「でも、悠翔君の言っているみたいにはやりたくない、かな……」
「ああ。悠翔の言い分は解るけど……僕もそう思う」
「……そうか。でも、その方がなのはさん達らしい」
なのは達の言い分を肯定し、悠翔は苦笑しながら頷く。
「今回のことで、俺が言いたいのは殺す覚悟と死ぬ覚悟だ」
「う、うん……」
「ただ、これだけは覚えておいてくれ。あるとは言いたくないが……万が一があるかもしれない。もし、魔法が無かったらシグナムは死んでいたかもしれないからな」
真剣な表情で私達を見つめる悠翔。
悠翔が今日の戦いでシグナムを殺すつもりで遣っていたのは遠目に見ても理解出来た。
シグナムにも殺傷設定でやるようにと言ったのもその……死ぬ覚悟という部分だと思う。
それに……殺す覚悟というのは……悠翔が”御神の剣士として相手になる”と言った時……。
悠翔は自分で言っているとおりその覚悟が出来ているんだと思う。
でも、その考え方は私達、魔導師とは大きく異なるもの。
魔法は非殺傷が出来るから、その殺す覚悟というのはあまり、考えなくても良い。
逆に非殺傷があるから死ぬ覚悟というのもあまり、考えなくても良い。
殺傷設定で魔法を遣うことがないわけじゃないけど、それでも悠翔みたいに常に……ということはない。
私達、魔導師との大きな差はそこにあるんだと思う。
でも、私達の基準ではあまり考えられないこと……でも、悠翔が言いたいことはなんとなくだけど解っているつもり。
本当に覚悟というのはしないといけないということ……。
今日の戦いを見せられたからこそ……私はそう思う。
魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
「さて、重苦しい話はこのくらいにして……今回の戦闘でのことで質問はあるか?」
悠翔が一旦、話を区切る形で私達に尋ねる。
今日のシグナムとの戦闘でのことで質問……
私は今のところは無いかな?
悠翔の戦い方は解っていたし、士郎さんとの立ち合いも見てたから大体、解ってる
それに……悠翔の話も聞いているし……
「じゃあ……悠翔君に聞きたいんだけど……悠翔君はお兄ちゃんと同じ方法で戦ったんだよね?」
「ああ、そうだけど」
「でも……なんで初めは片手だけで戦っていたのかな? 手加減してたってわけじゃないよね?」
「そうだな、別に片手で戦っていたのは手加減のためじゃない。俺が元々、そういう方法で戦っているからだ」
「ふ〜ん……。じゃあ、どうしてそういう方法で戦っているの?」
なのはの質問に悠翔がどんどん答えていく。
と言うか、悠翔が恭也さんと同じ剣術を遣っているだけあってなのはの質問は結構、追及が細かい。
「良い質問だな……と言うべきかな。俺が片手だけで戦っているのは……利き腕である左腕を壊しているからだ」
「えっ……?」
なのはが悠翔の返答に驚く。
私の場合は既に悠翔の左腕のことは聞いていたから驚かないけど……。
アリサとすずかと恭也さんと忍さんを除いた全員が驚く。
驚かなかったアリサとすずかは事情を知っているし……。
恭也さんと忍さんが悠翔の腕のことを知っているのは当然だと思う。
「馬鹿なっ……! あれだけの実力を持ちながら、身体に障害を抱えているだと!?」
シグナムが悠翔に詰め寄るような勢いで問いかける。
「……ああ、シグナムの言うとおり、俺は身体に障害を抱えている。とはいっても……今は剣を振るうには問題ないくらいには治っているけど、な」
シグナムの問いかけに対して悠翔は苦笑しながら答える。
「だが、そのお陰でああいった戦い方も出来るようになった……今ではそこまでは、悪くないと思っている」
「不破……お前は……」
「……いや、シグナムが気にすることじゃない。それに……シグナムと俺は対等に戦ったんだ、苗字で呼ぶのはやめてくれ」
「ああ、すまない。……悠翔」
シグナムが悠翔のことを名前で呼んだところで話を一旦、区切る。
悠翔が片手で戦っていた理由は私も話に聞いていたから知っていた。
でも、あれだけの動きが出来る悠翔が身体に障害を持っているなんて信じられないと思う。
現にクロノは何かを考え込んでいるし、ユーノも何か思うところがあるみたいで。
2人は、悠翔にはまだ、何かがある……そんなことを考えているのかもしれない。
それだけ、悠翔の戦い方には違和感があったのかも。
けど……私には悠翔の戦い方に違和感は感じなかった。
私の場合は既に見たことがあるからかもしれないけど……。
「俺が片手だけで戦っていた事情は大体、そんなところか。他にも聞きたいことはあるか?」
なのはさんの質問に答えた俺は周囲を見渡す。
とりあえずは色々と聞きたそうな人もいるみたいだが……。
「……クロノさん。貴方には色々と聞きたいことでもあるんじゃないですか?」
俺は色々と複雑そうな表情をしていたクロノさんに質問を投げかける。
「ああ、だったら遠慮なく質問させて貰う。まずは……シグナムのレヴァンテインを斬り落したことについてだ」
クロノの質問は悠翔がレヴァンテインを斬り落した時のこと。
確かに……あれは疑問に思っても可笑しくない。
私もあれはよく解らなかったけど……恭也さんが私との模擬戦で遣っていた技に似てる。
確か……恭也さんは素手で遣っていたと思うけど……。
悠翔は小太刀を遣っていたように見える。
もしかしたら、小太刀を遣っても問題がないのかもしれない。
「一応、恭也さんからも君が何をしたのかは聞かせて貰ったが……念のため、直接聞いておきたい」
「……解りました。シグナムの剣を斬り落したのは……俺や恭也さんの遣っている剣術の奥義の一つです」
クロノの質問に悠翔は頷き、説明を初める。
「俺がシグナムとの戦いで遣った奥義は、衝撃を徹すというもので、それによってシグナムの剣を斬り落しました。……別に特別なものは遣っていません」
「……だが、普通にレヴァンテインを斬り落したというのはありえない。本当に何もないのか?」
「ええ、本当に何もありませんよ。寧ろ、俺が遣った技法自体であれば基礎でしかありませんし、ね」
「なっ……あれが基礎だと!?」
悠翔の基礎という言葉に驚くクロノ。
というか私も吃驚した。
まさか……悠翔の遣っていた技術が基礎でしかないなんて。
普通に考えても非常識だとしか言いようがない。
けど……普通に遣っていることを見ると別に悠翔の言うとおり特別なものじゃないのかもしれない。
それでも、納得できない部分はあるんだけど……。
なのはが言うには普通にシールドも貫通するとか……。
今回だと悠翔がレヴァンテインを斬り落したり、シグナムの甲冑を普通に斬り捨てていたり……。
本当にこれって基礎の段階なのかな?
クロノさんや周りの皆が俺の遣った技法が基礎だということに驚いている。
別に俺からすれば、特別なことはしていないし、恭也さんにとっても普通だ。
寧ろ、魔法の方が俺には理解出来ないことが多い。
多分、原理を聞いても解らないだろう。
「とまぁ……俺がシグナムの剣を斬り捨てたことに関してはこのくらいです。他にはありますか?」
「そうだな……後、気になるのは悠翔がシグナムに対して遣っていた、転移みたいなものくらいか。僕の見立てではあれは速く動いているという感じだったが」
「それは、クロノさんの見立てのとおりですよ。俺がシグナムとの距離を詰めた方法は速く動くための技法ですし」
「だが……あの動きは魔法ではとても出せない速度だ。最早、転移だといっても良い。あれはどうやっているんだ?」
クロノさんが神速について質問をしてくる。
まぁ……流石にこれも予想どおりといったところか。
だが、そのことに関しては教えるわけにはいかない。
「……これに関しては教えられません。教えたとしても魔法を遣っている貴方達には必要がない技術ですし」
「そ、それは……そうだが……」
「それに、戦闘の前にも言いましたが……剣士は相手に自らの手の内をばらすことを嫌います。ですから、教えるわけにはいきません」
「……そうか」
俺に拒否をされてそれきり黙るクロノさん。
何か思うところでもあるのだろう。
シグナムも俺に神速のことを聞きたそうだったが、先にクロノさんが質問をしたため、その話題は諦めたようだ。
「じゃあ……私からええか?」
少しだけ質問を待っていると、次ははやてが俺に質問をしてくる。
「悠翔君はシグナムの魔法を回避したり、発動する前にシグナムに攻撃しとったけど……あれって何か秘密でもあるんか?」
はやては俺が魔法を発動の前に対処していたことに関して疑問を持ったらしい。
「これも良い質問だな……。けど……あれは、別に秘密でも無いんだ。察知して動いているだけだから、な」
「ホンマか? でも、悠翔君には魔力感知とかは出来んはずやろ?」
「そうだな。俺にはそういった特別なものは何もないからな。だが、”戦闘者”として感じるものもあるんだ」
「戦闘者として感じるもの……?」
「ああ。俺には魔法が違和感とかいった感じの気配として感じられる。それに……魔法には発動の工程がある。俺が発動前に動いたのはその間隙をついただけだ」
「そうやったんか……。でも、気配とかだけで解るなんて凄いなぁ」
何やら俺の説明に感心するはやて。
とはいっても俺にとっては別に特別でもなんでもないため、そう言われるとなんか照れくさい。
「まぁ……俺から言えるのはこれくらいだな。後は他に何かあるか?」
一通り聞かれたことに関しての説明はしたつもりだが、俺は再度確認をする。
周りを見渡したところ、特に質問は無いみたいだ。
だったら、ちょうど良いか……
「はやて……少しだけ話があるんだが……」
皆からの質問がないことを確認した俺ははやてを呼ぶ。
はやてには今回のことで個人的に言っておかなくてはならない。
俺がシグナムと戦闘をしたこと以外にも、な……。
From FIN 2008/7/4
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