だが……今回の件のことが何かしらの影響を与えるのは間違いない。
 もしかしたら、俺が海鳴にいる間に接触を図ってくるかもしれない。
 接触を図るくらいであれば、俺に拒否をする理由は別に無いが……所属なりの話だったら考えなければならない。
 確かに管理局に入ったとしても俺の本来の目的である、”護る”ということは達成出来る。
 寧ろ、俺の目指す道の方向性としては同じかもしれない。
 別にこの世界だけに限らなくても良いのだから。
 しかし……時空管理局のやり方は信頼するには足りない。
 在り方に関しては香港国際警防隊と同じなのだが、細かい点で大きく違う。
 俺が渋っているのはその辺りの事情もある。

 まぁ……今は考えても仕方がない、か

 俺は痛む左腕を見ながら溜息をついた。

 もし、接触されたらどうするか――――

 今の俺にはその答えを出せそうに無かった。






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 恭也さんとクロノさんの立ち合いもこれで一段落し、魔法に関する話はここまでとなった。
 とりあえず、俺は恭也さんの薦めもあり、病院に行くことに。
 念のため、恭也さんと忍さんもついて来てくれるとのこと。
 因みになのはさんとユーノは一度、翠屋に戻るらしい。
 アリサとすずかも一度、家に戻ってから翠屋の方で待っているとのこと。
 クロノさんやヴォルケンリッターをはじめとした人達は管理局の方へ赴くらしい。
 多分、今日のことで何か伝えるのだろう。
 俺も恭也さんも奥義に関することは一切、教えていないため、管理局の方に伝わることは無いだろう。
 だが、なんにせよ、これで御神流が管理局に認知されるのは仕方がない。
 此方も魔法の存在を知ってしまっているから、これでお相子と言ったところか。
 しかし……魔法があるということが常識である管理局では御神流は信じられないものとして映るだろう。
 恐らくは一般人に負けはしないという自負くらいは組織の誇りとして持っているだろう。
 まぁ……逆に此方からしてみれば、魔法が相手だとしても御神の剣に退く道理は無い。
 魔法は非常識だと言っても過言ではないが、元々から御神流は近代兵器やHGSといった人達まで対処出来る。
 空を飛べるということを除けば、別に気になるようなものでは無い。
 それに、魔導師も全員が飛べるわけでは無いみたいだしな。
 そう言った意味でも充分に対抗出来る。
 特に魔導師の場合は覚悟の点で大きな差異がある。
 此方とは覚悟の段階が違うと言って良い。
 その点で”戦闘”であれば魔導師はそこまで脅威では無い。
 俺はそういったことを考えつつ、恭也さん達と一緒に病院に向かう。
 そして、俺の隣にはフェイトとはやてがついて来ていた。
「……態々、付き合わなくても良いと思うけど?」
「ううん、そんなわけにはいかないよ」
「そうやで、悠翔君。私達も好きでついてきとるんやし」
「……そういうなら別に止めたりはしない」
 好意でついてきてくれるのはありがたいが、何やら少し気恥ずかしい。
 なのはさん達がついてこないのはまぁ……ユーノと一緒にいれるチャンスだからだろう。
 はやてがついてくるのもまだ、解る。
 シグナムと立ち合った分で俺に万が一があるかもしれないとでも考えた可能性があるからだ。
 最も……何故、フェイトがついてきてくれるのかは全く解らなかったが……。
















「……病院なんて久しぶりだな」
「悠翔って病院にはいかないの?」
 私は悠翔がぽつりと呟いたことに疑問を持つ。
「……ああ、普段は別のところで見て貰っていたからな。病院自体には殆ど行っていない」
「そうなんだ……」
 少しだけ驚きながらも 、頷く私。
 でも、悠翔が病院に行っていなかったのはなんとなく予想出来た。
 やっぱり、悠翔は病院とかに行くようなタイプじゃない。
 寧ろ、無理をするタイプだから……病院とかに行くというのはイメージがつかない。
 一応、悠翔の反応を見る限り、怪我は見て貰ってるんだろうけど……。
「だが、恭也さんがいうには海鳴には凄い医者がいるらしい。俺の腕にも何かしらの意見が貰えるかもしれない」
「そうなの?」
 私は悠翔の言ったことに首を傾げる。
 海鳴に凄いお医者さんがいるっていうのは聞いたことがない。
 確かにはやてのことを見てくれていた石田医師は凄いお医者さんだったと思うけど……。
 悠翔の言いぶりからすると石田医師じゃない気がする。

 だったら……誰なのかな?

 とりあえず、考えてみたけど、解らない。
 もしかしたら、はやては知ってるかも知れない。
「あ、もしかしたら、フィリス先生のことやな?」
 やっぱり、はやては知っていたみたい。
「む……はやては知っているのか?」
 はやてが知っていたのが意外だったのか少しだけ驚く恭也さん。
 恭也さんが悠翔に会わせようとしていた病院の先生ははやても知っていたらしい。
「あ、はい。フィリス先生は、私の担当ではありませんでしたけど、フィリス先生とは会ったことはありますよ。確かに病院内でも評判の先生やったと思います……」
 しみじみと呟くはやて。
 私にはそのフィリス先生のことは解らないけど……はやてがそう言っているのなら間違いはないと思う。
「ただ、一つだけ言っておこう。……悠翔、覚悟だけはしておけ」
「は……?」
 恭也さんの意味深な言い方に首を傾げる悠翔。

 ……診て貰うのに覚悟がいる?

 私にも恭也さんの言っている意味は全く解らない。
「もう、恭也ったら。そういう言い方じゃ悠翔君も解らないでしょ? でも、私も恭也の意見には賛成かな?」
 忍さんまで恭也さんの言っていることに頷く。
 というか……否定はしないんですね、忍さん。

 え〜っと……恭也さんと忍さんの2人にここまで言わせるなんて……
 フィリス先生って何者なのかな……?
















「なんかここに来るのも久しぶりな気がするわ〜」
 病院の前に到着して、はやてが呟く。
 はやては以前まではこの病院にお世話になっていたと聞いている。
 とりあえず、この病院の名前は、海鳴大学病院というらしい。
 確かにこうやって見てみるとかなり大きな病院だ。
 話によればHGSの患者も見ている病院らしい。
 HGSは特殊な病気だから普通の病院では見て貰えないこともある。
 そういった意味でもこの病院が大きいのが理解出来る。
 それに恭也さんや美由希さんもこの病院にはお世話になっていたとか。
 まぁ……恭也さんは今でもお世話になっているらしいが。
 しかし、その恭也さんがお世話になっているという病院だ。
 これはかなり凄いのかもしれない。
 なんたって恭也さんは病院の待ち時間が嫌だという理由で病院に行かないということがあったくらいだ。
 その恭也さんがここに通ったりしているのはそれだけのものもあるんだろう。
 はやてもここに通っていたということだし……充分に信用に値する。
 多分、時空管理局以外でならということであれば……この病院は相当なものだろう。
 俺の腕も大分、楽になるかもしれない。
 とは言っても……まだ、手術とかは出来ないから、整体して貰うとかくらいしか出来ないだろうが。

 だが、恭也さんも忍さんも覚悟はしておけと言っているが……
 それほどまでに、そのフィリスという医師は凄いのだろうか?
 恭也さんの膝を治したという話は道中で聞いている
 それだけでも、腕は確かなのは間違いない
 しかし、診て貰うのに覚悟がいるというのはどういう意味なんだろうか?

 幾ら考えてみても俺にはさっぱり解らなかった。



































 From FIN  2008/7/19



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