「確かにユーノの言うとおりだ。そして、推察も間違っていない」
そう、ユーノの発言はまさに確信をついているものだと言える。
「俺が立ち合うというのは本当だ。多分、相手を聞いたら意外に思うかもしれないけど」
「意外な相手……? フェイトやはやてのことかい?」
「いや、違う。確かにフェイトやはやてともやってみたいとは思うが……」
ユーノも意外な相手と言うのが気になっているらしい。
とりあえず、フェイトとはやての名前をあげているが、それは全く見当違いだ。
「今回は、魔法とは一切、関係ない立ち合いだからな」
「魔法とは関係ないって……もしかして、ノエルさんとか?」
ここまで言って漸く、近い答えをだすユーノ。
流石にすずかの家に来てまで恭也さんとは立ち合わない。
それも解っているんだろう。
だが、その答えも少しはずれている。
ノエルさんを予想出来たのまでは流石だが……少し詰めが甘い。
「いや、ノエルさんでもない」
「じゃあ……いったい、誰なんだい? 恭也さんは違うと思うし」
最早、誰が相手なのかは解らないと言った表情でユーノが尋ねる。
ここで勿体ぶってもしょうがない。
別段、隠すことでも無いので伝えることにするか。
しかし、ユーノにとってはあまりにも意外すぎる名前になるだろうな――――。
魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
「俺が立ち合う相手は――――ファリンだ」
「え?」
俺が今回、立ち合う相手を伝えると何やら呆けた顔になるユーノ。
多分、意外すぎた名前だったからだろう。
ユーノも普段のファリンのことを知っているからこういった反応になってしまったのではないだろうか。
普段のファリンはドジなイメージしかないような感じだからな……。
はっきり言って戦闘の時のファリンとの差は歴然としている。
逆に普段のファリンよりも戦闘時のファリンを見てきた俺からすれば、ファリンの怖さは身に沁みて解っている。
戦闘に関してであれば、ノエルさんを凌ぐかもしれない。
ファリンはそれだけの実力者だった。
まぁ、他にもファリンの戦闘力が高いことに理由はあるが……そこは、言わない方が良いだろう。
余計な詮索をされるわけにもいかないしな。
「まさか、本当にファリンさんと……?」
「……本当だ」
疑問そうに尋ねてくるユーノに俺は頷く。
ファリンとのことは約束していたことでもある。
俺から拒否をするわけにもいかない。
それに……俺自身、今の状態でどこまでファリンと遣れるかも気になった。
ファリンは普通のレベルでは収まらない。
普通に考えてみても魔導師よりも強いだろう。
それも、能力の制限をしているという状態にも関わらずだ。
今の俺も、多少の制限がある。
条件としては同じようなものだ。
後は実際に立ち合ってみるしかない。
……唯、それだけだ。
「……そろそろ、来たみたいだな」
ユーノと軽く言葉を交えて、暫くするとファリンの気配が近づいてくる。
他の人の気配も感じることから察するに、隠し通すことは出来ないらしい。
もしかしたら、すずか自らが以前にこういったことも含めて話をしていたのかもしれない。
恭也さんと忍さんに関しては言わずもがなだ。
ノエルさんも当然だと言っても良いのだけど。
「悠翔さん」
「……解ってる。別に隠そうとも思ってなかったし。既になのはさん達に俺のことは伝えてある」
ファリンにはこう言ったが、俺自身のことはまだ、なのはさんに伝えていない部分もある。
伝えてないとはいっても、夏織さん絡みや、警防隊絡みのことではあるが。
今の段階では特に支障はないだろう。
「悠翔君、本気でファリンさんと立ち合うんか?」
どうしても、俺のことが気になったのかはやてが半信半疑で尋ねてくる。
「……ああ、本気だ」
「でも……ファリンさんは別に剣士とかそう言ったのとは違うやろ?」
「そうだな」
確かにはやての言うとおりだ。
ファリンは確かに剣士とかとは違う。
当然、霊力を持っている人間でもなければ、HGSでもないし、魔導師でもない。
普通の物差しで測れば剣士である俺と立ち合うなんて無茶も良いところだ。
だが、はやて達は一つ失念している。
普通なら何の心得も無い人が剣士と立ち合うのは不可能だと言っても良い。
しかし、ファリンはそう言ったものでは測れないだけの実力者だ。
俺から言うことは出来ないが……ファリンは普通とは違うのだから。
「悠翔さん、準備の方は宜しいのですか?」
「……ああ。俺の方は既に準備出来ている」
ファリンが確認のために尋ねてくるが、此方の準備の方は既に問題ない。
小太刀の方も暗器の方もどちらも共に準備は完了している。
身体の方の慣らしも先程、軽く運動したのでちょうど良いくらいになっている。
後はファリンの方の準備が済めば良いと言ったところか。
「私の方も準備は完了しています」
ファリンの方を確認すると、両腕に装備されている二刀の剣。
所謂、ブレードと呼ばれるものを既に装着していた。
これはノエルさんとも共通の武器であり、俺にとっても、恭也さんにとっても見慣れた武器だと言える。
しかし、俺の小太刀に比べると間合いも広く、ファリンはブレードに頼り切ったような立ち回りをすることはない。
そう言った意味では既に俺の方が不利だと言えた。
だが、そう言ったことは関係ない。
ファリンの方が得物が良いとは言え、此方は速度の点で上回っている。
元々の身体能力などで言ってしまえば、ファリンの方が上だ。
それでも、此方には神速がある分で、総合的には速度で上回っている。
最も、神速を遣ったとしてもファリンを振り切れる保証なんてないのだが――――。
「……なんか、ファリンさんも偉いもん持ってきたなぁ。あんなん振り回して……本当にファリンさんは大丈夫なん?」
俺が考えを纏めている隣ではやてが驚いた表情で呟く。
はやての反応も普段のファリンのことしか知らなければ当然の反応だ。
あんなブレードなんてものを振り回したら怪我をするだけにしか見えないだろう。
「……大丈夫だ。それは俺が保証する」
いや、俺なんかが保証しなくてもファリンの実力を考えれば大丈夫だ。
一応は納得してくれたのかはやても俺の答えに頷いてくれる。
とは言っても実際のファリンを見てみないと完全には納得出来ないか。
とりあえず、俺ははやてを制して、ファリンと向き合う。
ファリンもブレードを装着したことで、気持ちの切り換えが終わっているのか気配が変わっている。
戦闘時の独特の気配――――それがファリンから漂っている。
それも、普通の人の気配ではない。
すずかがなのはさん達に伝えているかまでは知らないが……ファリンは普通の人とは違う。
ファリンは――――自動人形なのだから。
From FIN 2008/10/8
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