「なんにせよ、ユーノがどれだけなのはさんを大切にしているかは解ったからな。ああいう態度なのも解らなくは無いさ」
「そうだね」
 そう言って私達はお互いに微笑みあう。
 なのはとユーノの行為は2人の関係を考えれば当然のことだし。
 恭也さんと忍さんの方も同じことが言える。
 悠翔が何も言わなかったのはそれが解っているからなんだと思う。
 実際に悠翔はなのは達に様子をじっと見つめている。
 それも真剣な目の光を含んでいるみたい。
 でも、悠翔自身にはそんな人はいなくて……。
 悠翔は……なのは達や恭也さん達を見て何を思っているんだろ……。






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「そろそろ……士郎さんと桃子さんも来るみたいだし。俺は恭也さん達と話をしてくるよ」
 悠翔は目線を私達とは違う方向に向ける。
「え……? あ……うん」
 私は悠翔が何故、士郎さんと桃子さんが来るのに気付いたのかは解らずにとりあえず頷く。

 ……本当に士郎さんと桃子さんが来た
 悠翔は本当にどうやって気付いているんだろ?
 そういえば……恭也さんと士郎さんも同じようなことをしてたような?
 でも、私達にはそれは解らないんだろうな……
 悠翔の話からすると魔力とかが無いからこそ出来るといった感じだし……

「俺はとりあえず、恭也さんと士郎さんのところにいるから何かあったら呼んでくれ」
「うん、解ったよ」
 悠翔は一言だけ伝えて恭也さんのところへ行く。
 恭也さんも悠翔に気付いているのか忍さんを私達のところへ行くように促していた。
 悠翔と入れ替わりに忍さんが此方へやってくる。
 桃子さんも士郎さんが悠翔と色々と話をするつもりなのを気付いているらしく私達のところに来る。

 あれ……? この状況って……?
 これで、私の周りは女性だらけで……
 悠翔は恭也さんと士郎さんのところへ行ってしまっている
 このままだと私は……悠翔とのことを色々と聞かれちゃう……?
 はやてが色々と私に聞こうとしてたけど……それは悠翔が止めてくれていた
 要するにさっきまでは悠翔がいたから大丈夫だったって言えるんだけど……
 これじゃ私に逃げ場は無くて
 しかも、大人である忍さんと桃子さんもこういう話題を止めてくれる人じゃないし……
 あぅ……どうしよう?
















「さて……こうやって3人で話すのも久しぶりだな。俺が悠翔に会ったのが一臣の墓参りの時になるから……もう数年は経つか」
 何やら俺を見ながら感慨深そうに話し始める士郎さん。
「そうですね……。士郎さんとは数年前ですし、恭也さんに会ったのも1年くらい前になりますから、そのくらいかと思います」
「確かにそうだったな。悠翔と俺が会ったのは昨年の事件よりも前……昨年、俺がフィアッセの護衛についた時が大体、半年前だから……そのくらいになるか」
 恭也さんも俺と最後に会った時のことを思いだしながら頷く。
「悠翔はあの事件の時はちょうど、母さんと行動をしていたんだったな?」
「そうですね。あの時は夏織さんと一緒に行動していたので、警防隊からは離れていました。恭也さんと美由希さんは美沙斗さんのところに来ていたんですよね?」
「……ああ。入れ替わりみたいな感じだったな。今回も美由希は美沙斗さんのところに行ってるから悠翔とはまたしても入れ替わりだな」
「美由希さんが来ることは美沙斗さんから話は聞いてます。俺と入れ替わりに近いのは偶然なんでしょうけど」
 本当は美由希さんとも話したかったんだけど……今回もまた入れ替わりになってしまっている。
 偶然こうなっただけなのは理解しているが……流石にまたしても入れ替わりだと俺も苦笑するしかない。
「まぁ、そういうこともある。それに……美由希も悠翔には会いたがっていたしな。そのうち機会もあるだろう」
「そうですね、士郎さん」
 俺が美由希さんに会えないのは少し作為的なものを感じたが、それはあくまで偶然なので些細なことだ。
 そのうちに機会があるというのは士郎さんの言うとおりだ。
「だが、悠翔も随分と強くなった。美由希とも立ち合わせたかったな」
「確かに悠翔が強くなったというのは気配で解っているが……父さんから見ればそこまでの段階にきているのか」
「……ああ。今の悠翔の若さを考えれば相当強い。基礎乃三法も極めているし、暗器の遣い方も適確だ」
「ふむ……」
「それに悠翔は既に、奥義の途中で神速を遣うことも出来る。俺と立ち合った時は『射抜・追』を遣っていた」
「ああ。それは俺も聞いたが……中々、凄いと思うぞ。俺でも悠翔の年齢の頃だと射抜・追は遣えなかった」
 何やら色々と褒めてくれている士郎さんと恭也さん。
 正直、褒められている側としては嬉しいが、複雑な気持ちでもある。
「ただ、利き手である左腕が悪いのが厳しいところだな。悠翔の左腕の都合を考えると今の段階で、虎乱とかは難しいだろう」
「そう……ですね。はっきりと言ってしまえば俺は”手数”の多い技は遣えません」
「……そうだろうな。そこらへんは夏織と美沙斗からの連絡で聞いていたが」
「だからこそ、今の俺が遣っている技は変則的なものや刹那の一瞬に一撃を叩き込む……といったものになっています」
「ふむ……普通には左腕が遣えないならでは……と言ったところだな。実際に悠翔の左腕の調子はどうなんだ?」
 少し考え込むようにして士郎さんが俺に尋ねる。
「そこまで動かせるというわけじゃ無いですが……”普通”に二刀術を扱うということであればそこまでは問題があるわけじゃないです」
「”普通”ということか……。だったら、虎乱とかは腕の調子を考えながらってことになるな」
「あ、はい……そうですね」
 腕の調子を考えながらということに俺は少しだけ肩を落とす。
 確かに虎乱は二刀による連続技。
 だが、俺の場合は利き腕である左腕がそこまで使えない。
 腕が使えるようになってからも色々と考えながら鍛えてきたが、今も手数の多い技を遣うことは出来ない。
 現に、俺の”最大の手数”は薙旋なのだから。
「とりあえず、恭也からも聞いたが……悠翔が遣える奥義は射抜、雷徹、薙旋だったな?」
「はい」
「で、射抜は美沙斗から、雷徹は一臣の遺したノートから、薙旋は夏織からだな?」
「ええ、そうです」
 俺は士郎さんからの確認の問いかけに頷く。
「……なるほどな。恭也」
「ああ、解ってる。悠翔の技は……薙旋を除けば一撃を叩き込むのが基本になっている」
「そういうことだな。ついでに言えば射抜は突いた先からも様々に変化出来るから、薙旋と含めて考えれば変則的な技も遣えるというのが今の悠翔の状態だろう」
「後は、雷徹もあるから攻撃に関しての爆発力もある。御神の剣士としてはある程度、バランスがとれていると思う」
 士郎さんと恭也さんが俺の現在の御神の剣士としての状態を考察する。
 だが、俺にはあまりそこまでの実感は出来ていない。
「そうなんですか? 俺はバランスが悪いと思っていましたが……」
「いや、バランスは悪くないぞ。確かに最大の手数の技が薙旋になってはいるが……薙旋は奥義の中では最も扱いが多様だ」
 薙旋の特徴を言うのは士郎さん。
 確かに薙旋は色々な扱いが出来る技だ。
「薙旋は抜刀から4連続の高速の斬撃……といった技だがその4回のうちに出来ることはかなり多い。射抜・追が遣える悠翔なら変則の薙旋も遣えるはずだ」
 続けて薙旋の細かい部分を含めて教えてくれる恭也さん。
 そういえば……射抜・追が出来るなら薙旋でも同じことが出来るはずだ。
 恭也さんが最も得意としている技は薙旋……だからこそ恭也さんはそこまで言えるんだろう。
 士郎さんも相当な経験をつんでいるからこそ俺に細かいアドバイスが出来る。
 2人の御神の剣士からの話は本当に参考になることばかりだ。
















「さぁてと、フェイトちゃん。悠翔君達も席を離れたし……早速、話を聞かせて貰うで?」
「ええっと……」
 悠翔が席を外して恭也さんと士郎さんのところに行った後……私は早速、追い詰められていた。
 大人である桃子さんと忍さんは微笑ましそうに少しだけ離れて私達のことを見ているし……。
 止めてくれそうな感じは全く無い。
 なのはも私と悠翔の出会いのことに関しては話を聞いていないためか興味があるみたい。
 それに、アリサとすずかも私と悠翔の出会いの話を聞きたそうにしている。
 止めてくれる人は誰もいない。
 肝心の悠翔も恭也さんと士郎さんと話をしているから呼ぶことも出来ない。

 でも……このままじゃ話すしか無いし……
 かと言って黙っててもそのうち話さないといけないし……
 何より、私と悠翔が普通に話しているのをみんなに見られてる
 もう、誤魔化しようも無い状態……
 あぅ……本当に逃げ場が無いよ……



































 From FIN  2008/5/30



 前へ  次へ  戻る