「実は、管理局もなのはさん達と出会う事件の以前から地球も管理世界の一つに認定しようと考えていたの。ある物の保護を名目にね。だけど……」
「だけど……?」
「その、魔導殺しの人に妨害されたの。派遣した魔導師は全滅」
「全滅……!?」
「それも……AAAランクやSランク……更にはオーバーSランクの魔導師を派遣しても魔導殺しの前には無意味だったわ。しかも生存者は……ゼロ」
「そんな……」
「話によれば魔導殺しと呼ばれた人は1人の男性だったって聞いているの。他にも仲間がいるかは知らないけれど」
 そう言って少し考え込む仕草をする義母さん。
「でも……その魔導殺しと悠翔になんの関係が?」
「ええ、魔導殺しのあった時期からすると悠翔君が関係あるとは思えないわ。唯、魔導殺しは私達、魔導師ではとても理解出来ない方法で戦っていたって聞いてるから」
「魔導師ではとても理解出来ない方法……」
 そう聞くと私もぞくっ……とする。
 悠翔の遣っている剣術もとても理解出来ないものだけど……。
 魔導殺しと悠翔との関係性は無いってことだから安心した。
 だけど……この世界でそんな事件があっただなんて……私には信じられなかった。
 まさか、そこまで大きな事件だったなんて……。
 多分、今では殆ど知られていないのはこう言った管理外世界での出来事だったからなんじゃないかって思う。
 でも、どうして……魔導殺しはそんなことを……?






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「唯、解っていることもあるの。魔導殺しの目的はあくまで此方を殲滅することだけ。要するに……私達を干渉させたくなかっただけみたいなの」
 疑問を浮かべている私に義母さんは更に説明を続けていく。
「多分……魔導殺しから見れば管理局は自分の世界を侵す、唯の侵略者にしか見えなかったのでしょうね」
「え……?」
「いきなり現れて管理とか保護とか言われても認められないでしょうし……」
「っ……」
 あまりにも痛烈な義母さんの言葉。
 管理局が侵略者……?
 まさか、そんな見方をされていただなんて。
「魔導殺しのとった行動自体は私達から見れば、信じられないもの。でも、あちらの視点からすれば守るための行動だったのかもしれない」
「義母さん……」
 でも、それは義母さんの言うとおりかもしれない。
 この世界の人達からすれば管理局の行為は侵略者に見られる可能性もある。
「でも、ここまで遣ったというのは流石に大き過ぎた。管理局はすぐさま事実を隠し、この世界を管理世界にすることを諦めたわ」
 こうやって聞いてみると、管理局がこれだけ、海鳴で事件があったのに管理世界に認定しようとしない理由が改めて解った気がする。
 魔導殺しなんてい言う事件があったから……。
 それに、この世界は魔力を持っている人が少ないというのも理由の一つだけど……この世界は別の方向で発達している。
 そう、ユーノの立てた仮説のとおり……剣術などと言ったものが魔力の代わりに発達しているってこと。
 それが、今の話で完全に立証された気がする。
 魔導殺しがこの世界の人だって言うのなら、間違いなく剣術などを極めている人の可能性が高いと思う。
「そして、高ランクの魔導師が減ってしまった要因の一つでもあるの。派遣された魔導師が全員が魔導殺しに……殲滅させられたから」
「え……と言うことは?」
「その通りよ。闇の書の事件には及ばないけど、派遣された名のある高ランク魔導師は魔導殺しに全員、斬られているわ」
「そんな……」
 まさか、そこまでとは思わなかった。
 高ランクの魔導師が減ってしまった要因の一つとして、その魔導殺しが少し影響しているなんて……。
 だとしたら、その魔導殺しはどれだけの実力者なんだろう。
 でも、今は魔導殺しなんて話は全く聞かない。
 いったい、どうして……?
















「でも、今のこの世界ではそんな心配はないの。魔導殺しはもう、いないから」
 私の感じた疑問にすぐさま、応える義母さん。
「え、いないって……どういうこと?」
「ええ、魔導殺しはもう、既に亡くなっているから」
「そう……だったんだ」
 義母さんの答えで漸く、私達が魔導殺しの話を全く聞かなかったのかが理解出来た。
 既に魔導殺しは存在しない人……。
 それに、この事件自体、管理局にとっては機密にしておかなければならない事件。
 どのくらい昔なのかは解らないけど……今の私達には関係のない頃の話だったのかもしれない。
 でなければ、これだけの大きな事件を皆が知らないなんてありえないから。
「こういったことを言うのは人としてどうかと思うけれど……魔導殺しが亡くなっているのは良いことだと思うの」
「え……?」
「だって、フェイトやクロノも危険にあわずにすむから……。母親として言わせて貰うと、これに越したことはないと思うわ」
「……義母さん」
 何か複雑な表情で私に魔導殺しが亡くなっていることを良い意味で捉えている義母さん。
 今の発言も、私達のことを考えてくれたからこその発言で。
 本当に万が一を心配してくれていたんだと思う。
「魔導殺しはもういないから安心だけど……少し気になることがあるの」
「気になること?」
「ええ。悠翔君やなのはさんのお兄さんの遣っている剣術のことでね」
 そう言って少しだけ考える義母さん。
 何かが気になる……と言いたいような感じの様子。
「唯、悠翔君となのはさんのお兄さんの遣った剣術……本当に凄いわ。本当に信じられないくらい」
 気になることがあるといっても、義母さんもやっぱり、悠翔と恭也さんの剣術は本当に凄いと感じているみたい。
「特になのはさんのお兄さんが凄いの。計測出来なかった部分があるから解らないけど……少なくとも、総合Sランクには達するわ」
「ええっ!?」
 いや、恭也さんが凄く強いのは解ってたけど……まさか、魔力無しで総合Sランクに達するだなんて吃驚する。
 しかも、その評価は計測出来なかった部分があった上での評価で……。
「でも、この結果もあまり、詳しくは計測出来ていないから正しく評価するなら……『Unkown』って言ったところかしら。因みに、悠翔君もUnkownに相当するわね」
「す、凄いんだね……」
 やっぱり、悠翔まで計測不能の値を出していたみたいで。
 凄いとは思ってたけど……とにかく、常識外れだと思う。
「唯、この計測結果は……魔導殺しも同じだったの。彼もまた、Unkownだったから」
「魔導殺しも……?」
「ええ、そうよ。そして、総合もSランクにまで達するほどの実力者だったみたい」
「そう……なんだ」
 魔導殺しも総合でSランクに達するほどの実力者……。
 だけど、計測不能の部分が多かったから事実上はUnkown……。
 でも、悠翔達と魔導殺しに関係性があるとは考えられない。
 唯、私も何故か魔導殺しのことを気にしておかないといけない。
 何故かは解らなかったけど……義母さんの話を聞いて私はそう感じた。
















「さて、と……魔導殺しの話はこのくらいにしましょうか。本当はこうやって話したりするのも禁止されてるから」
「あ、うん。ごめんなさい、色々と話を聞いちゃって」 
 そう言えば、魔導殺しのことは公には出来ないんだった……。
 思わず、詳しい話を求めてしまったことに少し反省。
「ふふっ、でもフェイトがそこまで考えるようになったのは嬉しいわ。成長したってことですもの」
「か、義母さんっ……!」
 いきなりで慌ててしまったけど、義母さんの言葉は嬉しい。
 義母さんほど人に褒められるなんて……ちょっと恥ずかしい。
 私だって執務官になったんだから、色々と考えないといけないんだし。
 そう考えたら、私もまだまだのような気もする。
「それで、気になってたけど……悠翔君ってどんな子かしら? フェイトが言うには強くて優しくて……って言ったところみたいだけど」
「えっと……悠翔は今、義母さんが言ったとおりの人なんだけど……他にも何か色々としっかりした人だよ」
「ふ〜ん……具体的には?」
「具体的にって言われても……」
 義母さんから具体的にと尋ねられて少し考え込む私。
 悠翔がどういった意味でしっかりしてるかってことだけど……。
「うん、悠翔は……覚悟が出来ている人だよ。それも、私達よりもずっと……」
「成る程……覚悟、ね」
「うん、そうだよ。それに、悠翔は自分の遣っていることに対してしっかりとした意志を持ってる」
 そう、悠翔は自分で遣っていることに対してしっかりとした覚悟を持っている。
「……剣士として人を斬ることも躊躇わないって」
「……そう」
 悠翔の持っている覚悟に義母さんは何か思うところがあるみたい。
 多分、魔導師としての義母さんには悠翔の覚悟が信じられない部分もあるのかもしれない。
 私だって、初めて聞いた時には解らなかったけど……。
 シグナムとのやりとりや、ファリンさんとのことを見ていればそれは嘘じゃないとはっきり思う。
 悠翔は人を斬ることに全く、躊躇いを持っていなかった。
「……悠翔君は私達とは全く異なるような考え方をしているみたいね」
「義母さん……」
「多分、悠翔君は私達とは全く違う。もしかしたら、なのはさんのお兄さんや士郎さんも含めて考え方が違うかもしれないわね」
「……うん」
 悠翔のことを聞いた義母さんが自分の考えを私に伝える。
 義母さんの言うとおり、悠翔は私達とは全く違う。
 恭也さんも士郎さんも私達とは全く違うってことも本当だと思う。
 だけど、義母さんに悠翔のことをこう言われると少しだけ悲しくなる。
 義母さんにも私が好きになった人のことをもっと良く見て欲しい……のに。
 今の義母さんの言い方からすると、悠翔のことはあまり、良い印象を持っていないみたいで……。
 それは、本当に残念だと思う。
 悠翔の方も義母さん達には良い印象を持っていないみたいだから……同じなのかもしれないけど。
 今はこれ以上、義母さんと悠翔のことを話しても駄目かもしれない。
 義母さんは悠翔の考えを肯定はしないみたいだし……。
 それに、魔導殺しのこともあって悠翔達を疑っている部分もあるみたいで。
 だけど……悠翔がこのことを知ったらどう思うんだろう……?
 きっと、嫌だ……よね?



































 From FIN  2008/12/8



 前へ  次へ  戻る