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フェイトの行動がいま一つ理解出来ない。
解っていることは別にフェイトが俺のことを嫌っているとかいうわけじゃないことくらいか。
だからこそ、邪険に扱うことなんて出来ない。
かと言ってフェイトからの行為を拒否して、しょんぼりとさせるのもあんまりだ。
そういったことから俺はフェイトの行為にはなるべく応じるようにしている。
まぁ……俺からフェイトにそういったことをすることもあるのだけど。
そう考えて、俺が苦笑すると不意にファリンと目が合う。
ファリンは俺に対して何か言いたそうにしている。
(悠翔さん、後で宜しいでしょうか?)
多分、ファリンは目でこんなことを言っている。
(……ああ。別に構わない)
ファリンに伝わるかは解らないが、俺も意思表示をする。
その証拠にファリンにだけ見えるように小太刀を軽く掲げて見せる。
それを見たファリンも頷いて応じてくれる。
幸い、他の皆も今の俺とファリンのやりとりについては気付いていない。
これで、昼からは準備運動をしなくてはいけないことが確実になった。
ファリンと手合せをするのはどのくらいぶりだろうか。
今のところ、俺がファリンに勝った試しは無い。
しかも、今の俺は以前とは違って利き腕に障害を抱えている。
俺自身の力量はある程度、上がったとは思うが……ファリンが相手では厳しいだろう。
利き腕に制限があるというのはかなり不利だと言える。
だが、俺も利き腕を悪くして以来、戦術の組み立てや戦い方に磨きをかけてきた。
以前よりも不自由なのは否めないが――――やるだけだ。
魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
昼食が終わり、俺はすずかに許可を取って庭に来ている。
すずかには俺が何をしたいのかは既に承知だったらしい。
快く、庭を使う許可をくれた。
まずは、意識を集中し、感覚を研ぎ澄ます。
こうやって意識を集中するというのも大事な要素の一つだ。
(……人の気配)
意識を集中していると不意に人の気配を感じる。
誰かが来たのだろう。
気配から察すると……すずかの家に来た時には感じなかった気配。
と言うことは先程、来たばかりだろう。
「……ユーノ、だな」
自分の近くに来た気配に声をかける。
「うん。良く解ったね」
「……ああ。こう言ったら悪いが、このくらいなら猫でも解るぞ」
猫でも解る……というのは言いすぎかもしれないが、これは別に嘘を言っているわけじゃない。
このくらいの気配が解らなければ、戦闘で生き延びるなんて夢のまた夢だと言えるからだ。
「そっか……。僕達にはこう言った気配での読み取り方なんて全く解らないからね」
「それはそうかもしれないが……魔導師には魔導師の読み取り方くらいはあるだろう」
「確かに悠翔の言うとおりなんだけどね。実際には探査魔法とかもあるし。でも、君みたいに特別な力を遣わずにっていうのは流石に無理だ」
「……逆を言えば、俺は一切、特別な力を遣えないけどな」
「……それは確かにそうかも」
俺の返答に苦笑するユーノ。
俺が何を言いたいのか理解したらしい。
俺に魔力が無いのは明らかだし、魔法が遣える可能性も絶対に無い。
一応、剣気とか霊力と言ったものはあるが、それはあくまで特別な力と言うよりは、剣士として持ち合わせているものでしか無い。
まぁ……特別な力がなくても遣りようは幾らでもあるから気にするほどでも無いんだけどな。
「そういえば、少し気になったんだが……ユーノ達の方に剣士はいないのか?」
ユーノとの会話でなんとなく気になっていたことがあるので質問をしてみる。
魔導師と騎士については話で聞いていたから解らなくはない。
だが、剣士の話題は聞いてはいなかった。
「剣士……? いや、そういった人はいないけど」
「……そうか」
ユーノの反応からして剣士がいないのは予想どおりだったが、やはり……それはそれで残念だ。
やはり、魔導師の存在する世界と此方のように魔法の存在そのものがない世界とでは大きく違うと言うことだろうか。
「でも、僕からみたら君達の方が凄い。君達のような剣士がいるのは魔法が無いからこそだと僕は思うし」
「魔法が無いからと言うのは……?」
「……僕達の世界は昔から魔法があるから、これが発展していった。でも、この世界には魔法というものは存在しない」
俺の疑問に答えていくユーノ。
流石に俺と同い年にして、既に学者でもあるだけはある。
魔法についても客観的に見つめているのは凄いと思う。
「でも、魔法が無いからこそ、発展したものがある。それが悠翔のような剣士だとかがそれに当たると思うんだ」
「……成る程」
魔法が無いからこそ剣士が存在する――――。
確かに考えてみればそうなのかもしれない。
この世界には気や霊力といったものなどはあるが、魔法の存在は無い。
魔法に近いと言えば……HGSだろうが、これは違うと思う。
魔法などが無いから……剣士のようなものが存在している。
そう言った意味ではユーノの見解も正しいと考えられる。
つくづく、ユーノには驚かさられる。
まさか、そう言った考え方もあるとは――――。
ユーノからの考えを聞いた俺は簡単に装備の確認をする。
此方に来る前にも装備の確認についてはしているが、念のため見ておくというのは大事だ。
俺の装備を興味津々にユーノが覗きこんでくる。
「本当にこういったものだけで戦ってるんだね? この世界には拳銃などと言った質量兵器があるっていうのに」
「……そうだな。確かに今のこの世界には拳銃などがある、だが……こういった小太刀などで何も出来ないというわけじゃ無い」
「それは、君の動きとかを見たから納得できるよ。恭也さんも凄かったし」
「とは言っても……こう言ったことが出来るのは俺達だけじゃないけど、な」
素直に驚くユーノに苦笑しながら言う。
魔法や質量兵器に生身一つで対抗する……。
それは普通に考えれば在り得ないことのはずなんだと思う。
だが、御神流はそれが出来る術だし、他にもそう言ったことが出来る流派も存在する。
それに……啓吾さんとかだと普通に流派とかと関係なく、対抗出来たりする。
こういった術は多分、魔導師のいる世界では存在していないのだろう。
そう考えてみればユーノの反応は扱く、当然のことだと言える。
「まぁ、今回でそれがまた、解ると思う」
今回もまた、俺は御神の剣士として立ち合うことになっている。
相手は……ファリンだ。
もしかしたら、ファリンの秘密は皆には伝わっていないのかもしれない。
俺が午後からファリンと立ち合うと言ったら、すずかは少しだけ驚いた表情をしたが、すぐに承知してくれた。
ファリンの場合はノエルさんと違って普段がああだから……立ち合うということは難しいように見えるのかもしれないが……。
だが、そういったイメージがあるとしても油断するわけにはいかない。
なんと言っても俺は――――。
ファリンと立ち合って勝った例はないのだから――――。
From FIN 2008/9/28
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