すずかに連れられるように俺も皆のいる輪の中に入る。
 まぁ……どうみても場違いのような気もしなくも無いのだが。
 俺がそんなことを考えていると、すずかの部屋の外に人の気配がする。
 いや……正しくは人とは少し異なった気配か。
 ノエルさんはまだ、家事の方をしている。
 それにノエルさんは忍さんのお付きのはずだ。
 ということは……今日はまだ、一度もあっていないファリンだろう。
 やがて、その気配がゆっくりと部屋に近付き……扉を開ける。
「すずかお嬢様。お茶をお持ちしましたよ――――」
 そう言って、何故か俺と視線があった途端に固まるファリン。
 多分、驚いているんだろう。
「久しぶり……で良いのか?」
 とりあえず、固まったままのファリンに挨拶をする。
「え、え……?」
 まだ、俺がここにいることに理解が出来ないらしい。
 この様子からすると……もしかしたら、すずかも忍さんもファリンに俺も来ることを伝えていなかったのか?
 いや……彼女達の性格を考えればその可能性は高い。
 俺がそんなことを考えているということは露知らず、ファリンは固まったままだった。






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「ゆ、悠翔さん!? な、何故、ここにいらっしゃるんですか?」
 暫く、固まって漸く我に返るファリン。
 驚きながらも俺がここにいる理由を尋ねてくる。
「何故って……すずかに招待されたからいるんだけど」
「すずかお嬢様が?」
「ああ、間違いない。なんなら、尋ねてみても良いんだぞ?」
「いえ……良いです。なんとなく解りましたから」
 ちらっとすずかを見ながら溜息をつくファリン。
 すずかがファリンに俺のことを内緒にしていたのだろう。
 ファリンもここにきて漸く、すずかが何を隠していたのか合点がいったんじゃないかと思う。
「それにしても……悠翔さん。いきなり来るとは驚きました」
「ああ……正直に言うと俺も驚いている。まさか、この屋敷に招待されるなんて思ってもいなかったからな」
「と言うことは……悠翔様は別に何か目的でも?」
「……いや、目的と言っても大したものじゃない。それに……今のところはそういったことの予定も無いし、な」
「そうですか……」
 今のところは大した目的は無いと言える。
 恭也さんと士郎さんに会って御神不破流を見せて貰うという目的は既に果たされている。
 後は、このまま修行を続けつつ、左腕を治す目途を立てるくらいか。
 気になることと言えば、病院で見かけた謎の集団くらいだが――――。
 今の段階ではどうすることも出来ない。
 恐らく、あの集団のことも何かあるのであれば夏織さんが知っているはずだ。
 後は、それ以外にも魔法のこととかもあるが……その辺りに関しては結局、夏織さん待ちになるな。
 俺はこの先のことを考え、軽く思案する。
 何はともあれ、今は殆ど何もない……とりあえずはそうとしか言いようが無かった。
















「あの、悠翔さん。聞きたいことがあるのですが……左腕の方は?」
 俺と話を始めて何かを思いだしたかのように尋ねるファリン。
 ファリンも以前に俺が左腕を怪我した時のことを知っているからな……聞いてくるのは当然か。
 それに、ファリンとは全く、連絡をとっていない。
 疑問に思うのも無理はないだろう。
「左腕の方は……結局は治らなかった。今は随分とマシになっているが、遣い過ぎると痛みがはしる」
「そう……ですか」
 俺の左腕が治っていないということを聞いたファリンの表情が暗くなる。
 ファリンの表情が暗くなったのは理由がある。
 俺が左腕を怪我した時はファリン達もその場にいたからだ。
「……そんなに気にしないでも良い。この左腕に関しては自分でやったことだから、な。ファリンが気にする必要は無い」
「……解りました。ありがとう、ございます悠翔さん」
 ファリンも俺が腕を怪我した現場に居合わせた1人だが、ファリンに責任は全く無い。
 寧ろ、俺が自分でやったことであり、こういったことに関しては覚悟の上でやった。
 別に後悔するようなことでも無い。
 それに、俺が左腕を負傷したのも自分の力量不足もあったからな。
 自業自得だとも言える。
 とりあえず、俺は考えていたことを振り切る。
 このまま、考えを引きずったりしていると他の人にも気付かれてしまう。
 特にフェイトに気付かれると色々と、不味い。
 フェイトには色々と俺のことは伝えてあるが……また、こういった話をするのは気が引ける。
 こういった話をしても良い気持ちにはならないだろうからな。
 後は、事情を知っているすずかだが……彼女に関してもあまり引きずらない方が良い。
 すずかの方ももしかしたら、ファリンみたいに心配するかもしれないからだ。
 事情を知っているとは言え、あまりこういった話をしたいとは思わない。
 俺は思案するのを止めて、なのはさん達の方に混ざることにする。
 少し、居辛いが……仕方がないと思う。
 このままファリンと話しても追及されるだけだからな……。
















 私達からは離れてファリンさんと仲良さそうにお話をする悠翔。
 悠翔の様子からすると真剣な話をしているみたい。
「どうしたのよ、フェイト?」
 私が悠翔とファリンさんの方を見ていたのに気付いたアリサが尋ねてくる。
「あ、うん。少し、悠翔とファリンさんのお話が気になっちゃって」
「ふ〜ん……」
 アリサに悠翔とファリンさんのお話が気になると言うと何故か、ジト目で私のことを見つめられる。
「えっと……アリサ?」
「ううん、なんでもない。やっぱり、フェイトは悠翔のことが好きなんだって思っただけよ」
「え、ええっ……!? そ、そんなことっ……」
 アリサの直球な言葉。
 あまりにもストレートすぎるもの言いに私は動揺を隠せない。

 ゆ、悠翔のことが好きって――――
 確かに悠翔のことは嫌いじゃないし、色々とお世話かけちゃったし……
 それに時々、見せる真剣な表情に見とれたりするけど……

「……違うの?」
「え、えっと……」
 私の気持ちを確認するかのように見つめるアリサ。

 違うかどうかって聞かれると……
 うん、きっと……違わない
 アリサの言うとおりだとはっきりと思う
 こういった気持ちはまだ、私にはあまり解らないけれど
 悠翔のことが気になっている私がいて……
 剣を振るっている悠翔の姿に目が離せない私がいて……
 今は知らないうちに目で……ううん、心で悠翔の姿を追ってしまう
 それも、私が彼に惹かれているから――――

「うん、アリサの言うとおりだよ。私は……」
 だから、私はアリサに本当のことを伝える。

 今はまだ、この気持ちがどんなものかだなんて解らない……
 この気持ちが本当に本物なのかも解らない……
 だけど……この気持ちにはきっと……偽りもないと思う
 私は……悠翔のことが――――
















 好き――――です



































 From FIN  2008/9/18



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