既に開き直ったような返事のなのはさん達。
 もう、誰もフェイトを止めようとは思っていないらしい。
 寧ろ、温かく見守ろうとしているのか。
 そんな中、なのはさんの携帯が鳴る。
 電話がきたのか、メールがきたのかは解らない。
 とは言っても……相手はなのさんの表情で予想出来る。
 恐らくは、ユーノからなんだろう。
 明らかに嬉しそうな表情のなのはさんを見ているとそれ以外の人を予想することは難しい。
 しかし、ユーノが来てもこの状況は変わらなさそうだ。
 いや……ユーノにこう言った場合はどうするべきかを聞ける可能性が出てきただけ良いかもしれない。
 ここは、ユーノとまともな会話を出来ることに期待しておきたい。
 だが、ユーノが来たとしてもなのはさんといちゃつくだけだと言う可能性も否定出来ない。
 別に今の状態が嫌かと聞かれれば……別に嫌と言うわけじゃない。
 フェイトの嬉しそうな表情を見ていると俺の方も嬉しくなる。
 問題なのは……皆の目の前で堂々と、こう言った行為をしていることにある。
 嫌じゃないとは言っても、これとそれとは別問題な気もしなくもない気がする。
 誰もこの状況を止めようと考えている人はいない。
 まぁ……俺もその中の人に入ってしまっているのが可笑しい状況なのだが。
 これって……四面楚歌って言っても良いのだろうか?






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「あの……皆さん。お昼の準備が出来ましたけど……」
「あ、うん。解ったよ」
 俺にとっての四面楚歌の状態を見かねたのか、部屋の方に入ってきたファリンが声をかけてくれる。
 時間を見ると確かに昼に入ろうとしている。
 頃合いとしてもちょうど良いくらいだろう。
 正しく、妙な空気の状態のままでいた俺にとっては救いの声だった。
「……助かった。ファリン」
「いえ、お気になさらず。でも……随分と仲が宜しいんですね?」
「そう、見えるか?」
「はい」
 ファリンにまで俺とフェイトのことを言われてしまう。
 そこまで仲良く見えているのか……。
 そう考えるとどう言ったら良いものか悩んでしまう。
 仲が悪いということは無いと思う。
 かと言って皆が考えているような関係では無いと思う。
 もしかしたら、フェイトはそういった関係になることを望んでいるのかもしれない。
「ファリンから見てもそうなら、多分……そうなのかもしれない」
「ふふっ……そうかもしれませんね」
 ファリンも俺が何を言いたいのかなんとなく理解しているらしく、笑顔で頷く。
「……悠翔」
 ファリンと話をしていると、フェイトが俺の服の袖を軽く引っ張る。
 多分、ファリンとばかり話しているのを不満に思ったんだろう。
 少しだけむっとした表情をしている。
 むっとしたままの表情もフェイトも可愛らしいのだが……。
 このまま、放っておくのもどうかと思うしな。
 とりあえず、もう一度、フェイトの頭を軽く撫でる。
 フェイトは少し、頬を赤く染めて、笑顔になる。
 ……やはり、フェイトはそういった表情の方が良い。
















 ファリンさんと仲良くする悠翔につい、むっとしてしまう私。
 仲が良いというのは解っているけどそれでも、もっと私の方に目を向けていて欲しいと思う。
 気持ちがはっきりした途端にこういった行動をとるなんて私自身も驚いている。
 こんなに私はやきもちを焼くような性格だったのか。
 こんなに大胆なことをするような性格だったのか。
 少なくとも、今までの私では考えられないようなことだったと思う。
 でも、悠翔は嫌そうな表情をせず、私に応じてくれる。
 それどころか悠翔は私の頭を優しく撫でてくれて……。
 私も嬉しくなってしまう。
 何時の間にか悠翔のことばかり見ている私がいる。
 ここにはなのはやはやてやアリサもすずかもいるのに。
 皆に悪い気がするけど、どうしても悠翔の方を見てしまう。
 なんと言えば良いかは解らないけど……。
 なのはがユーノに対してやっていることと同じようなものかもしれない。
 私はそんなことを考えながら、悠翔の後についていく。
 ファリンさんがお昼の準備が出来たと言っていたから今からなんだと思う。
 御馳走になってしまうのは悪い気もするけれど……元々からすずかがこういう予定で組んでいたみたいで。
 皆でお昼を食べるのって楽しいから良いと思う。
 でも、今日の場合は何時もと違って悠翔も一緒で。
 それがなんとなく嬉しかった。
 だから……悠翔がファリンさんと何か目配せをしたことは全く気付かなかった。
















 昼ということでファリンに連れられて昼食を取るための部屋へと向かう。
 しかし、普通に案内がないと無理だというのには驚かされる。
 まぁ、広い屋敷なのだからそれもしょうがないのだろうが。
 ファリンについていく俺にぴったりと寄り添うようにフェイトがついてくる。
 別に俺も嫌とかいうわけじゃない。
 ただ……ここまで来ると羞恥心とかも関係ないような気がしてくる。
 はやてとすずかとアリサはフェイトを微笑ましそうに見ているし。
 なのはさんは……ユーノから連絡があったということで、既に別の方向へと意識が向いている。
 とりあえず、俺は溜息をつく。
 フェイトの行動がいま一つ理解出来ない。
 解っていることは別にフェイトが俺のことを嫌っているとかいうわけじゃないことくらいか。
 だからこそ、邪険に扱うことなんて出来ない。
 かと言ってフェイトからの行為を拒否して、しょんぼりとさせるのもあんまりだ。
 そういったことから俺はフェイトの行為にはなるべく応じるようにしている。
 まぁ……俺からフェイトにそういったことをすることもあるのだけど。
 そう考えて、俺が苦笑すると不意にファリンと目が合う。
 ファリンは俺に対して何か言いたそうにしている。
(悠翔さん、後で宜しいでしょうか?)
 多分、ファリンは目でこんなことを言っている。
(……ああ。別に構わない)
 ファリンに伝わるかは解らないが、俺も意思表示をする。
 その証拠にファリンにだけ見えるように小太刀を軽く掲げて見せる。
 それを見たファリンも頷いて応じてくれる。
 幸い、他の皆も今の俺とファリンのやりとりについては気付いていない。
 これで、昼からは準備運動をしなくてはいけないことが確実になった。
 ファリンと手合せをするのはどのくらいぶりだろうか。
 今のところ、俺がファリンに勝った試しは無い。
 しかも、今の俺は以前とは違って利き腕に障害を抱えている。
 俺自身の力量はある程度、上がったとは思うが……ファリンが相手では厳しいだろう。
 利き腕に制限があるというのはかなり不利だと言える。
 だが、俺も利き腕を悪くして以来、戦術の組み立てや戦い方に磨きをかけてきた。
 以前よりも不自由なのは否めないが――――やるだけだ。



































 From FIN  2008/9/25



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