特に俺の場合は徹に関してだと完全に左腕の方に型よっている。
 寧ろ、左腕からの雷徹が俺の最大の奥義になっているのがそう言った事情からだと言える。
 一度、遣えなくなった利き腕を鍛えに鍛えた結果がこうだ。
 反動はあるとは言え、利き腕による一撃が決め手になる段階まで持っていった。
 しかし、その性で型よりが出てしまっているのも事実。
 漸く、右腕もバランスが取れるようになったが……やはり、徹においては左腕でなければ本来の威力を徹すことは出来ない。
 だからこそ、俺はまだまだ未完成でしかないと言える。
「いや、悠翔はもっと自分を評価したって良いと思う。海鳴に来ての結果は全て君の強さだからこそだと思うし」
 とは言ってもユーノが言うとおり自分をもっと評価するには実力が足りない。
 シグナムに勝ったのはあくまで戦い方の差でしか無いと思うからだ。
 同じ舞台で戦ってファリンに勝てなかったことがそれを明確に表している。
 しかし、ユーノ言っているとおりでもある。
 全く、成果が出ていないわけじゃない。
 俺自身、今までは出来なかったことが出来るようになっているからだ。
 後はそれを磨いていく、唯それだけなのだから。
 別に俺自身、評価して欲しいわけじゃない。
 でも、成果を出せているかが自分でも解らないと言うのも事実だから。
 そう言った意味でもユーノが俺のことを評価してくれるのが素直に嬉しかった。






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「さて……そろそろ、なのはさんも来るみたいだな」
「はは、そうみたいだね」
 暫く、話に集中していて気付かなかったが……。
 ユーノの姿を認めたなのはさんが駆け寄ってくるのが見える。
「ユーノく〜ん♪」
 とりあえず、なのはさんの様子からすると俺がユーノと話していたことには気付いていない。
 それどころか俺の姿に気付いているかも怪しい気がする。
「わっ!? なのは!?」
 案の定、なのはさんはユーノにじゃれつくように飛び付いた。
 やはり、俺の姿は目に入っていないらしい。
「えへへ、ユーノ君だぁ……♪」
「いや、ちょっと……なのは?」
 嬉しそうに抱き付くなのはさんに困った様子を見せるユーノ。
「ユーノ君は、私とこうするのは……嫌なの?」
「い、嫌じゃないけど……」
 なのはさんの上目遣いによる攻撃がユーノに適中する。
 これは、ある意味で反則だろう。
 ユーノが撃沈寸前に近いのも仕方がないと思う。
 多分、俺もフェイトにこういったことをされると何処まで理性が持つかは解らないだろうし。
「その……悠翔も見てるし」
「ふぇ、悠翔君?」
 ここで漸く、ユーノが俺の存在をなのはさんに伝える。
 なのはさんはやはり俺の存在は目に入っていなかったらしく、きょとんとした表情で首を傾げている。
「おはよう、なのはさん」
 とりあえず、ユーノのリクエストにお答えして、俺もなのはさんに挨拶をする。
「あ、おはよう。悠翔君。……って、にゃあああぁぁぁぁぁ!? い、何時からいたの!?」
 うん、そんな悲鳴をあげなくても俺は初めからいましたよ?
「いや、初めからだけど」
「あ、あうぅ……。見られたぁ……悠翔君にも見られたぁ……」
 俺が初めからいたというのに恥ずかしそうにするなのはさん。
 俺にも……と言うことを考えると他の人にもこういったことは見られていたらしい。
 恋は盲目って言うし、なのはさんがユーノしか見えていないのは悪いことじゃないと思うけどな。
 まぁ……少し行き過ぎな感じはあるけど。
















「にゃぅ……」
 とりあえずは一応は落ち着いたのか、なのはさんはユーノに頭を優しく撫でられている。
 そのなのはさんの様子を見つめるユーノの目はとても優しい。
 なんだか微笑ましい光景だが、先程のなのはさんの様子を見ると新たな一面を見たような気がする。
 あそこまでだとは全く、思わなかった。
 フェイトもなんか積極的過ぎるきらいがあるからな……。
 はやてはいま一つ読めないが……もしかすると、なのはさんの周りはこう言ったタイプが多いのかもしれない。
 それとも、忍さんや桃子さんの影響を思いっきり受けているか、だ。
 ああ言った姿を見ているとそう思えなくもない気がする。
 俺の周りの女性はそう言った人はいないしな。
 美沙斗さんは未亡人だし、夏織さんも半分くらいは似たようなものだ。
 御相手の人が傍にいるかいないかでこうも変わるのかと思わざるをえない。
「なのはもとりあえず、落ち着いた?」
「あ、うん。もう、大丈夫だよユーノ君」
 漸く、ここにきて落ち着いたなのはさん。
 流石になのはさんをどうやったら落ち着かせるかを解っているユーノは大したものだと思う。
「ごめんね、悠翔君。私、ちょっといけなかったよね?」
「いや、そんなことはないと思う」
 そう、別段なのはさんは悪くない。
 俺がこの場に居合わせたのも殆ど偶然に近いからだ。
 先に俺がこの場で小太刀を振るっていたに過ぎない。
「だから、なのはさんは気にしなくても良い」
「うん、ありがとう。悠翔君」
 俺が別に怒っていないと言うことを確認したなのはさんは少しだけ安心した表情。
 人によってはああ言った行為を見せつけられると気まずいと言うのはあるだろうし。
 幸い、俺はそう言ったことを気にするようなタイプでは無かった。
「あ、そういえば……悠翔君はユーノ君と何をしてたの?」
 なのはさんがここで思いだしたかのように俺に尋ねる。
 そういえば、なのはさんは何故、俺がユーノと一緒にいたのかは説明していない。
 ユーノとこう言った遣り取りは先日もあったが……なのはさんには伝えていない。
 とは言っても隠しだてしても仕方が無いしな……。
 俺は少し考えて、なのはさんに簡単な説明を始めた。
















「ええ〜っ!? 悠翔君、そんなことしたの!?」
 一通りの説明をし終えた後、なのはさんが驚いたように声をあげる。
 とは言ってもそんなことって言われてもな……。
「いや、ユーノからの要望なんだけど」
「そうなの?」
「うん、僕から悠翔に頼んだんだ」
「え……? 大丈夫だったの? ユーノ君」
 ユーノが自分から頼んだと聞いて心配そうな表情をするなのはさん。
 俺が今まで、なのはさんの前で見せた立ち合いで一度も手加減をしていないと言うのが要因の一つだろう。
 元々、俺自身が手を抜けるだけの技量がないというのもあるけどな……。
 シグナムが相手の時だって俺とシグナムの実力差は大きな差は無かったと思う。
 寧ろ、シグナムの方が上手だ。
 俺が勝っている点は唯、一点のみ。
 それだけでしか無かった。
 なのはさんはそう言った相手との立ち合いしか見ていないからそう見えているんだと思う。
 最も、ユーノはユーノで手加減が出来るような相手では無いのだが――――。
 基礎乃参法で挑んだとはいえ、ユーノは普通に障壁だけでそれを凌いだ。
 多少、腕が痺れたくらいだが、衝撃に関しては対して徹さなかったと言える。
「うん、少し腕が痺れたくらいかな。大したことないよ」
「そうなんだ、良かった……」
 ユーノが大したことないと答えるとなのはさんも漸く、安心したような表情をする。
 とりあえず、俺はこう言ったことに関しては信用されていないらしい。
 別にこう言ったことは信用されて無くても良いけど……。
 面と向かって言われると苦笑するしかない。
 俺が危ない人間だと思われているのと同義だからだ。
「――――っ!?」
 俺が自分のことに苦笑していると一瞬だけ、空気が底冷えするような感覚が走る。
 なんだ……今の感じは?
 何かが、誰かが近付いているのか?
 いや……違う。
 誰かが視線を送っているに過ぎない。
 しかける気配は感じられない。
 俺は底冷えするような感覚が走った方向に向かって殺気を飛ばす。
 だが……次の瞬間にはその気配はまったく無くなっていたのだった。



































 From FIN  2008/12/23



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