「それに……今まで聞いた事件の話は全部、ロストロギアとかいうのが関わってるんだったな」
「うん、そうだよ」
「こう話を聞いているとロストロギアは”場違いな工芸品”って言っても可笑しくないな」
「場違いな工芸品?」
 私は悠翔の言った聞きなれない単語を尋ねる。
「いや、例えみたいなものだ。それに此方の話だからあまり気にしなくても良い」
「そ、そうなんだ……」
 私は悠翔に相槌をうつ。

 う〜ん……なんというか……悠翔が全く魔法の話を聞いても驚いていなかったのは……
 こういう事情もあったりするのかな……?
 なんか普通に悠翔が知っているものに近いみたいだし……?






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「まぁ、此方の話は放っておいて……。君達が魔法に関わったのはそういう経緯で大体、あっているんだな?」
「うん、そうだよ」
「……こう聞いていると実際の魔法がどんな感じなのか見てみたくもあるな。それに……」
 悠翔は少し考え込むような仕草をする。
「戦えるものなら戦ってみたいな。俺の剣がどこまで通用するかも含めて、な」
「そうなん?」
 悠翔の言葉にはやてが苦笑しながら尋ねる。
「……ああ。純粋に御神の剣士としてどこまで魔導師とか騎士とかいうのに戦えるのかが気になるからな」
「いや〜……私らからすれば悠翔君達の方が凄いような気がするんやけど……」
「どういうことだ……?」
 はやては悠翔の言っている御神の剣士の方が魔導師よりも凄いと言う。
 確かに純粋な力だとか色々なことを含めると魔導師の方が悠翔達の言っている御神の剣士よりも上だと言える。
 普通に考えてみても魔法は大きすぎる力だと言っても良いと思う。
 けど、恭也さんは……こう言っていた。





 ――――確かに魔法は強い





 ――――だからこそ教えておく





 ――――この世に絶対は無いということを





 恭也さんが言っていたとおり絶対なんてものは無いと思う。
 今日の悠翔と士郎さんの立ち合いで私はそれを実感出来た。
 それにはやてが悠翔達の方が凄いと言ったけど、それは私達、魔導師と違って悠翔達は生身一つであれだけの動きをしてしまうこと。
 魔法を小太刀で斬り捨てたり、受け止めたり、他にも見向きもせずに魔法を避けたり……。
 更には私の真・ソニックフォームよりも速く動くことも出来る方法である神速も魔力といった特別な力を遣わずに行っていた。
 こういったことは私達、魔導師では不可能だとはっきりと言える。
 しかも、恭也さん達が言うには神速から更に速く動くことも出来るとか……。
 私との模擬戦の最後に遣ったのはその方法なんだとか。
 確か……神速に入ったままで神速に入る……だったかな?
 恭也さんは”神速の二段がけ”とか言ってたような気がする。
 私達にはあまり実感は出来なかったけど……。
 確実に言えることは魔法では届かない速度……。
 恭也さんが遣っていた神速はそんな速度だったと思う。
 しかも、士郎さんも美由希さんも美沙斗さんもそれから……悠翔の言っていた恭也さんの母親である夏織さん、そして……悠翔。
 全員がこの神速を遣うことが出来る。
 う〜ん……これだけでも魔導師よりも凄いと私は思うんだけど……?
















「いや……実はなのはちゃんとフェイトちゃんは恭也さんと立ち合ったことがあるんやけど……」
 悠翔の問いかけに少しだけ答えにくそうに話をきりだすはやて。
「ああ、その話はフェイトからも聞いた。……なのはさんも恭也さんと立ち合っていたっていうのは海鳴に来る前に聞いてたから知っていたけど」
「あ、既に話は聞いてるんやね?」
「まぁ、流石にその時はHGSの能力で恭也さんと立ち合ったのかと思っていたけどな。魔法のことは知らなかったし」
 悠翔は苦笑しながらはやてに答える。
「ただ、フェイトやなのはさんの気配からして普通とは違う力があるんだとは思っていた。それが魔法だというのには改めて驚いたけど」
「そのわりに悠翔は落ち着いていたよね?」
「……御神の剣士は冷静さを失ってはいけないからな。最も、こういった特別なものに関しての慣れもあるんだけど、な」
「そうなんだ……」
 悠翔が慣れていると言っているのを聞いて私は納得する。
 私達と同い年にも関わらず悠翔は色々な経験をしている。
 HGSの能力を持った人とも戦ったことがあるとも言っていた。
 それにさっきの悠翔の様子からするとHGS以外にも特別な力を知っているみたい。
 そんな悠翔が魔法で驚かないのは普通なのかも。
「んで、私が悠翔君達の方が凄いと思ったのにちゃんと理由があるんよ」
「……理由か?」
「うん、そうやよ。で、聞くけど……悠翔君達はその信じられんような動きをどうやってやっとるん?」
「どうやって……って言われてもな……。普通に御神の剣士としての身のこなしなんだが……実際に基礎を固めた上である動きだし、な」
「……その時点で既に悠翔君達の方が凄いと思うんよ」
 はやてが悠翔の言い分に呆れながら溜息をつく。
「そうか……? 俺から見れば魔法の方が凄く見えるんだが?」
 悠翔はなんでも無いといった表情をする。
「いや、言ったら悪いんやけど……普通の人間にそんな真似は出来んと思うで?」
「まぁ……否定はしないけど」
「それに……魔法が凄いと言っても私らの場合は『魔力』を遣っとるんや。悠翔君達みたいに生身一つでやっとるわけやない」
「ふむ……」
 はやてから言われて悠翔は少し考え込む。
「だから……それだけでも、悠翔君達の方が凄いと言えるんやで?」
「……なるほど。そう意味ではそうなのかもしれないな……」
 悠翔は納得出来たのか出来なかったような表情をする。
 まぁ……私達から見ても生身一つであれだけのことが出来る方が凄いと思うしね。
 悠翔の場合は恭也さん達を比較対象にしてるからそうじゃないのかもしれないけど……。
















「とは言っても流石に魔法と直接立ち合ってみないと何とも言えないな」
 少しだけ考え込んでいた悠翔だったけど……漸く結論が出たみたい。
 けど、悠翔の言葉はこれだけじゃ終わらなかった。
「だが……その力に溺れちゃいけない。俺から魔法に対してはっきりと伝えたいのはそれだけだ」
「えっと……力に溺れる……?」
 はやてが疑問を浮かべながら悠翔に尋ねる。
 私も悠翔の言ったことを考えてみる。
 けど……悠翔が何をいいたいのかは解らない。
「ああ。大き過ぎる力に溺れるというのは実際にあるんだ。俺もそのことは知っている。もっとも……そのことを良く知っているのは恭也さんや士郎さんだけどな」
 私の様子を少しだけ確認しながら悠翔が言葉を続けていく。
「まぁ、当然なんだけど……美沙斗さんと夏織さんもそのことをよく理解してる」
 本当にあの人達はよく解ってる、と悠翔はつけくわえる。
「……それって実際にどうだったの? 正直な話、恭也さんは魔導師としての力は全く望めないけど……確か、魔力は感じられなかったし」
 悠翔の問いかけがあまり理解出来なかった私は答えの引き合いに恭也さんが魔力が無いということを悠翔に伝える。
「そうだな……俺達にはそういう力は望めないだろう。実際に俺にもそんな力は無いと思う」
「う、うん。悠翔からは魔力は全くって言っても良いほど感じないよ」
 私は悠翔に頷く。
 悠翔の魔力がどのくらいあるか感じ取ってみてみたけど……。
 確認した限り、悠翔の魔力は間違いなく、最低ランク。
 以前に確認してみた恭也さんも確か……最低ランクだったはず。
 悠翔も恭也さんも魔力を持っていないんだから当然なんだろうけど。
「けど、恭也さんはこう言うだろうな。”自分の戦い方をするだけだ”とね」
 悠翔の言葉に私は驚きを隠せない。
 自分の戦い方とは言っても……悠翔や恭也さんには魔力は全く無い。
 でも……悠翔達の言い分を聞いていると剣術でどうにかすると言っているように思える。
 確かに私やなのはは恭也さんと立ち合ってみて負けたけど……。
 それはあくまで模擬戦での話。
 実際には空を飛んでいる相手には攻撃手段なんて殆ど無いように思える。
 けど、恭也さんは私との模擬戦の時は私を地上に引き摺り出して奥義で止めを刺した。
 いったいどうやったかなんて……どれだけ考えても答えは出ない。
 やっぱり……その時に恭也さんが遣っていた方法が”自分の戦い方をする”ということなのかな……?



































 From FIN  2008/5/21



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