なんか海鳴に来てからは女性に対して負けっぱなしな気がする。
 アリサにすずかに忍さんに桃子さんに……そして、フェイトにも。
 アリサやすずかに関しては同じような理由。
 忍さんや桃子さんの場合は大人の貫録か。
 そして、フェイトには……色々な意味で負けているような気がする。
 今回、フェイトがついて来ているのも彼女に負けた感じがある。
「だったら、良いよね?」
 俺の返答に満足したフェイトはそっと俺の腕を握る。
 そして、そのままフェイトは俺の腕を自分の腕に絡めた。
 アリサやすずかがいなくなっても積極的な行動は変わらないらしい。
 別に嫌ということはあり得ないが……問題は別にあったりする。

 問題は……俺の理性が持つかどうか――――

 理由としては、なんだか情けない話かもしれない。
 しかし、フェイトは美少女であり、スタイルも良い。
 意識しない方が無理だと言える。
 はっきり言って、これはどうしようもない。
 後の運命は俺の理性にかかっている――――。
 なんとなくだが、そんな気がした。






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 とりあえず、自己暗示をするかのように耐えながら、病院へと向かう。
 フェイトの方は俺が我慢しているのを知ってか知らずかにこにこしながら俺と腕を絡めている。
(ぐ……確かに可愛いが)
 これではある意味、拷問である。
 フェイトが美少女なだけそれは尚更だと言える。
(……我慢だ)
 ここでフェイトを振り払うのは簡単だが、それではフェイトの悲しそうな表情をみることになってしまう。
 恐らく、フェイトは俺に拒否されたとでも思うだろう。
 それは流石に望ましくない。
 かと言って受け入れるのも問題か。
 別に俺とフェイトは恭也さんと忍さんのような関係ではない。
 普通に言えば、友人と言うのがしっくりとくるのだろうか。
 フェイトの方もそう思っているはずだ。
 だが、今日のフェイトは何処か可笑しい。
 アリサとの会話が大きく影響しているのは間違いないだろうが……それにしては可笑しい気もする。
 フェイトはここまで積極的な性格はしていない……と思う。
 とは言っても俺にはフェイトの心を読み取ることは出来ないため、それがどうかは解らない。
 実は案外、積極的な性格だということも十二分にありえる。
「悠翔?」
 俺が考えごとをしているのを知ってか知らずかフェイトは首を傾げながら俺の顔を覗き込んでくる。
(……やっぱり、積極的だ)
 しかし、冷静になって考えて見るとなんとなくフェイトの頬も紅く染まっている。
 もしかしたら、本当は恥ずかしいのかもしれない。
 でも、積極的にしているのはアリサに何かを吹き込まれたからか。
 ここは、正直に尋ねることにする。
「いや、フェイトがこんなに積極的だったなんて、と思ったんだ」
「ふぇっ……」
 フェイトの顔がぼんっと音がしそうなほどに真っ赤に染まる。
 ……成る程、やっぱり誰かに吹き込まれたからか。
















「いや、フェイトがこんなに積極的だったなんて、と思ったんだ」
「ふぇっ……」
 悠翔からの言葉にぼっと頬が熱くなる。
 まるで、沸騰してしまいそうな感じ。
 確かに悠翔の言ったとおり、私は積極的と言うわけじゃない。
 アリサ達に積極的にするようにって言われたのあるけど……。
 悠翔に対して、こう言った態度をとっているのはそれだけが原因じゃなくて。
 ううん、私が悠翔にこうやっているのはどうしたら良いのか解らないから。
 普通にしてるだけじゃ悠翔は気付いてくれないだろうし……。
「え、えっと……その……」
 でも、悠翔になんて言ったら良いのかは解らなくて。
 こう言ったことを素直に言うのは恥ずかしいし……。
 気持ちがはっきりしたとはいえ、悠翔に直接伝えるのは考えてしまう。
 まだ、悠翔に気持ちを伝えるのは早過ぎる気がして。
 でも、悠翔に何も伝えないのも駄目で。
 何も伝えなかったら気持ちなんて伝わらない。
 このまま、伝えなかったら……私も気持ちが納まらない。
 だから……溢れそうな気持ちをほんの少しだけ悠翔に伝えようと思う。
 なんて言ったら解らないけど……ほんの少しだけ。
「私……悠翔のこと、……だから。どうしたら良いのか解らないの」
「フェイト……?」
 少し、声が小さくなってしまったけど、悠翔に言葉を伝える。
 私の心にあるほんの少しの気持ち。
 まだ、はっきりと伝えるには恥ずかしい気持ち。
 悠翔には上手く聞こえなかったみたいだけど……今はこれで良い。
 私も、本当はどうすれば良いのかなんて解らないから。
 でも、悠翔が好きだと言う気持ちは嘘じゃないから。
「だから、今はまだ……こうさせて」
 私の今はまだ、言えない気持ちが伝わるように悠翔の腕をきゅっと抱きしめる。
















 フェイトが再度、腕に抱きついてくる。
 とりあえず、なんとなくフェイトの意図は理解出来た。
 アリサから言われていたことはあくまで切欠に過ぎない。
 と言うことは……フェイトは解らないなりに正直にやってるってことだ。
 ……フェイトが俺のことを好きだと言うこと。
 ここまで来れば幾らなんでも俺でも解る。
 唯の自惚れと言うわけではなかった……と言うことだ。
 だが……どうすれば良いのか。
 俺もフェイトのことは……好きだと言える。
 なのはさんともはやてともアリサともすずかとも違う。
 それもはっきりと言うことが出来る。
 だから、フェイトのことを拒むという理由はない。
 それにフェイトは……俺の本性を聞いている。
 それなのに、フェイトは俺に対する態度を変えることはなかった。
 俺はそれだけでも、俺はフェイトを意識せざるをえない。
 魔法のことを抜きにしてもフェイトは他の娘とは何処か違う。
 それだけはなんとなく、感じていることだった。
「……フェイト、このままで行こう」
「えっ!?」
 フェイトが俺の反応に驚く。
 先程、俺の理性が持たないと言ったのが大きいのだろう。
 フェイト自身も俺が拒んだら止めようと思っていたに違いない。
「良いの……?」
 フェイトが俺の言葉を確認するように尋ねる。
 少し不安そうにしているが、フェイトの眼差しは嬉しそうに俺を見つめている。
「……ああ。別に良い。それに……俺もフェイトがこうしてくれるのは嬉しいから」
「悠翔……!」
 俺の言葉が嬉しかったのかフェイトが嬉しそうな表情をする。
 見惚れてしまうようなフェイトの笑顔……。
 俺は唯、その表情に見惚れてしまう。
 理由は解らないが、フェイトを見ていると俺の違う部分が訴えてくるような気がする。
 この娘の笑顔を奪っては駄目だ――――。
 俺の心がそう訴えてくる――――。
 確証はない……だが――――。
 間違いなく、俺は……フェイトに――――。



































 From FIN  2008/11/23



 前へ  次へ  戻る