「どうしたんだ、フェイト?」
「う、うん……実は、小太刀や暗器をどうやって隠しているのかなと思って」
「……ああ。そのことか。けど、フェイトも組織の人間なんだからなんとなく察しがついていないか?」
「う、うん……そうだけど」
 確かに悠翔の言うとおり、察しがついていないわけではないんだけど……。
 悠翔は小太刀などをどうやって仕舞っているのかと言ったことは教えたくないみたい。
 剣士は相手に手の内を知られることを嫌う……悠翔はそれを実践しているだけだと思う。
 特に悠翔は裏の剣を遣っているって言ってたから……尚更かな?
 普通に悠翔達のいう剣士の考え方からすると……手の内を隠すのは当然だと思うし……。
 でも……気になるものは気になるよね?






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 フェイトが色々と聞きたそうにしていたが、とりあえず誤魔化しておく。
 小太刀や暗器をどうやって隠しているかに関してはあまり言えるものじゃない。
 俺が今、着ている服は見た目では解らないが、特殊な構造になっている。
 暗器を隠すために特別な構造と方法でつくられた洋服とでも言えば良い。
 実際には恭也さんも士郎さんも俺と同じように特別な構造のものを着ている。
 表向きには当然、解らないが……流石にフェイトも組織の人間だから察しはついているのだろう。
 多少は驚いていたが、あまり気にした様子でも無い。
 気にしているのは多分……小太刀の仕舞い方だろうか。
 十字差しや背負いはまだ、隠す場所に関しては納得いくかもしれない。
 だが、二刀差しは昔の時代の侍と同じように差す。
 普通に考えてみれば隠すのは難しい。
 とは言ってもそれを隠すのも一つの技術と言っても良い。
 俺と士郎さんは二刀差しを遣っていながらも普通に隠しているからだ。
「さて……と、そろそろ戻ろうか。思ったよりも遅くなってしまっている」
「あ、うん」
 小太刀を仕舞い、暗器も全て隠してあることを確認した俺はフェイトを促す。
 道場に入った時はまだ、昼過ぎくらいだったが……既に夕方に近い時間になってしまっている。
 自分で思っている以上に小太刀を振ることに対して集中していたらしい。
 普段と違って一刀のみで黙々と小太刀をふるっていたのが大きかったのかもしれない。
 いや……考えごとをしながらだったからか。
 フェイトのこと、あの集団のこと……そして、俺の腕のこと……。
 小太刀を振るいながら、色々と考えていた。
 だが、明確なものは何も掴めていない。
 真相を追い求めるのかさえも俺はまだ、決めていなかった。
 既に終わったことをとやかく言っても何もならないことは理解しているからだ。
 とりあえず、俺は考えていたことを振りきり、遙を伴って道場を後にする。

 そう言えば……そろそろ、中学校も終わっている時間帯だな
















「思ったよりも長く剣を振るったみたいだな?」
 俺がフェイトを伴って翠屋に入ったと同時に士郎さんから声をかけられる。
 その様子からすると士郎さんには初めから気配を察知されていたらしい。
「……ええ。色々と思うところがありまして」
「ふむ……病院で何かあったのが大きいと言ったところか」
「……その通りです。士郎さんは俺が見た集団に何か心当たりはありませんか?」
 士郎さんは戻ってきた俺から事情を聞いているのもあって、俺がどういった意図で剣を振るっていたのか理解している。
 だからこそ、俺が剣を振るうと言ったのを止めなかった。
 そして、その士郎さんに俺は再度、尋ねる。
「いや、今更、俺達を追っているとは限らないが……俺達を追っているとするならば、龍が関わっている可能性はあるかもしれないな」
「龍が……?」
「……ああ。夏織から聞いているとは思うが……まだ、俺達を狙っている人間は多いからな」
「成る程……他には?」
「他は……そうだな。後は悠翔が海鳴に来たことが何処かの組織にばれているのかもしれないな」
「……もしかして、俺が以前に斬った人間の関わりでしょうか?」
「その通りだろうな。充分に可能性は考えられる。まぁ……なんにせよ、証拠がないとは言っても用心に越したことはない」
「そう……ですね」
 それは多分、士郎さんの言うとおりだろうと思う。
 確かに今のところでは証拠が全く無い。
 だが……用心に越したことは無いと言える。
 龍が未だに動いているのは本当だし、俺自身に恨みがある人間もいるかもしれない。
 だが……もしそうだとすれば、フェイト達を巻き込むわけにはいかない。
「どうしたの、悠翔?」
「いや、なんでも無い。……それより、戻ってきたのか。なのはさん」
 俺が考えごとをしていたら翠屋の外から人の気配がする。
 外の気配を探ったところ……人数は4人……間違い無くなのはさん達だ。
















「ただいま〜。悠翔君も病院から戻っていたんだね? 腕の方は大丈夫だった?」
 入ってきて俺の存在に気付いたなのはさんが、腕の心配をしてくる。
「大丈夫だった……とは言っても、フィリス先生からはえらい目にあわされたが……」
「にゃはは……」
 えらい目にあったと言う俺の言葉に何やら、苦笑するなのはさん。
 少し心当たりがあるのかもしれない。
「あれ……そのフェイトちゃん……?」
 フェイトに気付いたなのはさんが俺に尋ねる。
「ああ……フェイトは……」
「ごめん、なのは。悠翔のところに行ってたの」
 俺が紹介する前にフェイトが申し訳なさそうに頭を下げる。
「そっかぁ……悠翔君がそんなに心配だったんだね?」
「……な、なのはっ!」
 顔を真っ赤にして反論するフェイト。
 否定する様子が無いことを見ると……何やら本当のことらしい。
「ホンマやな。フェイトちゃんも悠翔君のことになるとこんなに大胆になれるやなんて」
「は、はやてまでっ……!」
 更にははやてにまでからかわれる始末。
 いや、なのはさんとはやての追及は解らなくもないが……それを本人の前でやるのはやめてほしい。
 流石にフェイトも困ってしまっている。
 しかし、フェイトが困っているにも関わらず、なのはさんとはやての追及は止まらない。
 挙句の果てにはアリサまで話に加わり始めた。
「悠翔君、止めないの?」
 とりあえず、苦笑するしか無い俺にすずかが尋ねてくる。
「……いや。流石にあの状態で止めるのは難しいだろ」
「そうだね」
 俺の返答に頷く、すずか。
 はっきり言ってこの状態になってしまったら俺には止められない。
 ……フェイトには申し訳ないけどな。
「あぅぅ……」
 暫く、見ているとフェイトは遂に顔を真っ赤にしたまま俯いてしまった。
 フェイトがそんなふうになるのは確かに解る。
 だが……その様子を見て、可愛いと思ってしまったのは不謹慎なのだろうか?



































 From FIN  2008/8/26



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