いや、そこまで言い切らなくても良いとは思うが……夏織さんはこう言う人だしな。
 リンディさんの方も夏織さんになんて言えば良いのか解らないのだろう。
 返答に困っている様子だ。
「さて、そろそろ本題に入って貰いましょうか。……悠翔の剣を見たいんですよね?」
「はい」
「では、今回はどのようにするつもりですか?」
「今回は一対多数でと言う方向性で考えています。宜しいですか?」
「ええ、それで良いと思います」
「では、残りの準備もありますので、この話はここまでと言うことで」
 そう言って席を離れるリンディさん。
 とりあえず、俺がどう立ち回るかは決まったらしい。
 一対多数……暫くはやっていなかったから望むところだ。
 しかし、最近は多数を同時に相手にしたりはしていない。
 相手によっては手加減する必要もあるのだが……果たしてそんな余裕が俺にあるだろうか?
 かと言って皆の前でそんなことをするわけにもいかない。
 だったら、俺は剣士として全力で剣を振るうのみだ。
 それが、此方の意志を見せるのにも最良の選択だろう――――と俺は思う。






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 リンディさんの案内で連れてこられたのは訓練室。
 場所としては割合広くて戦いやすそうな印象を受ける。
 周りには結界が張ってあるとのことらしい。
 今回は手伝いを頼まれたらしい、ユーノも結界を張っている。
 他の人達は結界の外での観戦と言う形を取るとのことだ。
 準備が終わるまで俺も周囲を軽く見学させて貰う。
 いつの間にかリンディさんの隣には友人と思われる人もいる。
 知らないうちに話が思ったよりも大きくなってしまっているらしい。
 あまり、大勢には御神の剣を見せたくは無いのだが……。
 ここまできてしまうと隠す方が難しいか。
 それとも、解析される心配は無いからと鷹を括っていくか。
 ここは判断に迷うところだと言える。
 既にシグナムやクロノさんの前で遣っているのだから割と公になっているのかもしれないが。
 それでも、奥義は無闇には遣いたくはない。
 剣士は相手に手の内をバらすことを嫌う。
 どんなに取り繕ったとしても……結局、結論に関してはそこに行きつく。
 神速は魔導師が相手である限り、見切ることも解析することも不可能なはずだ。
 そこの点に関しては手の内はバしても問題は無いだろう。
 神速に関しては普段からも割合、遣っているからな……。
 後は基礎乃参法の範囲で収めれば此方の手の内がバれる心配はない。
 そもそも基礎乃参法は御神の基礎であり、根本から魔法とは違う。
 見ただけでは何をしているかは解らないだろうし、説明もつかないだろう。
 斬も徹も貫もそう言った意味では解析される心配はもあまり無い。
 とは言ってもこの辺りの判断は夏織さんの意見も聞いてみないとな……。
















「夏織さん、どうしますか?」
 今回はどうやって立ち回るかと言う意味合いを込めて夏織さんに尋ねる。
「そうね……。相手は多分、悠翔とそう歳が変わらない相手になると思うわ」
「どうしてです?」
「なんとなくよ。一対多数でやると言ったけど……指揮官クラスの人達が出てくるとは考えにくいしね。若手で優秀な人が来るんじゃないかしら」
「確かに……」
 夏織さんの言うとおりかもしれない。
 指揮官クラスの人間が相手になるとは考えられない。
 多分、俺がまだ若いからと言うことで、同年代から少し上くらいの魔導師をぶつけてくるつもりなんじゃないかと思う。
 その方が此方もやりやすいとは思うからその方が良いが……。
「ま、相手が何にせよ。悠翔、本気でいきなさい」
「……良いんですか?」
「ええ。とは言っても奥義を何処まで遣うかの判断は悠翔に任せるわ」
「解りました」
「それと、もう一つ。今回は……全員、斬り捨てるつもりでいきなさい。それも殺すくらいのつもりで」
「はい。解りました」
 夏織さんの全員、斬り捨てるつもりでいけと言った意味がなんとなく理解出来る。
 多分、先程のリンディさんとの会話の中で言っていたことを実践しろと言うことなのだろう。
 覚悟を確かめろと言う意味合いか。
 だったら此方もそのつもりで行くのが良いと思う。
 一対多数が相手ならば、全員を戦闘不能にしてしまえば良い。
 いや……寧ろ、再起不能にしてしまうくらいの気概を見せた方が良いか?
 なんにせよ、覚悟を確かめるということであればこのくらいの気概が必要だ。
 相手になる魔導師には気の毒だが……腕や足の一本は貰うつもりでいく。
 下手をすれば首を貰う可能性もあるが……それは状況次第だ。
 最も、そんなことを自分から進んでやりたいとは思わない。
 果たしてどうなることか――――。
















「悠翔……」
 悠翔と夏織さんの会話が一区切りしたところで私は声をかける。
 内容は少しだけ聞いていたけど、凄く不安で。
 殺すつもりでなんて――――。
 確かに悠翔だったらそこまでやりかねないとも思うんだけど……。
「フェイト」
「悠翔は本当にそのくらいの意気込みでやるの?」
「……ああ。そのつもりでいけるところまではそうしようと思う」
「そう、なんだ」
 一応、尋ねて見たけど悠翔はやっぱり本気みたい。
 悠翔が手を抜かないような人だと言うのは解っているけど……。
 でも、それを皆の前で遣るのはどうなんだろう?
 私は悠翔が何をしても嫌いになったりはしないけど……他の人は本気の悠翔を見たらどうなるんだろう。
 本気になった時の悠翔はシグナムとの戦いの時に見てはいるけど……。
 凄く容赦が無かったと思う。
 あの時は本当に魔導師や騎士とは考え方が違うということを実感させてくれた気がする。
 だけど、今度はそれを義母さん達の目の前でやるって言ってる。
 悠翔がそう決めたのなら私には止める権利はないけど……。
 管理局から見たら、悠翔の遣り方はどう映るのかな……?
 少なくとも良い目では見られないと思う。
 管理局の場合は悠翔達の基準から見ると何処か甘いところがあるみたいで。
 悠翔の場合は人を斬る場合も躊躇しないって言ってたと思う。
 だけど、管理局だと非殺傷と言うのが当たり前。
 ここは大きく違うところだと思う。
 だって……悠翔は殺傷を常に前提としているから。
 それが管理局との一番、大きな差の一つ。
 後は、悠翔の言うとおり覚悟の問題……それも大きく違ってくると思う。
 殺す覚悟と殺される覚悟……悠翔の言っていた覚悟の問題。
 管理局の場合はそれを要求してくることは無くて。
 やっぱり、違うんだなって思う。
 私は悠翔が何をしたって怖がったりしない。
 悠翔がどれだけの覚悟をしているかって解っているつもりだから。
 だから、悠翔が全員斬り捨てるつもりでいくって言っているってことを否定しない。
 だけど……義母さん達にはどんなふうに映るんだろう……?
 やっぱり、危険な人みたいに映るのかな……?



































 From FIN  2009/1/21



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