「……来たか」
「……ええ」
 まだ、音もしていないのに気配を察知する悠翔と恭也さん。
 何度かこの光景は見てきたけど……何度見てもこれは全く、理解出来ない。
 私達の場合は探知魔法を遣わなければこういったことは解らないから。
 それにしても……悠翔達の場合だと流石に人離れしすぎている気がする。
 気配を察知しているとは言ってもまだ、姿も何も見えないし……。
 まだ、なのはの家の周囲にも来ていないはず。
 でも、悠翔と恭也さんは普通に察知している。
 う〜ん……何度考えてもどうやっているのか解らない。
 やっぱり、魔力がないからこそ出来ることなのかも?
 私が色々と考えていると、悠翔達の言うとおり、迎えが来たみたい。

 ……うん
 やっぱり、悠翔と恭也さんは人間離れしてる






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 忍さんの車とアリサのところの車で月村家まで送ってもらう。
 久しぶりにアリサの家の車を見たが……相変わらずだ。
 あれではやはり、善からぬ輩に狙われるのは無理もない気がしてならない。
 普通に離れて見ていても、良いところのお嬢様だということがバレバレだ。
 お嬢様というのは、人質にしてしまえば、身代金だとか言った形での利用価値がある。
 それに、暗殺という依頼を受けた人間が狙う可能性もある。
 多分、この車は装甲処理までされていないような気がする。
 流石に海鳴でそういった人間に狙われる可能性は低いというのもあるのだろうか。
 もうすこし、警戒心が強い方が個人的には良いと思う。
 何時、何処でそういったことに巻き込まれるかなんて解らないのだから。

 しかし……そういったことを考えるのはやはり、不謹慎か

 それに比べて、忍さんの車は……流石に通向けか。
 俺にはよく解らないが、色々と改造を施されているようにも見える。
 それも、想像出来ないような改造を。

 ……やっぱり、考えるのは止めよう

 俺はそれだけ考えて思案するのを止める。
 流石に聞くのも怖い。
 恐ろしい改造なんてされていたら、どうやってツッコミをすれば良いのかが解らなくなる。
 それに……忍さんの車に関しては気にした方が負けな気がする。
 とんでもない改造が潜んでいるという可能性が高いからだ。
 多分、聞いたら見せてくれるのだろうが……聞く方が恐ろしい。
 とりあえず、気にせずに送ってもらうしかない。
 まぁ……色々と改造を施されているなら安全性もあげているんだろうしな。
 万が一、狙われたりしても多少は大丈夫だろう。

 ……やっぱり、そういった考えは不謹慎か。
















 忍さん達に送って貰って月村家に到着する。
 俺は海鳴に来たのが初めてだということもあって、月村家に来たのも当然初めてだ。
 とりあえず、周りを見渡してみる。
 敷地は途方もないくらいに広い。
 普通に屋敷も大きいが、庭も広い。
 話によれば、周辺の森も敷地なんだとか。

 ……いったい、どれだけ広いんだ

 ここまで広いと溜息が出る。
 最早、普通のレベルじゃない。
 高町家でも道場があるだけあって広いと言えるのに、月村家はまさに別格だ。
 だが……これだけ広いと訓練も色々と出来そうだ。
 恭也さんが月村家に来ても訓練をしているという話を聞いた時は驚いたものだが……これなら納得出来る。
 これだけ、広いなら庭の何処かに迎撃システムもあるはずだ。
 そういったトラップに対処していくだけでも相当な訓練になる。
 しかも、庭の範囲が広い。
 普通に動き回るのにも充分過ぎるほど広さだ。
 ここなら、立ち合いをするのにも全く、問題はない。
 恭也さんがノエルさんと立ち合っているというのもこの庭の広さがあるからだろう。
「悠翔、そろそろ行こう?」
 暫く、月村家を見渡しているとフェイトに呼ばれる。
「……ああ。解った」
 頷いたのを確認したフェイトが俺の手を取って、先に進んでいるなのはさん達を追いかける。
 慌てなくても別になのはさん達が俺達を置いて行ってしまうってことは無いと思う。
 それでも、のんびりし過ぎると見失ってしまうのだが……。
 些細な行動だが、そういったフェイトの行動は嬉しい。
 態々、俺のことを気にしてくれていると言うことだから。
 フェイトの行動を微笑ましく見つめながら、俺はフェイトについて行った。
















「ただいま、ノエル」
「お帰りなさいませ、忍お嬢様」
 屋敷の玄関に辿り着くと早速、出迎えてくれるノエルさん。
「お久しぶりです、ノエルさん」
 俺も久しぶりと言うことで、すぐさまノエルさんに挨拶をする。
「お久しぶりです、悠翔様。悠翔様が来られるというのは忍お嬢様からも聞いておりましたが……」
「……ええ。いきなりの話かもしれませんが……お邪魔させて頂きます」
「はい、悠翔様。貴方が来られたのを聞けばきっとファリンも喜ぶでしょう」
 そう言えば……ノエルさんと会うのも久しぶりだが……ファリンと会うのも久しぶりになるんだな。
 ノエルさんやファリンとは左腕を怪我して以来、一度も連絡を取っていない。
 もう、音沙汰なしで何年も経過してしまっている。
 それに……怪我が大分、治った後も俺は海鳴には一度も来ていない。
 寧ろ、日本にはあまりいることが無かったと言っても良い。
 そう言った事情からファリンとあうのも随分と久しぶりだと言えた。
「ねぇ、悠翔。ファリンさんとはそんなに連絡を取っていなかったの?」
「……ああ。もう……数年は連絡を取っていない。確か……俺が左腕を怪我して以来だな」
「それは……流石に不味いんじゃ……ファリンさんも随分と心配してるよ?」
「……まぁ、事情も事情だから、な。なるようになるさ」
 フェイトが心配そうに聞いてくるが、ここはなるようにしかならないと思う。
 俺が左腕を怪我したのも自分の責任だし、ファリンに連絡を取っていないのも自分の責任だ。
 確かに今まで、一切の連絡をとっていないというのは不味いとは思うが……。
 これも、俺の身の上の都合が大きい。
 怪我した直後のころは俺の左腕も絶望的だったからな……。
 あの状態を伝えるのは正直、避けたかった。
「悠翔……」
 俺が左腕を見ながら、考えていると、フェイトが心配そうな表情で顔を覗き込んでくる。
「あ……」
「何も心配しなくて良い。フェイトが考えてるようなことじゃないから」
「……うん」
 とりあえず、フェイトを安心させるように軽く頭を撫でる。
 今回のことに関しては俺に問題はあっても、そこまで大きな問題として関わってくるようなものとは違う。
 しかし、フェイトに心配をかけるわけにもいかない。
 フェイトが落ち着くまで、俺は彼女の頭を優しく撫で続けていた。



































 From FIN  2008/9/14



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