「ファリンとはまぁ……すずかを一緒に護衛した仲だからな。普通の友人というのは少し違う気がするが」
 私の疑問が伝わったのか先に答えを言う悠翔。
「え……ファリンさんってすずかちゃんの護衛もしとるん?」
「ああ、してるな。まぁ……ノエルさんが忍さんの護衛を兼ねているのとそこまで変わらないんだが」
「ふ〜ん……そうなんや。なんか意外やな〜」
「そうか?」
「うん。なのはちゃんもフェイトちゃんもそう思うやろ?」
「そうだね。少し意外……かも」
「私もそう思う」
 はやてが意外に思うように私もなのはもファリンさんがすずかの護衛を兼ねているのは意外に思う。
 ノエルさんはしっかりしてるからなんとなくイメージがつくけど……。
 ファリンさんはどこかドジな部分が多いから……。
「確かに普段のファリンを見てるとそう思うだろうな。だが……そのことについては明日に解るかもしれないな」
「そうなん?」
「まぁ、まだ決まったわけじゃないから……なんとも言えないけどな」
 さっきもすずかがなのはに言ってたけど……このことに関しては明日になれば解るってこと?
 でも、ファリンさんのことを考えるといま一つ想像がつかない。
 う〜ん……これって失礼かも?






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 あれからは特に大きな出来事は何もなく、そのままお茶会をしてから解散と言う形に。
 そして、問題の日になった。
 俺は今日も日課である早朝の訓練をしている。
 今回は、シグナムと戦闘をした裏山の方を訓練場所に選んだ。
 昨日は殆ど左腕を遣っていないし、訓練もあまり多くやっていない。
 こういった場所まで来て訓練をするのはちょうど良いくらいだ。
 因みに今日の訓練は1人で来ているわけじゃない。
 いや、正しくはこの裏山で出会ったという感じか。
「……なのはさん」
「あれ、悠翔君? もしかして……悠翔君も訓練なの?」
「……ああ。なのはさんのその様子からすると……なのはさんも訓練だな?」
「うん、そうなんだよ。私も毎日ここでやってるんだよ」
「成る程……確かにここは場所も広いし、早朝なら人は殆ど来ないしな」
「うん。前まではユーノ君に見て貰ってたんだけど……今はユーノ君も色々と忙しくて」
「……確かに昨日はいなかったな。仕事でもしていたのか」
 俺の言葉に頷いて少しだけがっかりそうな表情をするなのはさん。
 普通にユーノの感じからして、仕事をしていたから昨日はいなかったと言ったところだろうな。
「そう言えば、今日はユーノは来るのか?」
「うん。来ると思うよ。少し遅れてくるかもしれないけど……」
 再度、俺がユーノのことを尋ねると今度は嬉しそうな表情で答える。
 ユーノが来てくれるというのがそれだけ嬉しいってことなんだろう。
 こうやって見ていると、色々と表情が変わるなのはさん。
 見ていて面白い人だと思う。
 こういったのは士郎さんよりも桃子さんに似ているという感じが強いからかもしれない。
 恭也さんを見ていればその違いがよく解る。

 ……なのはさんはそれだけ、御神のこととは離れているんだな

 なのはさんを見ていて、なんとなくだが……俺は、そう感じた。
















 とりあえず、なのはさんと軽く話をした俺は小太刀を抜き、構える。
 左腕の調子も確かめる必要はあるが、まずは一刀のみから。
 二刀差しを遣っている俺からすれば一刀のみで戦うことは多い。
 まぁ、利き腕の都合があるから二刀差しが適任だというのも大きいのだが。
 だが、今回は二刀を遣う時の左腕の調子を見ておきたいので十字差しの方を遣う。
 二刀差しよりも十字差しの方が小太刀を様々な用途で遣える。
 今回は多少、慣らしておきたいのもあるので十字差しの方にしておいた。
 実は……シグナムと戦った時は二刀差しの方を遣っていたからな。
 そろそろ、十字差しの方でも身体を慣らしておかないといけない。
 戦う相手によっても小太刀の差し方を変えるというのはとても重要なことだ。
 例えば、恭也さんの場合だと十字差しを基本としているが、様々な差し方を遣っている。
 確か、恭也さんの差し方は裏十字と呼ばれていたと思う。
 俺の場合も様々な差し方を遣うと言うのは同じようなものだ。
 基本的には二刀差しを遣うが……一刀よりも二刀で戦うことを基本とする場合は十字差しの方を用いることが多い。
 だが、今の俺は十字差しを遣うことはあまり無くなっている。
 普段は一刀を基本としているからだ。
 しかし、恭也さんのアドバイスを踏まえれば、薙旋の遣い方は多種多様だと言うこと。
 そう考えれば、御神流の差し方の中では一番、多くの状況に対応出来る十字差しは重要になってくる。
 その上で自分なりの差し方を考える必要がある。
 俺の腕の状態を考えれば、二刀差しと十字差しの中間くらいの差し方あたりが良いのかもしれない。
 そういった考えもあるため、十字差しも含めて立ち回りを考えようと思う。
 小太刀を十字差しにしているということは一刀でも二刀でも戦いやすい。
 抜刀も比較的しやすいため、一刀のみで戦っていても二刀に切り換えることはしやすいと言える。
 差し方の違いによる小太刀の遣い方も考えながら、俺は小太刀を振るう。
 小太刀を振るってみて思うところはもっと、色々と試してみないといけない。
 俺は意識を集中させ、小太刀を振るい続けた。
















 暫く、小太刀を振るい、俺は一息つく。
 集中していたため、あまり気にはならなかったが、暫く小太刀を振るうとなのはさんが興味津々な表情で俺の様子を見つめていた。
「ふぇ〜……」
「どうしたんだ? なのはさん」
 何やら感心した様子のなのはさん。
 俺は小太刀をゆっくりと仕舞いながら応じる。
「うん、悠翔君の振るっているのってお兄ちゃん達と同じ剣なんだよね?」
「ああ。そうなるな」
「シグナムさんと戦った時もそうだったけど、こうやって見ているとやっぱり違うなって思って……」
「そうだな……恭也さんと全然、違うのはやっぱり、悪い箇所が利き腕だからってことだと思う」
「えっと……悠翔君の場合は左腕なんだよね?」
「うん。そのとおりだ。俺は基本的に利き腕とは逆の腕で小太刀を遣う。唯、どうしてもバランスが悪くなってしまうんだ」
「そうなの? 私にはそうは見えなかったんだけど……」
 俺の返答に疑問そうな表情で首を傾げるなのはさん。
「……それなりに苦労はしたからな。ここまで遣えるようにするのに結構、無茶をした気がする」
「そ、そうなんだ……」
 無茶をした気がするという言葉を聞いたなのはさんが苦笑する。
 まぁ……ここは色々と考えたからな。
 どこまで、逆の腕を利き腕に近付けられるか。
 出来る限りのことはやったと思う。
 それでも……結局はここまでしか扱えるようにしかならなかった。
 流石に利き腕とは違う腕では勝手が違う。
 かと言って利き腕を遣うことはあまり出来ない。
 左腕を悪くして以来、遣い過ぎると痛みがはしるようになってしまった。
 だが、そのくらいは百も承知だ。
 逆の腕である右腕で出来ること……。
 今の利き腕で出来ること……。
 それを踏まえた上で、今の俺自身で出来ること……。
 唯、それを怠らずにやっていくだけなのだから。



































 From FIN  2008/9/4



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