「良いわね、そういうのって。だったら、本気を貫き通しなさい」
「……ええ、解っています」
夏織さんに言われなくても、それは俺自身が一番、解っていること。
フェイトが大切な人だと思った時からそれは貫こうと思っていたことだ。
「うん、それなら良いわ。これ以上、私が言うことは無いわ。それに……客も来たみたいだしね」
「……そうですね」
俺の返答に満足そうに頷き、外の方に視線を移す夏織さん。
外から感じる気配は、はやて達のもの。
人数から察するにヴォルケンリッター達も一緒なのだろう。
後、アリサやクロノさんの気配も感じるからちょうど、皆が揃った感じか。
それにもう2人――――俺の感じたことのない気配が二つ。
一つは特に脅威は感じないが……もう一つの気配は尋常ではない。
恐らくは魔導師なんだろう。
それも、かなりの実力者だ――――。
しかし、漸く役者が揃ったと言える。
これで、俺が管理局に対してどう言った返事をするかが決まる。
協力するか、それとも協力しないかが――――。
俺自身の意志は、果たしてどちらなのだろうか――――。
魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
「士郎、恭也、お客さんよ」
「ああ、そのようだな」
「……数は8人程か。母さん、流石に家じゃ人が多い。翠屋に移動した方が良い」
「解ったわ。そうしましょう」
テキパキと動き始める恭也さん達。
確かに人数的に問題があるだろうな、これは。
俺も恭也さん達に続いて、準備を始める。
「悠翔?」
「はやて達が来た。今回はヴォルケンリッター達も一緒にな」
何故、片付けを始めたのか解らないと言った様子のフェイトに状況を簡潔に伝える。
「それに、俺の知らない気配がいる」
「知らない気配?」
「……ああ。それも尋常じゃない気配だ。相当な実力者だろうな」
「う〜ん……多分、それって義母さんのことだと思う」
「義母さん? 確か、リンディさんとか言ってたか」
「うん、悠翔の言っている気配が誰のことかは解らないけど、多分……そうだと思う」
「……そうか」
成る程、直々にお出ましと言うわけか。
それは此方としても望むところだ。
俺としても直接会わなければならないと考えていたし。
今回は夏織さんも来ている。
夏織さんが管理局の話を聞いてどう思うかも気になるところだ。
恭也さんと士郎さんがあまり管理局のことを言わないのは、なのはさんが自分で決めたから、と言うことだからだろう。
それでも、口振りからすると恭也さんも士郎さんも何かしらで管理局には思うところがあるらしい。
それに、俺の父さんの経緯もある。
もし、管理局側がそれに関係あるのだとしたら――――。
確実に決別の道を選ぶことになるだろうな――――。
そして、全員が揃ったところで翠屋の方へ移動する。
本当は暫く、休みの予定だったらしいが、今回の場合は人数の都合で貸し切りと言った感じだ。
桃子さんが厨房の方で人数分のお茶とお菓子を準備している。
俺の方は既に席につき、となりにはフェイトが座っている。
「悠翔の保護者をやらせて貰っている、不破夏織です」
全員が席についたところで夏織さんが自己紹介をする。
他の人の様子を見ると驚いている人が半分、力量を推し量っている人が半分と言ったところか。
まずは、驚いている人については夏織さんの見かけだろう。
夏織さんはどう見ても若い。
まぁ、桃子さんも相当、若く見えるが……夏織さんの場合は恭也さんの母親だから桃子さんよりも年上だ。
そう考えれば夏織さんの外見は恐ろしいほどに若い。
力量を推し量っている人についてはまぁ……夏織さんが剣士かどうかを見ているんだろう。
俺の保護者であり、俺よりも優れた実力者である夏織さんがどのくらいかを気にしていると言った感じだろうか。
「リンディ=ハラオウンです。此方のフェイトとクロノの母親をやっています」
それに対して、リンディさんが俺と夏織さんに対して自己紹介をする。
フェイトの保護者だと聞いていたが……これまた、随分と若い人に見える。
クロノさんの母親だと考えると……リンディさんも相当若く見えるとしか言いようが無い。
夏織さんに比べて……と言うのは野暮なので止めておく。
「士郎から聞きましたが、本日は私に御用があるとか?」
「ええ、悠翔君の件でお話がありまして」
「……悠翔の剣のことについてですか」
「はい、それもありますけど……」
「成る程、では……魔法のことに関してですか?」
「……はい」
夏織さんから漏れた魔法と言う言葉に少しだけ驚くリンディさん。
いや、俺も驚いた。
まさか、何も言わずに魔法と言う言葉夏織さんから出てくるとは思ってもいなかったからだ。
士郎さんに聞いたのかもしれないが、それにしてはストレートだ。
「では、はっきりと返答させて貰いましょう。私としては悠翔がその世界に関わることについては反対です。あの子には関われない理由がありますから」
俺には魔法に関われない理由がある?
そんなこと聞いた覚えも無いぞ?
俺自身、確かに魔法なんてものは遣えないが……。
関われない理由と言うのは思いつかない。
しかし、夏織さんが嘘を言うなんてことはありえないが……。
「理由と言いますと……?」
「それはここで話すことではありません。話しても信じられないかもしれませんから。実際に見て貰った方が早いと思います」
「そうですか……解りました。私達の方も今回はそのつもりでしたし……ついて来て貰えますか?」
そう言ったことで何とか無事に話は纏まった。
しかし、夏織さんの返答には驚く部分が多い。
強い反対はしていないが、関わるわけにはいかないと言った理由が読めない。
しかも、俺にその理由があるらしいが……?
リンディさんとの話が終わり、夏織さんが俺のもとへとやってくる。
「悠翔、私が反対している理由は先程、言ったとおりよ。でも、貴方が決めるのだったら何も言わないわ」
「夏織さん……」
「唯、今のうちだから言っておくけど……。多分、悠翔は今回の件で真実の一部を見ることになると思うわ」
「どう言う意味ですか……?」
「まぁ、そのままの意味かしら。貴方が皆の前で飛鳳を遣って戦った時に明らかになる、と言ったところかしらね」
「俺が飛鳳を遣って、ですか?」
「ええ、そうよ。……飛鳳は一臣の物だから。それが全ての鍵になるかもしれないわね」
意味深な夏織さんの言葉。
飛鳳が俺の父、不破一臣の物だと言うのが全ての鍵……。
いったい、どう言う意味なのだろうか。
確かに俺は魔導師の前では全て普通の小太刀で戦った。
当然ながら、飛鳳に関しては遣っていない。
だが、飛鳳を遣えば何かがあると言うこと――――。
それがなんのかが全く読めない。
唯、”不破一臣の物”と言うのが鍵だとするのなら……。
一つ、心当たりがある。
夏織さん自身も言っていたし、フェイトも言っていたこと。
唯、確証があるわけじゃない。
だが、その可能性は充分に考えられる。
「どちらにしろ、その答えを導き出すのは悠翔自身だから。私から言っても意味が無いわ」
「……はい」
夏織さんの言うとおりだ。
その答えは俺自身が導き出さなくてはいけない。
他の人から聞いた答えでは納得出来るものとは言えないだろう。
確かに夏織さんの言っていたことにも真実の一端があるのかもしれない。
フェイトが言っていたことにも真実の一端があるのかもしれない。
だが、それは俺の導き出した答えではない。
あくまで他者の言っている言葉なのだから。
だからこそ、自分の目で物事を見て、そして、判断しろ……そう言うことなのだと思う。
だったら、その真実にぶつかっていくまでだ――――。
From FIN 2009/1/16
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