「うん。悠翔は……恭也さんとはタイプが違う」
 悠翔は私達が模擬戦をして貰った恭也さんとは全くタイプが違う。
 同じ剣術を遣うのにここまで戦い方が違っているなんて私も驚いた部分が多い。
 恭也さんが私達との模擬戦で遣わなかった技も遣っていたし……。
 それに悠翔はどこか独特と言うのかは解らないけど……両方の小太刀を遣って戦おうとしない。
 腕の怪我のせいがあるのは間違いないんだけど……。
 それでも、二刀を持っているのに一刀の小太刀だけで戦うなんて変わってると思う。
 私もライオットザンバーで二刀流を遣っているけど……やっぱり二刀とも遣うし。
 けど、悠翔も普通に二刀で戦えるって言っていた。
 普通に戦えるのにあまり、二刀で戦わないのは悠翔のスタイルみたい。
 恭也さんや士郎さん……それに美由希さんとも違う戦い方。
 悠翔はそういう剣士だと思う。
 でも……一番、吃驚なのは……悠翔が剣士として一番弱いってことなんだよね……。
 悠翔が自分で言ってたけど……恭也さんにも士郎さんにも敵わないって。
 あれだけのことが出来る悠翔が一番弱いだなんて……本当に恭也さん達には驚かされてばかり。
 けど、悠翔も魔法のことを聞いた上で魔導師や騎士くらいならどうにか出来るって言ってる。
 それって……どういうことなのかは解らない。
 きっと、今日でそれが解るんだと思う。
 ……悠翔の言っている覚悟や考え方のことも。
 私達、魔導師とは全然、違うっていう悠翔達の考え方……それが、どれだけ違うのか。
 恭也さんが本気を出していないということも含めて解るんだと思う。
 それが……どんな感じなのかは解らないけど……。






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「さて……暗器の準備はこれで良いな。後は小太刀だが……どうしようか」
 俺はフェイト達と別れて、自分の道具の準備をしている。
 飛針、鋼糸、小刀といった暗器の類は全部準備出来ている。
 しかし、問題なのは小太刀だ。
 今、俺が持っている小太刀は無銘のものだ。
 ただし、儀式などでも遣われることを前提とされているためか普通のものよりは出来の良い小太刀ではある。
 だが、この小太刀は俺が本来遣っている小太刀じゃない。
 俺が普段の仕事などで遣っている小太刀はもっと別物だ。
 以前は美沙斗さんが所有し、現在は美由希さんが遣っている小太刀『龍鱗』の龍とは対を成す鳳凰の銘を持つ小太刀……『飛鳳』。
 それが俺が本来遣っている小太刀だ。
 飛鳳は龍鱗と合わせて創られた小太刀で、その斬れ味は大業物と言っても良い。
 見た目は全体的な印象で若干、黒みのかかったかのような感じのする普通の小太刀と言っても良いのだが、飛鳳は光の反射角次第では紅黒く見える。
 その色が血のような色に見えるのは俺の気のせいでは無いだろう。
 戦闘との違いを見せると言っても流石にこの小太刀を遣うのは憚られる。
 飛鳳では流石に手加減が難しいと言えるからだ。
 恭也さんは八景でも上手く手加減出来るんだろうが……俺の技量では恭也さんのようにはいかない。
 そういう意味では少し、考えものだった。
 とは言っても今は手元に飛鳳は無いので考えても意味が無いのかもしれないが。
「悠翔」
「……恭也さん」
 俺が思案していると後ろから恭也さんが話しかけてくる。
「む……何やら考えごとをしているみたいだが」
「ええ、小太刀のことで少し考えていまして」
 因みに飛鳳は元々、一臣父さんが遣っていたものだ。
 不破家に伝わる小太刀は八景と飛鳳だが、八景の方は士郎さんが所有していた。
 しかし、不破家の正当後継者は一臣父さんであり、士郎さんは違う。
 そういった事情もあって一臣父さんが飛鳳の所有者だったのだろう。
 当然だが、不破家の人間である恭也さんが飛鳳を知っているのは当然だったりする。
 とまぁ……この話題はここで休題。
「それで、小太刀を見つめて何をしていたんだ?」
 恭也さんが小太刀を見ながら問いかける。
「ええ、実は……」
 恭也さんの問いかけに俺は説明を始める。
















「なるほどな。魔法を相手に”戦闘”の違いを見せるということか」
「ええ。恭也さんが既に模擬戦で魔法を相手にしていたのは聞いていましたが。今回は俺が考え方の違いでもみせようと思いまして」
「ふむ……」
 俺の言っていることに少しだけ思案する恭也さん。
「それは良いが……どの部分を見せるかは多少、考えた方が良いと思うぞ。魔導師や騎士と剣士は本質が違いすぎるからな」
「……はい」
「俺はあえて御神不破としての本来の戦い方は殆ど見せなかった。まぁ、悠翔が本来の戦い方を見せると言うのは構わないが……」
 とりあえず、俺を止めようとは恭也さんも思っていないみたいだった。
「そうだな……念のため、俺も同伴させてもらって構わないか?」
「良いんですか?」
「ああ。一応は俺からも見せるなり、説明するなりしないといけないかもしれないからな」
「解りました」
 俺は恭也さんに頷く。
 恭也さんが来てくれるなら俺は気兼ねなく剣士としての姿を見せられると思う。
 しかし……恭也さんが言うとおり、魔導師と剣士の本質は違いすぎる。
 どこまで見せるか……と言うのもあるかもしれない。
 それに、魔法を見てみないと俺からはなんとも言えないからな。
 とりあえず、魔法が凄いということは理解しているが……。
 どれほどのものなのかまでは解らない。
 それに、魔法を見せて貰えるとはいっても俺がどうするかはものによる。
 話を聞く限りでは……あのくらいならなんとか出来るとは思うんだが……。
「とりあえず、俺から魔法のことを言っておくとすれば……あれは大きすぎる力だ」
「……はい」
「だからこそ、隙が生じると言っても良い。それに、魔法がどれだけ強かろうが……俺達の戦い方をすれば良い」
 恭也さんの実感のこもった言葉。
 俺が恭也さんならこう言うだろうと思っていたことでもあった。
 はっきりとこう言える恭也さんは本当に凄いと思う。
 俺だったらここまではとても、言えないだろう。

 まだまだ……恭也さんという目標には遠いな
















「そういえば、フェイトちゃん。悠翔君がお兄ちゃんとタイプが違うってどういうことなの?」
 悠翔が恭也さんと違ったタイプだということになのはが疑問を持ったらしく、私に質問してくる。
「う〜ん……私も上手く言えないんだけど……悠翔って本当に独特の動き方なんだよ」
「そうなの?」
「うん」
 私も悠翔の動き方が独特だと解ってるけど……なんか上手く説明は出来ない。
 一刀で戦ってるかと思えば、二刀で戦ったり……。
 途中でいきなり二刀目を抜いたり……。
 私の遣っているライオットザンバーとは全く違う感じで。
 悠翔の二刀の遣い方は本当に違う部分が多い。
「そっかぁ……」
 私の言っていることに一応は納得した様子のなのは。
 恭也さんとタイプが違うということを聞いて、なのはにも何か思うところがあるのかもしれない。
 ユーノはユーノで考えごとをしている様子。
 私も色々と思うところはあるけど……。
 まだ、悠翔が実際に魔法を相手にどうやって動くのかは想像出来ない。
 恭也さんみたいな感じで動くのは解るけど……。
 けど、悠翔が見せるって言ったのは戦闘という形で。
 剣士にとっての戦闘はどんなものかは解らないけど……。
 戦闘のことを言っていた悠翔の目は本当に真剣だった。
 私達、魔導師に比べても覚悟が違う……そのことがあるのは間違いないと私は思う。

 けど、それにしても……
 悠翔……遅いな……まだ来ないのかな?



































 From FIN  2008/6/16



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