「……それって実際にどうだったの? 正直な話、恭也さんは魔導師としての力は全く望めないけど……確か、魔力は感じられなかったし」
 悠翔の問いかけがあまり理解出来なかった私は答えの引き合いに恭也さんが魔力が無いということを悠翔に伝える。
「そうだな……俺達にはそういう力は望めないだろう。実際に俺にもそんな力は無いと思う」
「う、うん。悠翔からは魔力は全くって言っても良いほど感じないよ」
 私は悠翔に頷く。
 悠翔の魔力がどのくらいあるか感じ取ってみてみたけど……。
 確認した限り、悠翔の魔力は間違いなく、最低ランク。
 以前に確認してみた恭也さんも確か……最低ランクだったはず。
 悠翔も恭也さんも魔力を持っていないんだから当然なんだろうけど。
「けど、恭也さんはこう言うだろうな。”自分の戦い方をするだけだ”とね」
 悠翔の言葉に私は驚きを隠せない。
 自分の戦い方とは言っても……悠翔や恭也さんには魔力は全く無い。
 でも……悠翔達の言い分を聞いていると剣術でどうにかすると言っているように思える。
 確かに私やなのはは恭也さんと立ち合ってみて負けたけど……。
 それはあくまで模擬戦での話。
 実際には空を飛んでいる相手には攻撃手段なんて殆ど無いように思える。
 けど、恭也さんは私との模擬戦の時は私を地上に引き摺り出して奥義で止めを刺した。
 いったいどうやったかなんて……どれだけ考えても答えは出ない。
 やっぱり……その時に恭也さんが遣っていた方法が”自分の戦い方をする”ということなのかな……?






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「じゃあ……悠翔君は私達の遣う魔法に対抗出来ると思うん?」
 はやてがたとえ話として悠翔に質問を投げかける。
 はやての質問に悠翔は少しだけ考え込み……口を開く。
「……そうだな。俺達に危害を加えるっていうならどんな手段を遣っても対抗するさ」
 悠翔は軽く微笑みながら言うけど……質問をしたはやては言葉を失う。
 はやてだけじゃなく、私もなのはも言葉を失う。
 もしも、私達が魔法を遣って悠翔に戦いを挑んでも勝てる可能性は無い。
 既に悠翔のテリトリーに入っている……といえば良いのかもしれない。
 それに……悠翔が言っているように……どんな手段も遣うと言うのが本当だったら私達は既に斬られている。
 それは間違いないと思う。
 ……なんとなく身体の奥底から底冷えするような威圧感。
 私が感じた感覚だと悠翔が放っている空気はそんな感じだった。
「……すまない」
 悠翔がそう言った途端に底冷えするような威圧感が消える。

 いったい……今の感覚はなんだったんだろ……?
 悠翔と士郎さんが立ち合っていた時の感覚に少しだけ近いような気がしたけど……
 でも、この威圧感は魔導師が相手では全く感じないもの……
 いったい……なんなのかな?

「俺は魔法を見たわけじゃないからなんとも言えないけど……魔法が大切な人達を傷つけるというなら容赦はしない」
 悠翔の言った言葉は私達に対する覚悟の問いみたいなもの。
 多分、悠翔自身が既に覚悟をしているからこういうことを言えるんだと思う。
「例え何者が相手だとしても大切なものを傷つけるのであれば……俺はその相手を殲滅するだけだ」
 悠翔が”殲滅”すると言った瞬間、私達の周りの空気が凍りつくような感覚がした。
 さっきの底冷えするような威圧感よりも更に底冷えするような威圧感……。
 その空気に悠翔を除いた私達全員がびくっとする。

 今の悠翔の目は……本気だった
 本当に魔法が大切なものを傷つけるのであれば……悠翔は間違いなくその相手に刃を向ける
 私にはそれがなんとなく解った

「それに……魔導師とか騎士だったか? 話を聞いている限り……その程度なら、なんとかなりそうだしな」
「えっ……!?」
 悠翔の言葉に私達は更に驚く。
 悠翔達の力は驚異的だけど……魔導師なら基本的に空に逃げてしまえば悠翔達はどうしようも出来ない。
 でも、私は恭也さんに空から地上に引き摺り出されて負けてしまった……。
 私達には解らないけど……悠翔達には何か手段がある。
 例え、空が飛べなくてもどうにでも出来るって言いたいのかもしれない。
 けど……魔法との力の差は生身一つの悠翔達にとっては絶望的な差だと思う。
 それなのに悠翔は魔導師をどうにか出来ると言っている。
 多分、悠翔が言いたいのも……この世に絶対は無いっていうことなのかもしれない。
 魔導師がどれだけ力を持っているとしてもやりようはある……。
 悠翔はそれだけのことを考えているからそんなことを言えるのかな……?
















「今の……”その程度なら、なんとかなる”って言うんはどういう意味でいったん?」
 はやてが真剣な様子で悠翔に尋ねる。
 悠翔が少し魔法を馬鹿にしている感じに聞こえたのかはやては少しだけむっとしている感じ。
 今の悠翔が言った言葉はそう聞こえても可笑しくは無いけど……。
 多分、悠翔はそういうつもりで言ったつもりじゃないと思う。
「……いや、なんとかなると思ったからそう言っただけだ。別に魔法を馬鹿にしているんじゃない」
「けど……今の感じだとそう見えても可笑しくないで?」
「いや、それは確かに……俺の言いまわしが悪かった。……だが、実際に恭也さんは魔法を相手に渡り合っているんだろ?」
「まぁ……そうなんやけど……」
「それに今の話を聞いていると、フェイト達も本気じゃ無いんだろうけど……恭也さんはそれ以上に本気を出していない」
「えっ? そうなん……?」
 恭也さんが私達以上に本気を出していないということにはやてが驚く。
 私達も驚きを隠せない。
 特に直接、恭也さんと模擬戦をしたことがある私となのはの驚きは大きかった。

 あれで……私達以上に本気を出していないだなんて……
 じゃあ……もし、恭也さんが本気だったら?

 私が考えていることに気付いているのか悠翔が口を開く。
「はっきりと言ってしまえば……勝負にならないだろう。正直な話……恭也さんが本気なら、魔法に関係無く殲滅するだろうからな」
「っ……!?」
 悠翔はまた、”殲滅”するって言葉を使った。
 もし、悠翔が言うとおり恭也さんが本気なら魔法があってもあまり関係が無いってことになる。
 それに……あれだけの力を持つ恭也さんが全く本気じゃない……としたら。
 私は背筋がなんとなく、ぞっ……とする。
「そうだな……本気の恭也さんを見たいとしたら……なのはさんか忍さんを人質にするなり、傷つけたら良い」
「えっと……そうすると……どうなるん?」
 言っている意味は解るんだけど……どうなるかの実感は無いといった感じの様子のはやてが質問をする。
「……間違いなく、”御神”としての恭也さんじゃなくて、”不破”としての恭也さんが動くだろうな」
 悠翔が確信を持ってはやての質問に答えるけど……。

 えっと……御神としてとか不破として……って言われても……
 私達には全く解らないんだけど……

「それって……何が違うん?」
 やっぱりはやても理解が出来なかったのか悠翔に尋ねる。
「まぁ……普通に言っても解らないだろうが……確かに違うんだ」
 悠翔は色々な意味を込める感じで言葉を続ける。
「恭也さんは”御神”なんだけど……やっぱり、”不破”なんだ。俺も”不破”だから……恭也さんと同じだ、な」
 多分……悠翔は恭也さんと自分との共通点を言いたいんだろうけど……。

 それにしても……御神? 不破?
 どちらも剣術に関係しているのは解るけど……
 悠翔がなんて言ってるのかさっぱり解らないよ……
















「とは言っても此方の話だ。気にしなくても良い」
 これ以上は言っても解らないと判断したのか悠翔が話題を区切る。
「まぁ……それはええけど……。その……勝負にならないってどういうことなん?」
 はやてが悠翔の言った”勝負にならない”ということに質問をする。
「……俺が勝負にならないって言ったのは”考え方”の問題だ。実際はどう考えても魔法との力の差は歴然としているしな」
「じゃあ……その考え方って言うんは?」
「考え方って言うのは……”戦闘”というものについての考え方の差だ。魔導師の場合は”人を殺す”という考え方はしないだろう?」
「そ、そうやけど……」
 はやては悠翔の”人を殺す”という言葉にびくっとしながら頷く。
「だが、俺達の場合は”人を殺す”ということに躊躇はしない。別に慣れているとかそんなのじゃ無いけど、な」
「え……?」
「それに……対人戦になれば俺達の場合は効率良く人を殺せる。それが例え、どんな人間だろうと、な」
 そう言った悠翔の空気が変わる。
 変わった空気に私達はまたしても、ぞっ……とする。
「悠翔君……それは……?」
「俺が勝負にならないって言ったのはそういうことだ。魔導師の考え方や覚悟じゃ御神の剣士と勝負にはならない。それに……戦い方に関しても、な」
 はやてが何かを言おうとするけど、それは悠翔の言葉に遮られる。
「実際にそれは見てみれば理解出来る。言っておくとすれば、恭也さんが戦ったのはあくまで”模擬戦”だ」
「あくまで模擬戦……?」
「実際に”戦闘”といった形でやってみれば俺が言っている意味が解る。後は、俺と戦っても少しは解るかもしれない」
「……解った。それがどういうのかは解らへんけど……見せて貰えるんやな?」
「ああ。少し君達に見せるのは気が引けるけど、な」
 そう言って悠翔は複雑そうな表情をする。

 悠翔の言った考え方と覚悟……それに戦い方……
 既に悠翔が私達とは全然、覚悟が違うっていうのは解っていたけど……
 それっていったい……どんなものなのかな?
 でも、悠翔は人を殺すことに躊躇はしないって……
 これは私達、魔導師ではとても信じられない
 それに……戦い方の違いっていうのもあまり解らない……
 悠翔のいう考え方や覚悟ってそこまで違うのかな……



































 From FIN  2008/5/24



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