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「ねぇ、悠翔。ファリンさんとはそんなに連絡を取っていなかったの?」
「……ああ。もう……数年は連絡を取っていない。確か……俺が左腕を怪我して以来だな」
「それは……流石に不味いんじゃ……ファリンさんも随分と心配してるよ?」
「……まぁ、事情も事情だから、な。なるようになるさ」
フェイトが心配そうに聞いてくるが、ここはなるようにしかならないと思う。
俺が左腕を怪我したのも自分の責任だし、ファリンに連絡を取っていないのも自分の責任だ。
確かに今まで、一切の連絡をとっていないというのは不味いとは思うが……。
これも、俺の身の上の都合が大きい。
怪我した直後のころは俺の左腕も絶望的だったからな……。
あの状態を伝えるのは正直、避けたかった。
「悠翔……」
俺が左腕を見ながら、考えていると、フェイトが心配そうな表情で顔を覗き込んでくる。
「あ……」
「何も心配しなくて良い。フェイトが考えてるようなことじゃないから」
「……うん」
とりあえず、フェイトを安心させるように軽く頭を撫でる。
今回のことに関しては俺に問題はあっても、そこまで大きな問題として関わってくるようなものとは違う。
しかし、フェイトに心配をかけるわけにもいかない。
フェイトが落ち着くまで、俺は彼女の頭を優しく撫で続けていた。
魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
「あ、いらっしゃ~い」
私が悠翔に頭を撫でて貰っていると、パタパタとすずかが出迎えに出てくる。
出迎えてくれたすずかは私と目があうとにっこりと微笑む。
あぅ……悠翔に頭を撫でられてるのを見られた……
すずかは微笑むだけで何も言わなかったけど、こう見られてしまうと恥ずかしい気がする。
まるで、私が悠翔に甘えているみたいで。
悠翔に甘えたりするのは嫌じゃないけど……。
それでも他の人に見られると恥ずかしい。
まるで、私が私じゃないみたいで……。
でも、最近はそんな私も良いんじゃないかって思ってて……。
もう一度、私と目があったすずかは口元に人差し指を当てる仕草をする。
私が悠翔に頭を撫でて貰ったことは黙っててくれるみたい。
幸い、はやてもアリサも私と悠翔のことには気付いていない。
恭也さんと忍さんは気付いていると思うけど、黙っていてくれている。
すずかの仕草に気付いた悠翔は苦笑しながら、私の頭を撫でるのを止める。
「あ……」
少しだけ残念に思った私はつい、短く溜息をもらしてしまう。
私の様子に気付いた悠翔が少しだけ困った表情をする。
別に悠翔に困った表情をさせたいわけじゃないのに……。
悠翔はそんな私の気持ちに気付いたのか、私の手をそっと握る。
私も悠翔の手をそっと握り返す。
みんなに気付かれないように、私と悠翔は御互いの手を握りあう。
恥ずかしくて、ドキドキしたけど……。
私の手を握ってくれた、悠翔の手は温かった。
すずかに案内されながら彼女の部屋へと向かう。
恭也さんは忍さんと一緒に忍さんの部屋の方へと向かったみたいだ。
ノエルさんは、また家事の方に戻っている。
すずかの案内で部屋へと到着する。
俺は初めてすずかの部屋に来たことになるのだが……第一印象は猫屋敷か。
部屋ははっきりと言ってしまえば、広過ぎなくらいだ。
はっきり言って、普通の家ではありえない。
そんな部屋の中に多種多様の猫がうろついている。
とりあえず、しつけはちゃんと出来ているらしく、特に目立った悪さなどはしていないのだが……。
「……とりあえず、ツッコミは入れるべきなんだろうか」
「え、私の部屋の何処かが、可笑しいの?」
素で自分の部屋の異常な状況に気付いていないすずか。
いや、別に個人の趣味なんだから俺がとやかく言う必要なんて無いのだが……。
それでも、ツッコミの一つや二つくらいはしたくなってしまう。
広い部屋に所狭しといる(ように見える)猫。
癒される光景ではあるのだが……これはなんとなく違うような気がしなくもない。
寧ろ、戦々恐々だ。
「悠翔……?」
中々、すずかの部屋に入ろうとしない俺を心配そうに見つめるフェイト。
その気持ちはありがたいが、とりあえず、俺なんかがこの部屋に入って良いのか考えてしまう。
「遠慮しなくても良いよ? 悠翔君」
すずかも俺を部屋に招こうとしている。
ここは遠慮するわけにもいかない……俺は意を決してすずかの部屋に入ることにした。
すずかの部屋に入った俺は早速、猫に絡まれる。
普通は猫ってここまで人に近付かないものだが……。
すずかの猫は良く、懐いている。
別にそれは悪いことじゃないが……もう少し、警戒心が欲しいと思う。
何匹か俺の近くに寄ってきた猫に試しに、殺気を放ってみる。
猫は一瞬、俺を威嚇するような構えをとる。
流石に、このくらいの殺気は解るか。
幾らなんでも殺気が解らないほどでは無いらしい。
「悠翔君、今……何かしたよね?」
「……ああ」
すずかは今の俺の殺気に気付いたらしい。
他の皆は気付いていないみたいだ。
「……一瞬だけ殺気を放ってみたんだ。少し気になったからな」
「もう……だからって猫に向けなくても良いと思うよ?」
「……ごめん、悪かった」
これは完全に俺の方が悪い。
なんの罪もないのに俺は猫に殺気をぶつけている。
殺気だけでも、人を威圧出来るくらいだ。
動物だったらもっと、敏感に俺の殺気を感じたことだろう。
まぁ……正しくは、”猫でも解る”だけの殺気を放ったということなんだが。
そう言った意味ではすずかを除く、4人は猫でも解る殺気でも気付かないということだと言える。
逆にすずかはそういった面でも普通の人よりも優れているということか。
「ううん、解ってくれてるなら別に良いよ」
俺が謝ったの聞いて、笑顔になるすずか。
そういう表情を見ていると俺の方も微笑ましく感じる。
すずかに連れられるように俺も皆のいる輪の中に入る。
まぁ……どうみても場違いのような気もしなくも無いのだが。
俺がそんなことを考えていると、すずかの部屋の外に人の気配がする。
いや……正しくは人とは少し異なった気配か。
ノエルさんはまだ、家事の方をしている。
それにノエルさんは忍さんのお付きのはずだ。
ということは……今日はまだ、一度もあっていないファリンだろう。
やがて、その気配がゆっくりと部屋に近付き……扉を開ける。
「すずかお嬢様。お茶をお持ちしましたよ――――」
そう言って、何故か俺と視線があった途端に固まるファリン。
多分、驚いているんだろう。
「久しぶり……で良いのか?」
とりあえず、固まったままのファリンに挨拶をする。
「え、え……?」
まだ、俺がここにいることに理解が出来ないらしい。
この様子からすると……もしかしたら、すずかも忍さんもファリンに俺も来ることを伝えていなかったのか?
いや……彼女達の性格を考えればその可能性は高い。
俺がそんなことを考えているということは露知らず、ファリンは固まったままだった。
From FIN 2008/9/16
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