それだけ、小太刀の取り回しの方法と言うのも重要だと言える。
 とまぁ……随分と話がそれてしまったが、右手に一刀だけを持って俺は小太刀を振るう。
 今は唯、小太刀を一心に振るいたかった。
 先程の不可解な集団のこともある。
 だが、今はそんなことは関係ない。
 今は唯、フェイトに俺の小太刀を振るう姿を見て貰いたかった。
 俺はそのためだけに小太刀を振るう。
 フェイトは暫く、驚いた表情をしていたが、俺の小太刀を振るう意図を理解したのか、黙って俺の姿を見つめ続けてくれている。
 だが、フェイトに本来の俺の剣を見せることは出来ない。
 今は唯、それだけが申し訳なかった。






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 小太刀を振るう悠翔の姿を私はじっと見つめる。
 悠翔の小太刀遣い方は恭也さんとは全く違って……。
 そして、士郎さんの遣い方とも違う。
 一刀のみで振るう小太刀……。
 二刀流ではあまり、無い剣の遣い方。
 しかも、悠翔の小太刀の差し方は私も見たことがない。
 恭也さんが差していたやり方と全く違うというのは解るけど……。
 悠翔の小太刀の差し方については初めてみるもの。
 なんて言ったら解らないけど……昔の時代で言う侍に近いのかも?
 確か、シグナムがそう言った差し方について何かを言っていた気も。
 けど、この差し方では悠翔のような戦い方にはあまり向かないような気がする。
 理由とすれば……飛んだり、跳ねたりするのには向いていないと思えるから。
 悠翔の剣がどうかは解らないけど……多分、飛んだり跳ねたりすると言うことは前提にされているはずで。
 でも、悠翔の差し方はそう言った戦い方のものとは違うと思う。
 どちらかと言えば、一刀で戦うためのもの……または、連続で抜刀する時などの戦い方を用いる場合のものに見える。
 でも、悠翔の利き腕のことを考えれば……これが最も適しているものかもしれない。
 悠翔は利き腕があまり遣えない。
 シグナムとの戦いで遣っていたのは遣わないと駄目だったからだと思う。
 そう考えれば、悠翔の小太刀の差し方や扱い方は理に適っているものだと言える。
「……悠翔。その小太刀の遣い方と差し方はやっぱり……」
「……ああ。左腕を壊してからだ。因みにこの差し方と小太刀の遣い方については士郎さんから教えて貰った」
「そうなんだ……」
 やっぱり、悠翔が今の小太刀の遣い方をしているのは左腕が悪くなってからみたいで。
 でも……悠翔以外にも士郎さんまで同じ小太刀の遣い方をしているだなんて思わなかった。
 悠翔に教えたということは、士郎さんも悠翔さんと同じような遣い方をしているんだろう……。
 もしかしたら、士郎さんの場合は抜刀術などが得意なのかもしれない。
 けど……悠翔さんの場合は抜刀術はあまり遣えないように見える。
 それなのに、悠翔はこのような遣い方をしていて……。
 やっぱり、個人差というものが大きいのかな……?
















「ふぅ……」
 小太刀を振るい終わった俺は軽く溜息をつく。
 一刀のみでの御神流の型……正しくは俺の特有の動き。
 士郎さんとも違う、一刀の扱い。
 それが、俺の普段の剣のかたちだ。
 元々は、抜刀術などに向いた小太刀の差し方をしてはいるが、俺には虎切を遣いこなすことが出来ない。
 まぁ……海鳴に来てから、恭也さんと士郎さんに奥義のいくつかを見て貰っているおかげで扱いの目処はたったのだが。
 とは言っても俺もまだ、二刀差しでの戦い方においてはまだまだ完成していない。
 その状態で、シグナムと戦えたのは奇襲に近い形での接近戦に持ち込んだのが大きい。
 速度と言った能力で勝っていても、総合的な実力においては俺の方が負けている。
 勝因としては奥義の出し惜しみをしなかった点とシグナムに魔法を遣わせなかったことだろうか。
 特に御神の奥義の中では、神速を見切られなかったのは大きいだろう。
 話から察するに魔法では神速には届かないと言うことらしい。
 どちらにしろ、魔法に対して生身一つで渡り合うという意識が薄いのも要因だろうな。
 逆に俺から見れば魔法は実在の近代兵器に比べると対処がしやすい。
 撃つまでにタイムラグがあるということ、撃つ時に光を放つところ、そして……詠唱の時間があるということ。
 だが、こう言った時間は拳銃などには一切、無い。
 撃たれた時点で普通はそこで終わりだ。
 そう言った要素でも魔法の方が随分と対処がしやすい。
 シグナムと戦えたのはその辺りの事情が大きいと思う。
 どちらにせよ、あの集団がなんなのかは解らない。
 俺がシグナムとの戦いのことを考えつつ、剣を振るったのはそこにある。
 本当に、何もない集団だったのか、それともテロ組織である龍などが海鳴に来ているのか。
 それとも、別の何かなのかは解らない。
 剣を振るってみて何かを思いつくかと考えていたが、結局は何も思いつかない。
 事の真相が解る術が全く無いのだから。
 とりあえずはフェイトに自分の剣を見て貰う……今回はそれだけになってしまった。

 だが……さっきのことの真相を追い求めるとしたら――――

 いや、考えるのはよそう。
 最早、全ては終わったことだ――――。
















「お疲れ様、悠翔」
「……ありがとう」
 悠翔が小太刀を振るい終わって私のところに戻ってくる。
 既に何処に小太刀を仕舞ったのかは解らない。
 ……こう見ると本当にどうやって隠したのかが理解出来ない。
 多分、悠翔は服の様々な箇所に暗器を隠し持っているのではないかと思う。
 だけど、見た感じでは全く解らなくて。
 普段から……小太刀や暗器を持ち歩いているんだろうけど……。
 これなら、普通に剣士が小太刀を持ち歩いていても気付かれることは無くて。
 それに、小太刀以外にも暗器なども使用しているから色々と隠さないといけなくて。
 でも、何処にどうやって隠しているかは流石に気になるよね?
 悠翔の場合だと昔の時代でいう侍のような小太刀の差し方をしているんだし……。
 傍目から見れば全く解らないんだけど……。
「どうしたんだ、フェイト?」
「う、うん……実は、小太刀や暗器をどうやって隠しているのかなと思って」
「……ああ。そのことか。けど、フェイトも組織の人間なんだからなんとなく察しがついていないか?」
「う、うん……そうだけど」
 確かに悠翔の言うとおり、察しがついていないわけではないんだけど……。
 悠翔は小太刀などをどうやって仕舞っているのかと言ったことは教えたくないみたい。
 剣士は相手に手の内を知られることを嫌う……悠翔はそれを実践しているだけだと思う。
 特に悠翔は裏の剣を遣っているって言ってたから……尚更かな?
 普通に悠翔達のいう剣士の考え方からすると……手の内を隠すのは当然だと思うし……。
 でも……気になるものは気になるよね?



































 From FIN  2008/8/24



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