なのはも私と悠翔の出会いのことに関しては話を聞いていないためか興味があるみたい。
 それに、アリサとすずかも私と悠翔の出会いの話を聞きたそうにしている。
 止めてくれる人は誰もいない。
 肝心の悠翔も恭也さんと士郎さんと話をしているから呼ぶことも出来ない。

 でも……このままじゃ話すしか無いし……
 かと言って黙っててもそのうち話さないといけないし……
 何より、私と悠翔が普通に話しているのをみんなに見られてる
 もう、誤魔化しようも無い状態……
 あぅ……本当に逃げ場が無いよ……






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 何やら完全に追い詰められた形の私。
 勿論、周りを見渡しても私の味方はいない。

 あぅ……どうしよう……

「フェイトちゃん?」
 なのはが意味深な目で私を見つめてくる。
 このままだとなのはが「お話、聞かせて?」になってしまう。
 それに……はやても私のことを弄りたそうに視線を向けてくる。

 む〜……アリサとすずかまで……

 アリサとすずかも私に話を聞きたいのかじっと見つめてくる。
 桃子さんと忍さんは全くとめてくれる感じがしなくて。
 私はどんなに頑張ってみても話すしか無いみたい。
「えっと……私が悠翔と出会ったのは……」
 私が話し始めるとなのは達が興味深そうに近寄ってくる。
「私が1人で買い物をしてる時で……」
「うんうん、それから……?」
「その時に怖い男の人に絡まれた時に私と悠翔は出会ったの」
「ほ〜王道やな〜?」
「それで、悠翔が私のことを神速を遣って助けてくれて……」
「って、ちょい待ち! 悠翔君はいきなりフェイトちゃんのために神速を遣ってくれたん?」
「う、うん……そうだよ」
「ふ〜ん……それはまた凄いなぁ……」
「で、悠翔が神速で助けてくれたんだけど……その時に私は吃驚しちゃって……悠翔に抱き付いて……」
「な、なんやて!?」
 私が「悠翔に抱き付いて」と言った途端、はやてが驚きの表情をする。
 なのはもアリサも少しだけ、吃驚してるみたいで……。
「うわ〜……フェイトちゃんったら大胆だね〜?」
 でも……すずかだけは嬉しそうに私の話を聞いている。

 あれ……? もしかして……すずかってこういう話題に慣れてる?
 でも……考えてみればすずかだけはお姉さんである忍さんにこの手の話題を聞かされている可能性が高いわけで……
 もしかしたら、何回も恭也さんとのことを忍さんから聞いているのかも?
 それだったら……こういう話題にも慣れてるよね……?
















 恭也さんと士郎さんから俺の遣える奥義の考察をして貰う。
 やはり、俺に比べても経験が豊富な恭也さんと士郎さんの意見は本当に参考になることばかりだ。
 俺は利き腕に難がある分、手数の多い技が遣えなかったが……そういう考え方もあるのだと思う。
「では、俺は薙旋を主軸に考えて戦術を組み立てた方が良いのでしょうか?」
「ふむ……そうだな。薙旋を極めることで幅が広がるのは間違いないだろう。射抜・追は二段構えだが、薙旋は四段構えとも言って良い」
「恭也の言うとおりだ。薙旋は元々、高速で4連続での斬撃だが……手数で言えば虎乱、花菱には及ばない。しかし……」
「……薙旋には他の奥義には無い利点がある」
「と言うと?」
 俺は恭也さんの薙旋の利点と言うのに身を傾ける。
「さっきも言ったが、薙旋は4連続の攻撃のうちに出来ることが多い」
「はい」
「その4連続で変則な攻撃が出来ると言うのもさっき言ったことだが……薙旋の場合は他の奥義に派生させやすいんだ」
「そうなんですか?」
「……ああ。例えば、射抜・追なら二刀目の攻撃を刹那の瞬間に入れることで回避不能の一撃を入れる。それは遣っている悠翔が理解しているはずだ」
「ええ、射抜・追はそういう技だと言えますね」
「だが、薙旋ならば四刀の斬撃の後から射抜に繋げる、雷徹に繋げると言ったことも出来る。それに……薙旋は途中から神速も混ぜることも出来る」
「まぁ……ここは射抜・追を遣える悠翔ならよく解るんじゃないか? 射抜・追も二刀目で神速を遣うことは多いからな」
 恭也さんが薙旋の詳しい説明をしてくれ、士郎さんが簡単な補足をしてくれる。
 確かに恭也さんと士郎さんの言うとおりだ。
 薙旋は考えてみれば考えてみるほど様々な使用方法が浮かび上がってくる。
 恭也さんがこの技を一番得意とし、決め手として遣っている理由が解る気がする。
 以前の恭也さんは膝のせいで御神の剣士としての力を最大限に発揮出来ていなかった。
 それ故に恭也さんはそれ相応の”戦術”を組み立てなくてはならなかったんだと思う。
 暗器の遣い方……駆け引きの方法……見切りの術……。
 恭也さんは他にも色々と戦闘に必要な要素は考えていたんじゃないだろうか。
 しかし、奥義の中でも最も多彩な遣い方が可能な薙旋を最大限に技として昇華させ、神速を切り札として遣うような方法を確立した。
 おそらく、恭也さんが神速の二段がけを遣えるようにしたのもそのことがあるんじゃないかと思う。
 だが、それは俺にも似たようなことが言える。
 俺は利き腕が思うようには動かない。
 今でこそ利き腕は動くようになったが……今までは片腕が基本だった。
 だからこそ、一刀で遣える技を基本としていた。
 事実、射抜、雷徹は一刀でも扱える。
 そして、俺は二刀目を決め手とするために射抜・追を極めた。
 俺が薙旋を覚えたのはその射抜・追を極めた後だった。
 後は、夏織さんが俺に薙旋を教えてくれた。
 しかし、夏織さんから教わったのは薙旋の基本だけだったのだろう。
 恭也さんの話を聞けば聞くほどそう思う。
 多分、夏織さんも自分なりの遣い方を見つけろと言いたかったのかもしれない。
「まぁ、俺から言えるのはこのくらいだな。恭也は他に何かあるか?」
「いや、俺から言うことも今はこのくらいだ。後は悠翔の剣を見せて貰ってからだな」
「はい……!」
 御神不破でも現在、最強と名高い高町士郎さん、そして……御神の剣士の奥義の極みまで達した、高町恭也さん。
 この人達に御神の剣を教わることが出来る――――この高町家で過ごすのは御神の剣士としての俺に大きな影響を与えてくれそうだ。
















「うんうん、それでそれで?」
 さっきから一番、興味深そうに私の話を聞いているすずか。
 今、私は悠翔と一緒に高町家に来た時の話をしている。
 なのは達は色々な意味を含めた視線で私を見つめてくる。

 あぅ……悠翔とのことを全部話したら私はドジなところばかりだから……
 だって……抱きついたり、胸を触られたり……だし

「それで、悠翔と士郎さんの立ち合いを見せて貰って……今の状態なんだけど」
「そっか〜……フェイトちゃんは悠翔君の凄いところを今日だけで一気に見せて貰ったんだね?」
「え……そうなのかな?」
「うん、そうだよ」
 すずかは笑顔で私に頷く。
 でも、すずかの言うとおりかも。
 今日だけで私は悠翔の凄いところをたくさん見せて貰ったんだと思う。

 私達と同い年で、あれだけの覚悟や考え方を持っていて……
 私じゃとても解らないような色々な経験をして……
 悠翔は剣士としても凄くて……
 こう考えると私は本当に凄いところを見せて貰ったんだ……
 あれ……?
 でも、私は……悠翔には駄目なところしか見せていないような……?
 あぅ……やっぱり、私ってうっかりやさん……



































 From FIN  2008/6/4



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