しかし、病院に行くのも躊躇われる。
 既に病院に関してはフィリス先生に御世話になってしまっている。
 しかも、今回の件で病院に行くとしても、左腕の傷であり、刀傷だ。
 無理はしないようにと念を押されたのに左腕を行使してしまっている。
 恐らく、”仕置き”が待っているだろう。
 それを考えただけでもぞっとする。
 しかし、選択肢としては魔法に頼るという選択を選ばない以上、病院に行くしかない。
 最早、俺にはその選択しか残されていなかった。
「じゃあ……念のため、病院に行くことにする」
「そうやな。それが良いと思うで? フェイトちゃんも随分と心配してるみたいやしな」
 俺の結論に頷きながらフェイトの方を見つめるはやて。
「は、はやてっ!?」
 それに対して、はやての言葉に顔を真っ赤にして声を上げるフェイト。
 まぁ……随分と心配してくれてたというのは正直に嬉しい。
 しかし……逆に迷惑をかけてしまったというのは申し訳ない気もした。
 だが……フェイトのこういった態度がとても可愛らしく見える。
 今のフェイトの様子を見てこう思うのは……不謹慎なんだろうか?






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 はやて達にひやかされながらも俺はその場を後にする。
 しかし、何故かフェイトもそのまま俺に着いてくるつもりらしい。
 全く、俺の腕を離そうとはしない。
「……フェイト、このまま俺に着いてくるつもりか?」
 とりあえず、溜息をつきながら尋ねてみる。
 別に着いてくるなとは一言も言うつもりは無い。
 しかし、この体勢と言うのは色々と不味い。
 フェイトは俺の腕にしがみつくようにしている。
 まぁ、そこは譲ったとしても、問題は別にある。
 フェイトは正直に言ってしまえば、スタイルがかなり良い。
 なのはさんよりもはやてよりもアリサよりもだ。
 フェイトよりもスタイルが良いと言えるのはすずかくらいだろうか。
 そんなフェイトにしがみつかれていると言うのは色々と善からぬモノが圧しつけられてしまう。
 なんというか……腕に柔らかい感触が……。
「ふぇ……駄目、かな?」
 俺が内心どう思っているのか気付いていないのかフェイトは小首を傾げながら上目遣いで俺を見つめる。
 上目遣いで俺のことを見つめてくるのは可愛らしいが……このままでは俺の理性の方も危ない。
 それも色々な意味で。
「いや……駄目じゃないけど……俺の方がもたない」
「え……あ……ご、ごめんなさい」
 俺の言葉で漸く、どういった状況か気付いたフェイトは慌てて謝ってくる。
 申し訳なさそうにしている表情も可愛らしい……。
 少しだけフェイトの様子に見惚れてしまう。
 些細なことなのにこうまで気になるということは、いつの間にか俺の方もフェイトの魅せる表情に何かしら惹かれているのかもしれない。
 だが、今はまだ、それが形にはなってはいない。
 唯、フェイトの好意が素直に嬉しく想う。
 まだ、俺にも理解は出来ないが……これが人を想うということなのだろうか……。
















 フェイトを連れだって病院に行く前に恭也さんと忍さんのところへ行く。
 今から病院に行くにしても勝手に家の主人である忍さんに黙っているのは余りにも失礼だ。
 流石に挨拶はしてからいかないといけない。
「悠翔……ファリンと一戦やったんだな」
 フェイトと一緒に来た俺の様子を見た恭也さんが話しかけてくる。
「……ええ。今回もファリンには勝てませんでした」
「だが……今の悠翔なら、それなりには戦えたんじゃないか?」
「まぁ、そうですね。恭也さんのアドバイスの御蔭です」
「成る程……薙旋、か」
「はい」
 恭也さんの薙旋と言う言葉に頷く。
 恭也さんと言うとおり、薙旋は奥義の中で、最も多様な遣い方の出来る奥義。
 元は、射抜と雷徹を主力にしていた俺だが、恭也さんのアドバイスを得てからは薙旋も主力に組み込むようになった。
 現に薙旋はシグナムの時もファリンの時も大きく戦術に関わっている。
 高速の4連続の斬り……。
 たかが、4回と考える人もいるだろうが、されど4回だとも言える……。
 それこそが、薙旋の恐ろしいところでもある。
  この間に考えられる動作は数え切れないほどある。
 それも、他の奥義を混ぜると言うかたちを含めて。
 それが薙旋の特徴であり、薙旋の強さの一つでもある。
「恐らく、今回の使用法は薙旋の間に射抜か雷徹を混ぜると言った感じだったのだろうが……ファリンにそれは通じたのか?」
「ええ、一応は」
「……ふむ、そう言う返事だと言うことは、決定打には至らなかったか」
「……はい」
 恭也さんの言うとおり、今回遣った薙旋は決定打にまではならなかった。
 完全にファリンの技量で抑え込まれてしまった感がある。
「……まだまだ、その辺りは課題だな。悠翔も剣の腕を磨くしか無いだろう」
「……そうですね」
 それは今回で尚更、実感出来たことだ。
 もっと技量を上げないといけない。
 ……これは、元々からの俺の課題でもある。
 今回のことも踏まえて、剣の訓練に一層励む……。
 俺が遣るべきことはきっと、そうだと思う。
















 恭也さんと話をした後、忍さんに挨拶をして月村邸を後にする。
 忍さんは送ってくれると言っていたが、流石にそれは気が引けた。
 折角の恭也さんとの時間を俺の都合で潰すわけにもいかない。
 多少、時間はかかるが病院の時間に間に合わないなんてこともないだろう。
 唯、フェイトが俺についてくる理由はいま一つ理解出来なかったが……。
「フェイト、俺についてきても良かったのか?」
 念を押すようにフェイトに尋ねる。
「うん。なのは達も快く送り出してくれたし。それとも……悠翔は私と一緒は……嫌かな?」
「……そんなことはない」
 別にフェイトがついてくると言うのが都合の悪いことではない。
 寧ろ、ついてきてくれると言うのは有り難い。
 困ることと言えば……これから俺があんな目にあうことになるくらいだろう。
 それをフェイトに見られるのは少し、情けない気がする。
 でも、まぁ……それも自業自得だから仕方がないのかもしれない。
 なんか海鳴に来てからは女性に対して負けっぱなしな気がする。
 アリサにすずかに忍さんに桃子さんに……そして、フェイトにも。
 アリサやすずかに関しては同じような理由。
 忍さんや桃子さんの場合は大人の貫録か。
 そして、フェイトには……色々な意味で負けているような気がする。
 今回、フェイトがついて来ているのも彼女に負けた感じがある。
「だったら、良いよね?」
 俺の返答に満足したフェイトはそっと俺の腕を握る。
 そして、そのままフェイトは俺の腕を自分の腕に絡めた。
 アリサやすずかがいなくなっても積極的な行動は変わらないらしい。
 別に嫌ということはあり得ないが……問題は別にあったりする。

 問題は……俺の理性が持つかどうか――――

 理由としては、なんだか情けない話かもしれない。
 しかし、フェイトは美少女であり、スタイルも良い。
 意識しない方が無理だと言える。
 はっきり言って、これはどうしようもない。
 後の運命は俺の理性にかかっている――――。
 なんとなくだが、そんな気がした。



































 From FIN  2008/11/19



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