フェイトからなんとなく、良い香りがする。
 これが女の子特有の何かと言うやつなのかもしれない。
(……俺は一体、何を考えている)
 一瞬、過ぎった考えを振り切って俺はすずかとファリンの様子を見つめる。
 このまま、フェイトをこの距離で見つめると不味い気がする。
「悠翔は……さっきからどうして、ファリンさんのことばかり見つめているの?」
 すると、フェイトが俺を見つめながら疑問を尋ねる。
「あ、いや……ちょっと、な」
 とりあえず、俺は尋ねられたことをはぐらかそうとするが……。
「私には言えないこと……?」
 フェイトは更に俺に尋ねてくる。
 まさか、フェイトがここまで積極的に俺のことを聞いてくるとは思わなかった。
 つい、少し前までは言いにくいことだったら尋ねてくることは無かった。
 しかし、今のフェイトはその疑問までも聞きたそうにしている。
(俺がファリンと話している間に何かあったのか?)
 そう言った考えが頭の中を過ぎる。
 先程、アリサと会話していた内容は聞いたら不味いと思ったから聞かなかったが……。
 それが大きく影響している可能性は高い。
 なんとなく、フェイトの視線がはっきりと熱を持ったのもつい、先程からだ。
 しかし……それが一体、何故なのかは俺には全く解らない。
 もしかして、アリサとの会話の中でフェイトの心境に何かしらの変化でもあったのだろうか……?






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「私には言えないこと……?」
 私は悠翔の顔を覗き込みながら少しだけ積極的に動いてみる。
 少し、大胆かもしれないけど……悠翔は鈍いからこのくらいはやっても良いと思う。
 私と目が合った悠翔が少しだけ頬を紅くして目を反らす。
 流石にこういう風にやってみると悠翔も意識しているみたい。
 少しだけ慌てているような気もする。
「……いや、ファリンを見ていたのは彼女が俺に何か言いたそうだったからだ」
 ばつが悪そうな表情をしながら悠翔が口を開く。
「ファリンさんが?」
「……ああ。多分、そのことに関してで今、ファリンはすずかに許可をとっているんだろうと思う」
 そう言ってもう一度、ファリンさんの様子を見る悠翔。
「そうなんだ……でも、それだけなの?」
 その様子を見て、私は少しだけ不安に思って、悠翔に尋ねる。
 悠翔は少しだけ考えるような仕草をしたけど……すぐに口を開く。
「……それだけだ。フェイトが考えているような関係じゃない」
「悠翔……」
 私がなんとなく考えていたことに悠翔は気付いていたみたい。
 ファリンさんと悠翔って凄く、仲が良さそうだったから。
 それに、ファリンさんも私と会う前の悠翔のことを知っているみたいだし……。
 やっぱり、気になってしまう。
 でも、悠翔が違うって言っているなら違うんだと思う。
 悠翔はこういったことで嘘をつくような人じゃないと思うし……ね。
















 俺は内心、驚いていた。
 何故、フェイトの言葉にこう答えたのだろうかと。
 別にファリンとの関係はとりたてて騒ぐような関係ではない。
 普通に答えれば良かったはずだ。
 だが、俺はフェイトが考えているような関係じゃない……と答えた。
 どうして、こう言う答えで応じたのだろうか。
 フェイトが少しだけ不安そうな様子を見せたからだろうか?
 それを見た俺がフェイトを安心させようと思ったのは間違いないと思う。
 殆ど、何も考えずにファリンとの関係を伝えてしまった。
「……すまない。不安に思わせてしまって」
「ううん、悠翔は悪くないよ。私が自分勝手だから……」
 そう言って俯くフェイト。
 心なしか頬がうっすらと紅く染まっている。
 フェイトが何故、不安に思ったのかは解らない。
 もしかしたら、俺とファリンの会話にやきもちを妬いてくれたのかもしれない。
(いや……そういうことはありえないか?)
 俺はもう一度、フェイトの様子を見つめる。
 フェイトも此方を見つめ、目線を合わせる。
 少しだけ、御互いに見つめあって……フェイトがまたしても顔を紅くして視線を反らす。
(俺はいったい、何をしたんだ? 別にフェイトに何かをしたわけじゃないが……)
 確かに今のフェイトは少しだけ変だ。
 別に俺が何かしたというわけじゃない。
 しいて言えば、フェイトをじっと見つめてみたくらいだ。
 なのにフェイトは頬を紅く染めて反応した。
 フェイトが俺に好意を持ってくれているのはなんとなくだが、解っている。
 しかし、先程からのフェイトの反応はそれが異常なほどに積極的になっている。

 もしかして……フェイトは……?
 いや、そんなことは無いだろうと思う
 しかし……フェイトの様子を見ている限りはそうは思えない
 もしかしたら……少しくらいは自惚れても良いのだろうか?
















 フェイトを安心させるかのように軽く頭を撫でてみる。
 すると、フェイトは少しだけ照れくさそうにしながらも、とても嬉しそうな表情をする。
 最早……フェイトは、なのはさんもはやてもアリサもすずかも見つめていると言うことは忘れているらしい。
 俺の方しか見ていないような状態だ。
「……とりあえず、このままで良いのか?」
 なんとなく空気が気不味いのでなのはさん達に尋ねてみる。
「うん。良いんじゃないかな?」
「私も、別に気にせえへんよ?」
「なんで、私に聞くのよ。好きにしたら良いじゃない」
「フェイトちゃんは嬉しそうだし……このままでいいと思うよ?」
 既に開き直ったような返事のなのはさん達。
 もう、誰もフェイトを止めようとは思っていないらしい。
 寧ろ、温かく見守ろうとしているのか。
 そんな中、なのはさんの携帯が鳴る。
 電話がきたのか、メールがきたのかは解らない。
 とは言っても……相手はなのさんの表情で予想出来る。
 恐らくは、ユーノからなんだろう。
 明らかに嬉しそうな表情のなのはさんを見ているとそれ以外の人を予想することは難しい。
 しかし、ユーノが来てもこの状況は変わらなさそうだ。
 いや……ユーノにこう言った場合はどうするべきかを聞ける可能性が出てきただけ良いかもしれない。
 ここは、ユーノとまともな会話を出来ることに期待しておきたい。
 だが、ユーノが来たとしてもなのはさんといちゃつくだけだと言う可能性も否定出来ない。
 別に今の状態が嫌かと聞かれれば……別に嫌と言うわけじゃない。
 フェイトの嬉しそうな表情を見ていると俺の方も嬉しくなる。
 問題なのは……皆の目の前で堂々と、こう言った行為をしていることにある。
 嫌じゃないとは言っても、これとそれとは別問題な気もしなくもない気がする。
 誰もこの状況を止めようと考えている人はいない。
 まぁ……俺もその中の人に入ってしまっているのが可笑しい状況なのだが。
 これって……四面楚歌って言っても良いのだろうか?



































 From FIN  2008/9/23



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