……やれやれ、だな

 俺はもう一度、溜息をつく。
 まぁ……色々とあったが今日は楽しかった。
 フェイトにも出会えたし、なのはさんにもはやてにも……それに桃子さんにも出会えた。
 アリサとすずか……それに忍ぶさんにも再会出来たし、恭也さんと士郎さんともお話することが出来た。
 少し疲れたが……今日は本当に楽しかったと思う。
 この海鳴の地でフェイト達に出会えたこと……これは偶然なんかじゃないのかもしれない。
 俺は、なんとなくだがそう考える。
















 何はともあれ……こうして、俺の海鳴での初めての1日は幕を閉じた。






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「ん……もう朝か。時間は……まだ早いな」
 色々とあった一日が終わり、次の日の朝。
 既に美沙斗さん達から士郎さん達に話が通っていたのもあり、俺は高町家に泊まらせて貰っている。
 しかし、泊まらせて貰っているとは言っても普段からの習慣は中々、抜けない。
「さて……訓練でもするか。恭也さん達も起きてるだろうし、今のうちに見て貰った方が良いかもしれないしな」
 俺は道具の準備をし、高町家の道場へ向かう。
 そこには既に恭也さんと士郎さんが道具の準備を済ませていた。
「おはようございます、恭也さん、士郎さん」
「ああ、おはよう。よく眠れたか?」
「ええ、お陰さまで」
「……そうか」
 俺は恭也さんと軽く挨拶をかわす。
「さて……悠翔も来たことだし……軽く身体でも動かすか」
「あ、はい」
 俺は士郎さんに返事をする。
 多分、初めは基礎体力作りでもするのだろう。
 恭也さんと士郎さんはそのまま外に出ていく。
 俺も普段から体力作りは行っている。
 やはり、恭也さんと士郎さんも基礎的な部分を怠ってはいないみたいだ。
 例えば、恭也さんは8時間以上も”戦闘”を継続出来るくらいの体力と精神力を持っているんだとか。
 実際に”戦闘”を継続すると言うことは尋常じゃないほど難しい。
 しかし、恭也さんはそれを平気でやってのける。
 因みに士郎さんや美沙斗さん、それに……夏織さんも平気らしい。
 美由希さんは流石に今いった人達には及ばない……だが、美由希さんもかなり長時間の戦闘を続けられる。
 俺も長時間の戦闘が出来るように鍛えているが……流石に恭也さんや士郎さん達には及ばないだろう。
 とにかく、俺は恭也さんと士郎さんの体力作りについていく。
 ある程度だが……海鳴の地理も解るだろうし……ちょうど良いか?
















 恭也さんと士郎さんにお供をし、軽く体力作りをする。
 軽くとは言っても普通の人からじゃ信じられないような距離と速さで走るんだが。
 別にこれは日常のことだから問題はない。
 しかし……海鳴は綺麗なところだと思う。
 俺は基本的には香港に在住していたのだが……香港は海鳴のような場所じゃない。
 この空気も海鳴ならではなのかもしれない。
 体力作りをしながら、俺は海鳴の雰囲気というものを堪能させて貰う。

 ……なんかこういうのも良いものだな

 一通り、身体を動かした俺は恭也さん達につれられて高町家の道場に戻る。
 そして、準備していた木刀を持つ。
「さて……とまずは軽く撃ち合ってみるか」
「はい」
「相手は……そうだな。恭也に任せる」
「……解った」
 そう言って構える恭也さん。
 その構えに隙はまったく無い。
 寧ろ、圧倒されているのは俺の方だ。
 士郎さんもそうだったが……恭也さんも俺の知っている限りでは最強の剣士だ。
 奥義の極みを扱え、そして……神速の二段がけを遣える唯一の御神の剣士。
 一臣父さんに並んで俺の最大目標の1人でもある。
 俺もゆっくりと木刀を構える。
「まずは、軽く身体を慣らすか」
「解りました」
 まずは、身体を慣らすことから。
 俺は恭也さんと軽く木刀で撃ち合い始める。
 恭也さんは小太刀の二刀術が基本の型だ。
 俺も恭也さんに合わせて小太刀の二刀術の型にする。

 ……利き腕の調子は悪くない

 普段は一刀の小太刀を基本にしてやるのだが、今回は二刀の小太刀を基本として立ち回りをする。
 恭也さんは手加減をしているのだろうが、油断をすると俺は間違い無く、一撃を喰らってしまう。
 俺は集中力を高め、恭也さんとの撃ち合いに臨む。
 軽く撃ち合うこと数分後……恭也さんが撃ち合いを止める。
「ふむ……大体の感じは解った。とりあえず、利き腕の調子は大丈夫そうだな?」
「あ、はい。大分、調子は良いみたいです。小太刀を遣って……となるとどうかは解りませんが」
「……それはあるかもしれないな」
「まぁ……だからこそ、俺は二刀流の技を混ぜて小太刀を扱っているんですけど」
「……なるほどな」
 恭也さんは少し考え込む仕草をする。
「さて……今度は普段の型で挑んで来て貰えるか? 奥義も遣って構わない」
「あ、はい。解りました」
 俺は木刀の裡、一刀を腰に戻し、右手の木刀だけを残して構えを取る。
 恭也さんも再度、二刀を構え直す。
 多分、恭也さんも俺の力量を測っているのだろう。

 だったら……俺は出来る限りでそれに応じるだけだ……!

 俺は一刀のみで恭也さんに撃ちかかる。
 恭也さんは一刀目でそれを受け止め、二刀目で俺の胴に薙ぎ払いを放つ。
 しかし、その動きは俺の予測内だ。
 俺は一歩下がり、恭也さんの薙ぎ払いを避ける。
 恭也さんの薙ぎ払いを避けた俺はもう一度、一刀で撃ちかかる。
 だが、今回は少し違う形を狙っていく。
 恭也さんは撃ちかかってきた俺の一刀を受け止める。
 だが、恭也さんが一刀を受け止めたことにより、相手の木刀も1本だけになる。

 ――――見えた

 俺は一瞬の交錯のうちに二刀目を抜き放つ。



 ――――小太刀二刀御神流



 俺が放つは士郎さんが最も得意とし、恭也さんも多用する奥義。



 ――――奥義之壱・虎切



 俺の放った虎切に一瞬だけだが驚く恭也さん。
 しかし、恭也さんは咄嗟に二刀目で俺の虎切を受け止める。
「……虎切か。悠翔は今までは遣えなかったと聞いていたが」
「ええ、確かに遣えませんでした。今、放ったのが実戦では初めてです」
 実際に俺が虎切を遣ったのは今回が初めてだ。
 一応、昨日に練習はしたが、実戦で遣えるかまでは解らなかった。
「……そうか。それならば大したものだ。今の狙いどころは悪くない」
 恭也さんの言葉を聞く限り、今の虎切は問題は無いらしい。
「そうですか?」
「……ああ。だが、少し甘いな」
「っ……!?」
 しかし、虎切を受け止めた恭也さんが一刀目を斬り返し、俺の首筋に木刀を向ける。



 ――――小太刀二刀御神流、基礎乃三法「貫」



 今の一瞬のうちに恭也さんに貫を遣われてしまっていた。
 恐らくは虎切を放った時に恭也さんが狙っていたのだろう。
 俺も貫の発動には気付いていたが、反応が間に合わなかった。

 まだまだ、こういう駆け引きでは及ばないか……

 一瞬の交錯のうちにここまでやってのける恭也さんの強さを俺は改めて実感する。
















「ふむ……初めて放ったにしては虎切の形は出来ていたな。もしかして、夏織が遣っていたのを見たことがあるのか?」
「あ、はい。何度か夏織さんが遣っていたのを見たことがあります」
「なるほど……。後は俺が立ち合いの時に遣ったからその時ので大体の感覚を覚えたというところか?」
 士郎さんが俺に確認をとるように質問する。
「ええ、そうです。とは言っても俺の場合は普通に遣うと虎切の利点が少ないため、今みたいな遣い方をしてみましたが」
「そうだな。悠翔の着眼点は良いと思うぞ。虎切は二刀術の中でも、一刀で遣う奥義だからな。虎切は奇襲という要素も含まれている」
 俺がどう言った理由で虎切を遣ったのか説明すると士郎さんが納得したような表情で補足の説明をしてくれる。
「悠翔の場合は一刀を基準として戦っている。それを考えれば今みたいな遣い方はありだろう。悠翔の場合は”二刀目”が決め手になるからな」
「そうですね……。俺の場合は”二刀目”が決め手です。だからこそ、ああ言った遣い方で考えました」
「そこまで考えているならそれで良いだろう。悠翔なら普通に二刀術からでも虎切は遣えるだろうしな」
 そう言って説明を終える士郎さん。
 恭也さんも簡単に指摘をしたかったみたいだが、既に士郎さんに言いたいことは言われてしまっていたようだ。
 特に言うことが無くなってしまい苦笑する恭也さん。
 恭也さんも士郎さんも師範だというのもあり、流石に奥義のことにも御神流のことにも詳しい。
 美沙斗さんと夏織さんも詳しかったが……女性ということもあり、恭也さん達とは視点が違っていた。
 そういう意味でも恭也さんと士郎さんとの立ち合いはとても参考になる。
 特に恭也さんは俺と同じように身体に傷を持っている剣士だ。
 今ではその傷も完治しているみたいだが……どういった方法で戦えば良いのかも恭也さんは良く理解している。
 本当に恭也さんは凄いと思う。
 士郎さんも様々な経験をしているだけあって多くの戦いの術を知っている。
 特に経験という点では今の御神の剣士の中では最も深くを見ているだろう。

 はたして、俺はどこまで恭也さんや士郎さんに迫ることが出来るのだろうか……



































 From FIN  2008/6/6



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