「……悠翔君は私達とは全く異なるような考え方をしているみたいね」
「義母さん……」
「多分、悠翔君は私達とは全く違う。もしかしたら、なのはさんのお兄さんや士郎さんも含めて考え方が違うかもしれないわね」
「……うん」
 悠翔のことを聞いた義母さんが自分の考えを私に伝える。
 義母さんの言うとおり、悠翔は私達とは全く違う。
 恭也さんも士郎さんも私達とは全く違うってことも本当だと思う。
 だけど、義母さんに悠翔のことをこう言われると少しだけ悲しくなる。
 義母さんにも私が好きになった人のことをもっと良く見て欲しい……のに。
 今の義母さんの言い方からすると、悠翔のことはあまり、良い印象を持っていないみたいで……。
 それは、本当に残念だと思う。
 悠翔の方も義母さん達には良い印象を持っていないみたいだから……同じなのかもしれないけど。
 今はこれ以上、義母さんと悠翔のことを話しても駄目かもしれない。
 義母さんは悠翔の考えを肯定はしないみたいだし……。
 それに、魔導殺しのこともあって悠翔達を疑っている部分もあるみたいで。
 だけど……悠翔がこのことを知ったらどう思うんだろう……?
 きっと、嫌だ……よね?






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 あれから、義母さんとの話は一段落して私はお風呂に入っている。
 今日も色々な事があったから少しだけ疲れたかも。
 悠翔のことをどう思っているのかをアリサにはっきりさせてもらって……。
 すずかに後押しをしてもらって……。
 昼からはファリンさんとの立ち合いを見て……。
 悠翔の診察について行って……。
 それから、悠翔と話をして……。
 その時の私は……悠翔の腕に抱き付いたり、甘えたりして……。
 ここまで、思いだして私ははっとする。
 いくら自分の気持ちがはっきりしたからと言って、悠翔には大胆なことをしすぎたかもしれない。
 抱きついたりしたってことはえっと……胸を押しつけたりしてたわけで。
 自分の胸元を見ながらそう考える。
 別に自分に自信がないってわけじゃない。
 すずかには負けるけど……アリサやはやてには勝っていると思う。
 なのはは……まぁ、うん。
 ちょっと、ああなんだけど……。
 自分で言うのもなんだけど、私はそんなには小さくないと思う。
 だから、悠翔も別に不満だったりってことは……。
 ……ってなんかそれも違う気がする。
 私が悠翔にしたことで大事なのはそんなことじゃなくて……。
 でも、そういったことをしちゃったのはやっぱり、私が自覚しちゃったわけで……もう、何がなんだか。
 何時の間にか悠翔のことで一杯になってしまってる。
 それだけ、私が悠翔のことを気にしてるってことなのかもしれない。
 だけど……そんな私は嫌いじゃなくて。
 寧ろ、悠翔のことはもっと考えたくて。
 自覚してからはそういった気持ちが溢れそうで。
 もう、止まれないところまできている感じがする。
 そう言えば、悠翔はあれからどうしてるのかな……?
 私は今も悠翔のことばかり考えてるけど……。
 悠翔もそうだったら、嬉しいかな……。
















 フェイトと別れてから、俺は高町家の部屋に戻った。
 既に士郎さんと桃子さんは戻ってきているらしい。
 俺がフェイトを送った時くらいで時間的には閉店の時間だったから、ちょうど良かった感じだろう。
 それに、なのはさん達も帰ってくるまでそんなに時間はかからないと思う。
 恭也さんの方はまぁ、色々とあるだろうから戻ってこない可能性もあるのだが……。
 今日も色々と、あったけれど楽しかった。
 朝はなのはさんと模擬戦を、午後からはファリンとの戦闘。
 ファリンとの戦闘には負けてしまったが、久しぶりに良いものが見れた。
 俺も今の自分が出来る手段の殆どは遣ったからな。
 それでも、ファリンには届かなかったのは残念だが、概ね満足出来るものだったと言える。
 またしても、左腕を痛めてしまったが、これは自分の過失だ。
 フィリス先生にもちゃんと診察して貰ったから調子もそこまで悪くなってはいない。
 最も、今日はもう剣を振ることは出来ないのだが――――。
 俺が今の時間を持て余しているのもそのためだ。
 とりあえず、自分の道具を一式、取り出して中身の確認と手入れをするくらいしかやることがない。

 飛針……問題なし。
 唯、そろそろ、少しくらいは補充しておいた方が良いかもしれない。

 鋼糸……問題なし。
 自分で太さなどは選んでいるのだが、今のところは補充も必要なさそうだ。

 小刀……問題なし。
 いまのところ小刀は遣っていないため手持ちの数には問題はない。

 小太刀……問題あり。
 シグナムに引き続き、なのはさん、ファリンとも相手にしたせいか痛みが随分と酷くなっている。
 小太刀の状態は随分と悪化してしまっていると言えた。
 多少の刃毀れ自体は砥石を遣って直したが、小太刀の受けたダメージまでは直せない。
 下手をすればそろそろ、折れても可笑しくはないかもしれない。
 予備の小太刀は持ち合わせていないため、士郎さんに借りることも考えた方が良いかもな。

 一通り自分の道具の確認と、手入れをし終えた俺は片付けを始める。
 時間的にもそろそろ、夕食の時間だし桃子さんが俺を呼びに来るかもしれない。
 案の定、人の気配が近づいてくる。
 さて、そろそろ行くとするか――――。
















 桃子さんに夕飯に呼ばれ、御同伴させて貰う。
 とは言っても、それは何時ものことなのだが。
 俺がダイニングルームへ入ると、既になのはさん達が戻ってきていた。
 今回はユーノも一緒らしい。
 恭也さんの姿が無いことを見ると……最早、何も言うまい。
 忍さんのところなんだろう。
 そんなことを考えながら、とりあえず席につく。
「悠翔」
「なんでしょうか、士郎さん」
「また、左腕を痛めたみたいだな」
「……もう、知っているんですか」
 今日の今日なのに士郎さんには俺の左腕のことが伝わっている。
 多分、なのはさんがバラしたんだろうな。
 なのはさんの方にちらっと視線を送る。
「にゃはは……」
 俺の視線に気付いたなのはさんは苦笑する。
 ユーノも俺の反応が予想どおりだったのか、苦笑いしている。
 まぁ、士郎さんに腕のことを伝えたのは別に間違いじゃ無いから怒ったりはしないが。
 寧ろ、俺のことを気遣ってくれてのことだから俺が起こる理由は存在しない。
「なのはさん達から聞いているとは思いますが……今日は月村家で立ち合いをし、腕を痛めています」
「ふむ……原因は奥義の遣い過ぎと聞いているが」
「概ね、その通りです」
「……と言うことは、遣った奥義は、雷徹が主だったんだろう。後は、射抜・追に薙旋……全部の手を遣ったんじゃないか?」
 様子を確認しただけで、俺が全ての奥義を遣ったことを看破する士郎さん。
 やはり、長い戦歴を持つ御神の剣士というのは伊達じゃ無い。
「はい、全部士郎さんの言う通りです。それでも立ち合いの方には負けてしまいましたが」
「……そうか。流石に忍ちゃんのところのは強いな。悠翔の場合はすずかちゃんの方を相手にしたんだろうが」
 既に前情報があるのか、ファリンとノエルさんの実力のことも士郎さんは知っている様子だ。
 もしかしたら、一度くらいはファリンとノエルさんの相手をしたことがあるのかもしれない。
「最近、悠翔は腕を痛めることが多いみたいだが……流石に相手が悪いか?」
「そうかもしれませんね」
 士郎さんの相手が悪いという言葉に苦笑する。
 最近、俺が戦った相手は手加減出来ない人ばかり。
 シグナムもなのはさんもファリンも……全員が右腕一本で対処出来るような相手じゃない。
 普通の相手であれば確かに右手一本でも相手には出来るだろう。
 しかし、最近の相手は全員、そう言った予断は許されない。
 奥義の撃ち過ぎと言うのは相手の都合も大きいとはいえなくもない。
 これは俺の力量不足故のことだからあまり、強くも言えないが……。
 なんにせよ、今回の士郎さんが言っていることは正にその通りだった。
 今日のことを踏まえて、俺はもっと自らを磨いていかなければならない。
 まだまだ、修行が足りないな――――。



































 From FIN  2008/12/10



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