「良くやったわね、悠翔。貴方も漸く、見つけたと言うことかしら」
「……はい」
 そう、俺が見つけたもの。
 自分が護りたい一人の女の子。
 ――――フェイト=T=ハラオウン。
 今のテストで夏織さんが確かめたかったものは見せられたんだろう。
 そして、迷わずにフェイトを護ることを優先して動いた俺の行動も実証された。
 大切な人のために剣を取ると言うこと。
 夏織さんの言っていたものを漸く、見つけられた。
 これが夏織さんの出した課題であり、最も大切なものだった。
「俺の大切な人……護りたい人は彼女、フェイト=T=ハラオウンです」
 最早、俺に迷いは無い。
 俺の護りたい人はフェイトだとはっきりと伝える。
 夏織さんにも、フェイトにも伝わるように。
「……解ったわ、悠翔。貴方が自分で見つけた人だもの。私が反対する理由なんてないわ」
 暫し、俺を見つめて夏織さんが納得したように頷く。
 俺が自分自身でこの答えを導き出したのがそ嬉しかったらしい。
 夏織さんは俺の頭を優しく撫でる。
 とりあえず、夏織さんから言い渡されていた課題は完遂したと言える。
 俺の方はこれで良かったのだが……。
 顔を真っ赤に染めたままフェイトは呆然としている。
 もしかして……フェイトに直球で俺の意志を伝えたのは不味かったのか?






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 悠翔の言葉にぼんっと湯気が出そうなくらい頬が熱くなる。
(え、ええっ!? た、大切な人って――――?)
 悠翔の言葉の意味が解らなくて頭が混乱する私。
(それに、悠翔が護りたい人って……私のこと――――!?)
 悠翔が護りたいと願っている人が私……?
 と言うことは悠翔も私のことを意識してくれていて。
「あ、あの……悠翔? 本当に私のこと……?」
「……ああ。フェイトが俺の護りたい人なんだ」
 おずおずと悠翔に確認を取ってみると返事は変わらずで。
 本当に悠翔の護りたい人は私で。
 私の頬は尚更、熱くなってしまう。
 悠翔のことを意識し過ぎて頭がぐるぐると回り始めてきた。
 悠翔が私のことを大切な人だと言ってくれた。
 でも、それがどう言った意味で大切なのかは解らなくて。
 だけど、悠翔は私が護りたい人だと言っていて。
 私の都合の良いように解釈をするのなら悠翔は私のことを意識してくれていて。
 私が悠翔を意識しているように悠翔も私のことを意識してくれているってことで。
「あ、あぅ……」
 考えれば考えるほど頬がどんどん熱くなってくる。
 なんだか、とけちゃいそうなほど熱くなっていく気がする。
 悠翔の言葉が凄く嬉しくて。
 伝わってくる真剣な想いが嬉しくて。
 もう、嬉しさで溢れてしまいそう。
(夢……じゃないんだよね?)
 そう考えてみるけど、感じる熱は本物で。
 それが夢じゃないってことを実感させてくれる。
 まだ、私から好きだって想いを伝えたわけじゃないけど。
 まだ、悠翔から好きだって言われたわけじゃないけど。
 凄く、凄く嬉しい。
 私の想いが通じていることが嬉しくて。
 それが、もう……言葉にならないくらいで。
 私にとっては悠翔の言葉がそれだけ嬉しかった。

 上手く、返事が出来なくてごめんね?
















「なんだか、ここまで見せつけられちゃうと困っちゃうわね」
 苦笑しながら俺達の様子を見ている夏織さん。
 何時の間にか俺の方もフェイトの方ばかり見つめていたらしい。
 個人的にはそう言ったつもりはなかったのだが……。
 さっきからフェイトとはなんどか目が合っている。
 無意識に俺もフェイトの方を気にしていたと言うことか。
「ま、悠翔がここまで気にしている女の子と言うのも初めてだしね。ちょうど良いか」
「か、夏織さん!?」
「だって、事実でしょう?」
「いや、まぁ……事実ですけど……」
 最早、夏織さんの言うとおりだ。
 俺に取り繕う理由なんてないし、それも出来ない。
 嘘じゃ無いからそんなことをする必要も無いからな……。
 まぁ、開き直ってしまったと言ってしまえばそれまでだが。
「潔く、認めたわね。男の子としてはそのくらいの方が良いわ。しっかりと繋ぎとめておきなさい?」
「……はい」
 少しだけ言いくるめられてしまった気もするが、夏織さんの言っていることは正しいのでとりあえず、頷いておく。
「さて、とこのまま立ち話もなんだし、そろそろお邪魔させて貰うわ。悠翔はその娘と一緒に”ゆっくり”と来なさい」
 そう言ってさっさと高町家に向かっていく夏織さん。
 とりあえず、気を遣ってくれたらしい。
 フェイトの方は未だにどうしたら良いのか解らないと言った表情をしている。
 俺もどうすれば良いのか解らない。
 そんな俺達を余所に扉の近くで立ち止まる。
「士郎、そこにいるんでしょう?」
 夏織さんが士郎さんの気配を察知する。
 こう言ったところは流石だと言える。
 と言うか、普通はこう言ったやり取りをする夫婦と言うのもあり得ないのだが。
「相変わらず、腕は鈍っていないみたいだな?」
「士郎こそ。あの時の分を差し引いても私よりも上手みたいね」
「そんなことは無い。俺は夏織と違って一線からは引いた身だからな」
「ふふっ……それでも、剣を取ることは止めていないくせに」
 俺達を後目に士郎さんと久しぶりの会話を交わす夏織さん。
 一言、二言ほど士郎さんと会話をして夏織さんは家の中へと入って行った。
 らしいと言えばらしいのだが……。
 結局は俺とフェイトがこの場に残されることになった。
 う〜ん……どうしたものか?
















 夏織さんが先になのはの家に入って行って、この場には私と悠翔だけが残される。
 夏織さんから色々と言われて、悠翔の方もどう言った反応をしたら良いのか解らないみたいで。
 唯、私にとって嬉しかったのは悠翔がそこまで私のことを気にかけていてくれていたってこと。
 夏織さんに何を話したかまでは解らないけど……悠翔も私を意識してくれてる。
 それだけでも私にとっては嬉しかった。
 でも……こうやって二人っきりにされるとどうやって話をきりだせば良いのかに困ってしまう。
「えっと、夏織さんって凄い人だね?」
 とりあえず、夏織さんのことを話題にきりだしてみる。
 夏織さんは桃子さんとは違った意味で凄い大人の女性だった。
 なんと言うかメリハリのついている感じのする人だと思う。
「ああ、そうだな。俺もあの人には憧れてる。だが、夏織さんがああいった手で来るとは思っていなかった」
「ああいった手……?」
「フェイトを狙ってきたってことについてだ」
「あ……」
 悠翔が少しだけ怒っているのは夏織さんが私を狙ってきたと言うこと。
「でも、夏織さんは本気じゃ無かったみたいだけど……?」
「……いや、本気だったと思う。夏織さんは俺にそこまでの意思があるかどうかを確かめるつもりだったみたいだからな」
「悠翔……?」
「だから、俺も咄嗟にフェイトにあんなことをしてしまった。怖がらせてしまって済まなかった」
「ううん。そんなことない。悠翔は護ってくれたから」
 私を巻き込んだことを悠翔は気にしている。
 でも、私は怖くなかったし気にしてない。
 悠翔が身を挺して私を護ろうとしてくれた……それが嬉しくて。
「それに……悠翔の言葉、嬉しかったよ」
「え……?」
「私のことを護りたい人だって言ってくれて。本当に嬉しい」
 悠翔の言ってくれた言葉は夢じゃなくて。
 私のことを言ってくれている――――それだけで充分だった。
 好きな人にそう言って貰えて嫌な女の子なんていない。
「だから、悠翔はそんな顔をしないで?」
 悠翔が申し訳なさそうにする必要なんてない。
 確かに少しだけ怖かったけど、悠翔が一緒だったから私は大丈夫だと思ってた。
 寧ろ、私のことを考えてくれた悠翔が優しすぎるんだと思う。

 でも――――私は悠翔のそう言うところが好きだから

 困ったような表情をしたままの悠翔を見ながら私はそう思う。



































 From FIN  2009/1/6



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