、飛鳳がそれに大きく関わっていると言うことは――――。
 その人物は俺の父、不破一臣しか在り得ない。
 まさか、こんな形で関わっていたなんて。
 飛鳳はある意味では因縁のある物だったと言うことか。
 父さんは事件に関わった魔導師を全員、斬り捨てている――――。
 その時の小太刀は当然、飛鳳だ。
 そして、父さんが魔導殺しと呼ばれるのは魔導師を全員、斬り捨てたことに由来するはずだ――――。
 なら、飛鳳は――――魔導殺しの小太刀と言うことになる。
(なんてことだ――――)
 こう言った事情があるからこそ夏織さんは関われないと言っていた。
 これで、俺が不破一臣の息子であり、後継者であると解れば報復してくる人間もいるかもしれない。
 夏織さんはそれを懸念していたのだと思う。
 しかし――――俺がこの場で飛鳳を手にし、そして持ち主だと自分から証明してしまった。
 最早、賽は投げられてしまったと言うことか――――。






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「悠翔、その小太刀って……」
 俺の小太刀を見て信じられないといった表情をしていたフェイトが尋ねてくる。
 フェイトも多分、何かに気付いたらしい。
「……フェイトも気付いたか」
「う、うん。えっと……その小太刀は魔導殺しの物と同じだって……」
「ああ、そうらしいな」
「じゃあ……悠翔が魔導殺し、なの?」
 フェイトが不安そうに俺を見つめる。
 確かにフェイトの言う魔導殺しと同じ得物を持っているんだからそう思うのは当然かもしれない。
「いや、確かにこの小太刀はそうらしいけど、俺が魔導殺しってわけじゃない」
「そう、だよね……」
「でも、俺が魔導殺しと関わりがあるのは本当だ。俺もたった今、気付いた」
「え……?」
「この小太刀は……俺の父さんの物だから」
「悠翔……」
 そう、俺の父、不破一臣が魔導殺しと言うのなら。
 俺が魔導殺しの息子であり、事件の関係者だと言える。
「けど、証拠と言う証拠が無いはずだ。今は黙っていて貰えるか?」
「うん、解ったよ悠翔」
 唯、真実がそうだったとしても今となってはその証拠がない。
 どうやって管理局が飛鳳のことを突き止めたかは解らないが、恐らくは事件の後に調べ上げたのだろう。
 父さんがどんな得物を遣っていたのか、と言うことを。
 だが、飛鳳自体は特別な物ってわけじゃない。
 飛鳳であれだけの魔導師を斬り捨てたと言うには理由がまだ、弱いはずだ。
 あの事件は全て父さんの力量が殆どだと言えるからだ。
 あくまで、飛鳳はあの事件で遣われた小太刀でしかない。
 飛鳳のことでとやかく言われてもどうしようもない。
 それは、向こうも解っているとは思うが――――?
















 悠翔の小太刀の話を聞いて、不安半分、安心半分と言った感じ。
 悠翔が魔導殺しじゃないことに安心は出来たけど……。
 小太刀は魔導殺しの物だなんて……。
 それに悠翔自身は魔導殺しの息子だと言っていて。
 凄く不安になってくる。
 でも、私はどんなことがあっても悠翔を嫌ったりはしないって決めてる。
 魔導殺しの話の一面を聞いたけど、私が悠翔を嫌う理由にはならない。
 寧ろ、悠翔の話を直接聞けて嬉しいと思った部分もある。
 だけど、義母さん達にはそうは映らないと思う。
 元々から悠翔のことをあまり、良い目では見ていなかった義母さん達からするとこれは大きな問題かもしれない。
 魔導殺しと言う忌むべき事件を起こした人物の血縁者……。
 それだけでも衝撃は大きかったのに、魔導殺しの遣っていた小太刀まで持っているなんて。
 義母さん達はまだ、悠翔の関係には気付いていない。
 それが多分、救いだと思う。
「フェイト、俺が魔導殺しと関係しているなんて幻滅したか?」
 私の心情を見透かしたかのように悠翔が私に質問を投げかけてくる。
 でも、悠翔のそんな質問は私にとっては気にならないこと。
「ううん、魔導殺しと関係しているとしても……悠翔は悠翔だから。私は気にしないよ?」
「……そうか、ありがとう」
「えへへ……」
 悠翔が御礼を言いながら優しく、私の頭を撫でてくれる。
 最近は悠翔にもこうして撫でて貰うことが多いから殆ど癖みたいになっていると思う。
 ちょっとだけ、悠翔の感触を味わいながらほわ〜んとする。
 悠翔も私の様子に気付いているのか少しだけ満足そう。
 少しの間だけ撫でてくれた後、悠翔は私の頭からゆっくりと手を放す。
「……そろそろか」
 そう言って悠翔が向こうの方向を見つめる。
 多分、悠翔には気配が解っているんだと思う。
 少しの間があった後、義母さん達が指示を出していたと思われる魔導師の人達が入ってくる。
 人数は……10人以上みたいで。
 相手にするには少し、多すぎるくらいな気もする。
 よく見たら……私も見たことがある人もいるみたいで。
 執務官クラスの人や教導隊クラスの人もいる。
 全員が、若手で有望な人達みたい。
 大体、私達と同い年か、少しだけ上くらいの印象を受ける。
 と言うことは全員、Aランクは超えている人達だと思う。
 中にはAAランクもいるかも?
 一対多数とは言ってたけど、これはちょっと、遣り過ぎなんじゃないかな――――?
















(数は10人と言ったところか。力量としてはシグナム達には及ばない感じ、だな)
 入ってきた魔導師達を見ながら軽く見ながら力量を推察する。
 流石にシグナム達に匹敵するほどの実力者はいないらしい。
 しかし、纏っている雰囲気からすると実力的には低いわけではないと思う。
 見た感じ俺と年齢はあまり、変わらない。
 同い年から、少し年上が相手だと言った感じか。
 だとしたら此方が遠慮する必要はないだろう。
 寧ろ、どのくらいの覚悟があるのかを見極めさせて貰うだけだ。
『悠翔君、準備の方は良いかしら?』
「ええ、此方は大丈夫です」
 リンディさんが確認を求めてくる。
 此方の準備は問題ない。
 左腕の状態に関しては何時ものことだからどうしようもないが、状態としては問題ない。
 流石に右腕一本でいけるとは思わないが、遣う分には左腕も大丈夫だろう。
 なんにしろ、久し振りに遣う飛鳳だ。
 存分に感覚を確かめておきたい。
 そう考えながら飛鳳を見つめる。
 飛鳳も俺の意思が伝わっているのか一瞬だけ輝きを放った気がした。
(そうか、飛鳳もそう感じてるのか)
 久しぶりに握る愛刀は遣われることを待ち望んでいたらしい。
 だったら、持ち主である俺もそれに応えていくだけだ。
「悠翔、じゃあ……私も離れて見させて貰うね?」
「解った。危ないかもしれないから、それだけは気を付けてくれ」
「うんっ」
 フェイトが一言、俺に声をかけてその場を離れていく。
 フェイト達はフィールドから少し離れた場所で見学するらしい。
 なのはさんやはやてもそこにいる。
 その様子を確かめた俺は夏織さんと一瞬だけ目を合わせる。
 夏織さんも存分にやれと言っているようだ。
 俺も今回は存分に立ち回ろうと思う。
 構えは何時でも抜刀出来る形で、俺は飛鳳を鞘に仕舞っている状態のままで精神を統一する。
 集中力を高め、この場の空気を感じ取る。
 相手側の魔導師は俺が魔力を持っていないと言うことに油断をしているらしい。
 雰囲気にいま一つ覇気が感じられない。
 流石に魔力で読み取っているだけあって俺の実力に関しては低く見ているらしい。
(それでも、相手の力量を理解しているつもりか)
 少しだけそんなことを感じながらも俺は意識を切り替えて再度、集中力を高める。
 そのまま、ギリギリまで自らの意識を集中し――――。
 俺は今まで解放していなかった剣気を解き放った――――。



































 From FIN  2009/1/27



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