神速の領域から更に神速の領域に入る……それが、どれだけ難しいか。
 今の動きを見ていればそれが解る。
 やり方が解っても、そう簡単に出来るものじゃない。
 俺はそれを実感した。
 今の技法はあまりにも難しすぎる……。
 それに、恭也さんの言うとおり負担も大きい。
 多分、恭也さんでも5秒と持つかは解らないだろう。
 それだけ神速の二段がけは反動が大きい。

 神速の二段がけ、本当に限られてるからこそ遣える方法なんだな……

 恭也さんが決して遣おうと思うなと言った理由がよく解る。
 幾ら、可能とはいえ、神速の中で神速を遣うということはあまりにも反動が大きい。
 俺はそのことを肝に命じる。
 しかし……この神速の二段がけを遣える恭也さんは本当に凄い。
 恭也さんは俺なら神速の二段がけも遣えるようになるとは言ってくれたが……。
 俺は恭也さんと同じ不破だが……ここまでのことが本当に出来るようになるんだろうか?






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 恭也さんから神速の二段がけを見せて貰い、大体の朝の訓練が終わった。
 今の俺はその訓練の時に遣った道具を片付けているところだ。
 暗器の遣い方については先日に士郎さんから見て貰っているから問題無いんだとか。
 木刀をしまい終わった俺は恭也さん達と一緒に高町家に戻る。
 高町家では桃子さんとなのはさんが朝食の準備をしていた。
「あ、おはよう悠翔君。昨日はよく眠れたかしら」
「はい、お陰さまで。ゆっくりと眠れました」
「そう、なら良かったわ」
 俺の様子を確認した桃子さんは朝食の準備に戻る。
 席について待っているとユーノとフェイトも降りてきた。

 そういえば、フェイトはあのまま高町家に泊まったんだったな
 家は近くらしいが……まぁ、あれでは流石に戻りようも無いか
 とりあえず、はやて達にはお仕置きが必要か……?

「おはよう、フェイト」
「あ……おはよう。悠翔」
「昨日は大変だったな。大丈夫か?」
「あ、うん」
 挨拶をし、フェイトの様子を確かめる。
 様子を見る限りではもう大丈夫そうだ。
「そういえば、昨日は悠翔が私を部屋に運んでくれたんだよね?」
「……ああ」
「えっと……その……」
 俺がフェイトを部屋に運んだのは本当だ。
 しかし、フェイトは何故か頬を紅く染めて俯く。
「私を……お姫様抱っこで運んでくれたって本当?」
 フェイトが躊躇いがちに聞いてくる。
 少しだけ、上目づかいで俺の顔を覗き込むその仕草は素直に可愛いと思う。
 なんか反則な気もしなくもない。
「あ、ああ……本当だけど」
「ふぇ……」
 俺の言葉にフェイトはますます頬を紅く染める。

 その様子は見ていて可愛らしいが……
 俺が一体、何をしたって言うんだろう?
















「ん……ここは……?」
 私は見慣れているような見慣れていないような場所で目を覚ます。

 えっと……私は昨日……なのは達に悠翔のことを話して……
 それから、はやて達に問い詰められて……
 その後はどうだったかな……?
 う〜ん……あまり記憶に無いんだけど……

「あれ……どうして私はこの部屋に?」
 落ち着いて辺りを見回してみるとここがなのはの家だということに気付く。

 私は何故、こんなところに……?

 自分で考えてみるけど答えは出ない。
 暫く、悩んでいると部屋に誰かがやってきた。
「フェイトちゃん?」
「あ、なのは」
 ひょっこりと部屋を覗き込んでくるなのは。
「フェイトちゃん、大丈夫? 昨日は……倒れちゃったんだよ?」
「え……?」
 私はなのはの言ったことに目を白黒させる。

 え〜っと……私って昨日倒れちゃってたの?
 もしかして……後のことの記憶が無いのもそのせい?

「やっぱり……覚えて無いんだね。フェイトちゃんは昨日、はやてちゃん達から問い詰められて気絶しちゃったんだよ」
「ええっと……私の記憶にその後のことが全く無いのはそのせいだったんだね」
「うん。ごめんね? フェイトちゃんがあんなになるまで話を聞いちゃって」
「あ、うん……」
 なのはが私に謝ってくれる。
 でも……なのは達が私に色々と聞いてきたのは無理はないのかも。
 なのはにはユーノがいるし……はやてにはヴェロッサさんがいる。
 なのは達と違って私だけが男性との話が全く無かった。
 そう考えれば悠翔と出会ったことは大きいことなのかも?
「じゃあ……私は朝ごはんの準備を手伝いにいくね。フェイトちゃんはもう少し落ち着いたら来てね」
「うん、解ったよ」
 そう言って部屋を後にしようとするなのは。
「あ、そうだ。フェイトちゃん。昨日、この部屋にフェイトちゃんを連れて来てくれたのは悠翔君なんだよ?」
「え、そうなの?」
 何故、私がこの部屋にいたのかと思っていたけど……悠翔が私を連れて来てくれてたみたい。
「うん。で、悠翔君はフェイトちゃんをお姫様抱っこでこの部屋まで運んでくれたの」
「ふぇ……?」
 なのはの言ったことに言葉が出ない私。
 なんとなくだけど頬が熱くなる。
「じゃあ……私は行くね」
 何かなのはが私に声をかけて部屋を後にしたけど、なんて言っていたのかは私の耳には入らなかった。

 ええっと……今、なのはは悠翔が私をお姫様抱っこで運んでくれたって言ったよね?
 わわ……どうしよう……私ったらまた、悠翔に……
 しかも、悠翔が運んでくれたってことは多分……皆の前で私をお姫様抱っこをしたのかも?
 悠翔の性格を考えてみると、そういうことは平気でやりそうだし……
 幾ら、私のためとは言っても……
 あぅぅ……恥ずかしいよ……
















 朝にこういうことがあった後に悠翔と会うことになったんだけど……。
 やっぱり、恥ずかしい。
 悠翔は別になんでも無いような様子だけど……。
「えっと……俺が何かしたのか?」
 私の様子に疑問を持ったのか悠翔が尋ねる。
 悠翔は私が何を考えてるかは解っていないみたい

 悠翔って、やっぱり……鈍い

「あ……ううん、なんでもないよ」
「そうか、なら良いんだ」
 そう言って食卓の席につく悠翔。
 さっきなのはが言ってた通り、ごはんの準備は進められていたみたい。
 私の分も用意されているみたいだから……朝ごはんまでお世話になることに。
 桃子さんのごはんは物凄く美味しいんだけど……
 なんか昨日からごちそうになってばかりで申し訳ないと思う。
「すいません……なんか色々とお世話になってしまって」
「ううん、気にしないで良いわよ、フェイトちゃん」
 私が遠慮がちにしていると桃子さんが笑顔で遠慮しないようにと言ってくれる。
 いつも、桃子さんにはお世話になっているけど……。
 本当にこうお世話になる日が続くと私も申し訳なく思う。
 桃子さんはその度に気にしていないって言ってくれる。
 それは、士郎さんも桃子さんと同じで。
 恭也さんと美由希さんも私が高町家でお世話になる時は快く迎えてくれて。
 なのはの家の人達は本当に良い人達だと思う。
 でも、昨日からの私は皆に迷惑をかけてばかりで。
 なのはにも悠翔にも桃子さんにも迷惑をかけちゃったと思う。

 昨日はなんか倒れちゃったし……
 悠翔にも迷惑をかけてばかりだし……
 なのは達には恥ずかしいことばかり聞かせちゃったし……
 正直、私がうっかりやさんなのは解ってるけど……
 これは、本当に恥ずかしい……
 うぅ〜……穴があったら、入りたいよ……



































 From FIN  2008/6/11



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